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【口腔病理専門医】難波先生より

2012-10-31 23:01:11 | 難波紘二先生
【口腔病理専門医】のアルバイト実態について、大阪のある歯科病理医の意見が人づてに寄せられた。


<医学部病理専門医試験と75%が同じ問題です。僕は、「断酒」して受験勉強しました(おそらく、それまでの人生で一番勉強したように思います)。
 病理解剖と全身の病理の勉強のため、総合病院に約8年間(1~2日/週)通い、経験を積みました。休日の解剖当番も幾度か経験させていただきました。
その病院で、色々と教えて下さった先生から、「医学の世界の中で最も難しい専門医が「脳外科」で、そのつぎくらいが「病理」ですかね。その75%と同じ問題をパスしているのだから、「口腔病理専門医」はたいしたものですよ。」と言って頂いたのを覚えています。
 平成4年の試験制度以前は、申請すれば、「口腔病理専門医」になれたそうですので、古い医学部の先生方は、先生から頂いたメールのような考え方の先生が多いものと思われます。>


 というもので、コマーシャル・ラボにおける「口腔病理専門医」のアルバイト実態について、ずばり答えるものではなかった。


 この人は、<病理専門医や口腔病理専門医は、「この症例は一人で診断したらヤバいかも・・・」と感じられる人だと考えています。つまり、「自身の能力を超えている」症例を見分けることができる人なのです。ですから、分からない症例は、「全身」にかぎらず「口腔」でも、一人では診断しません。
患者さんの命に直結する仕事ですから・・・。>
 と書いているから、「口腔以外の標本」を診断しているのであろう。たぶんそれが大阪の実態であろう。


 なお「日本病理学会100周年記念誌」の林良夫「口腔病理 その役割と使命」によれば、「口腔病理学会」の会員数は約530名で、口腔病理専門医の総数はわかりませんが、大学歯学部・歯学部附属病院以外の市中病院・研究所で働いている口腔病理専門医数が約50名だそうです。日本に歯科大学・歯学部がいくつあるのか知りませんが、530名の会員のうち、大学院生を除く、ほとんどの会員はこれらの機関に奉職しているものと思われます。
 非常勤でコマーシャル・ラボでアルバイトしている場合は、常勤の「病理専門医」がいれば相談できるので危険性が少ないが、単独の場合は危険だと思います。これが前回述べたM3での臨床医の問題指摘につながっているのだと思います。


 ところで、病理科が標榜科になれたのは、「病理診断が医行為である」と認定されたからです。医行為を反復して繰り返せば「医業」となる。「医師法」により「医師でなければ医業をなしてはならない」と医師以外の医業は禁止されている。
 従って歯科医師が口腔領域以外の病理診断を行うことは、医師法違反なのです。


 1992年に、病理専門医と口腔病理専門医の試験問題をできるだけ共通にしたときには、病理科は標榜科になっておらず、「病理診断」は「病理検査」の一部でしかなかった。だから法的には「臨床検査技師」であれば、病理診断をしても違法でなかったのです。
 しかし08年4月から、「病理標榜科」が実現し、病理科での開業も可能になった。この時点で「病理診断」の法的位置づけが丸きり変わったのです。


 病理診断が「医業」として認められたということは、医師病理医が誤診した場合は、「正当なる業務遂行中のミス」として、民事責任は問われることがあるが、刑事責任の対象とはならない。しかし、歯科病理医が「口腔外」の病理診断を誤った場合は、民事責任だけでなく「医師法違反」に問われる可能性があるということになった。


 これを喩えれば、普段スピード違反をしていても黙認されているが、一旦ネズミ取りに引っかかったら、「道交法違反」で切符を切られるのと同じだ。
病院車は「緊急車両」になれば、道交法に定めるスピード制限を無視しても罰せられないが、それは「医師が同乗している」場合のみである。歯科医師が同乗しても、「緊急車両」になれないから40キロ以上オーバーすると起訴される。


 私は「申請」により認定医になれた時代よりも、試験制によるいまの病理専門医、口腔病理専門医のレベルが高いことには異論がない。
 問題は、病理標榜科は「医師法」のレベルで認められただけで、「歯科医師法」には何の手もつけられておらず、この点を放置したまま口腔病理専門医がコマーシャル・ラボでアルバイトするのは、本人にとっても患者にとっても、危険だといいたいのであるが、そこが上手く伝わらなかったようだ。


 私は「口腔病理専門医の能力が低い」ということも、「口腔以外の部位の病理診断をすべきでない」とも言っていない。むしろ故田中健蔵福岡歯科大学理事長のように、病理診断に関しては「医歯一元化」に賛成なのです。しかし現状では法的な整備の上で、問題があることを指摘したのだが、それを<古い医学部の先生方は、先生から頂いたメールのような考え方の先生が多いものと思われます。>というふうに理解されるのは、いささか心外に思う。


 これで歯科医師の「病理診断業務」は、かなり行われている実態があることは明らかになったと思うので、これに詳しい長岡市のO先生、病理学会認定医部会創設に働いた藤田学園のT先生、理論家の名古屋のI先生、MRCIで卓見を披露しておられる大阪の臨床家H先生、ぜひコメントをお聞かせ願いたいものです。
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