ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【エンブレム騒動】難波先生より

2015-09-07 11:06:17 | 難波紘二先生
【エンブレム騒動】
 「Emblem」、象徴、シンボルのことだ。「象徴天皇」というのは「日本のエンブレム」と英語ではいうのであろう。字引には「国民の象徴」をNational Emblemというとある。(もっとも外国メディアは「ヒロヒト」「アキヒト」というように、名前を呼びすてにすることが多いが…)
 シンボルは「男性のシンボル」というような使い方をされるから、国民の統合の「シンボル」よりは「エンブレム」の方がふさわしいかもしれない。
 そのエンブレムに傷がついた。
 なんとも「STAP騒動」によく似たことだ。あの事件では「ネット集合知」がネイチャー論文の盗作、捏造をすべて明らかにして、当初「翼賛報道」をしていた、メディアがこけた。
 あの時わたしが学んだのは「文章の盗用なら、ネットで全て検証できる」ということだった。
 9/1(火)の夜9時のNHKニュースを見ていて、いまやデザインの類似性までGOOGLE検索でわかることを知った。コンピュータによる「画像検索」がもう実用に入っているのだ。
 今回も完全にメディアは「ネット集合知」に負けた、と思う。(最近はネットで知った事実を「明らかになった」と情報源を示さない文体で報じる新聞が多くなった。もう新聞も終りだろう。)

<付記:9/2NHK夜9時のニュースによると、ベルギーのデザイナーからのクレームが報じられた後、2CHに「疑惑徹底解明」のスレが立ち、2時間以内に2000人以上の書き込みが行われ、「盗作」と結論が出たという。NHKがSTAP事件の「毎日」須田桃子より立派なのは、「ネット集合知が先行した」と素直に報道している点だ。私は、須田記者は小保方と何ら変わらないと思う。こんな本が「科学ジャーナリスト」賞をもらうとは世も末だ。>

 これについて思った。2CHの書き込みに参加した人の能力が、平均的記者の半分つまり0.5だと仮定しよう。彼ら2000人が燃えて必死に調査したら、プロのジャーナリスト1000人に相当する。1000人が2時間働いたら、述べ2000時間。まる83.3人の24時間労働に匹敵する。これは睡眠休養時間が計算に入っていないから、8時間労働なら、およそ245人の取材チームの活動に相当するだろう。
 これだけのスタッフを一気に投入できる新聞社や放送局は、日本にも世界にもない。
 結論は明白だ。既存メディアは「ネット集合知」に勝てない。以後は、ネットがメディアの主な情報源になるだろう。オリンピック組織委員会の「メディアのせいではなく、国民の世論に配慮して、作者から自主的辞退の申し出があった」という弁明は、いまやメディアよりも「ネット集合知」が政府を動かすようになったことを意味している。

 「エンブレムの盗作は認めないが、自主的に辞退する」という盗作家佐野研二郎の弁明を認めるところなど、STAP事件の終り方にそっくりだ。隣の韓国は相次ぐ「東京オリンピック」がらみの不祥事に大喜びしている。
 二度あることは三度ある。安倍政権下でまた何か起こりそうな気がする。最悪の場合は「オリンピック返上」だろうな。
<9/6付記=撤回された「東京五輪エンブレム・ポスター」がネットオークションで4万5000円の値が付いたそうだ。5700万円使って、値打ちは千分の一以下になった、てことか…。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000058203.html
「日経」が伝える「舛添都知事の有効活用」て、これか?
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG04H8V_U5A900C1CC1000/
 都職員の思わぬ副収入になったりして…>

 私は「ネットは人間を正直にする」という意味のことを本に書いたことがある(『生と死のおきて:生命倫理の基本問題を考える』,溪水社 2001/4、§12「情報化社会と研究倫理」)。強力なスパコンと検索エンジンのおかげで、14年後にほぼそういうことが実現したなあ、と思う。
 山口大学医学部(生化学)講師の林田直樹さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/naokihayashida1001h/archives/19192363.html
をフォローしていたら、STAP事件で、そもそも分化した体細胞の証拠として脾臓のT細胞を材料として用いることを提案したとされる西川伸一(当時理研CDB副所長?)が、2014/1/30に発表した文章に出会った。
http://aasj.jp/news/watch/1069
 これに寄せられた、同年6/13の「フジタ・キンヤ」のコメント:
<kinya fujita より:
2014年6月13日 8:53 AM 小保方さんは先生が理研にすえつけた時限爆弾だったことがはっきりしてきています>
という書き込みには驚いた。西川氏はこれには返信していない。つまり暗黙のうちに肯定したということだろう。この事実は毎日の須田桃子も、「新潮45」の小畑峰太郎も本に書いていない。出版時期をあせって、十分に取材と材料の咀嚼をしなかったからだろう。私は小畑グループのひとり(女性)には「出版を延ばせ」と忠告したのに…。
 西川さんの文章は長文だが、大意はこうだろう。

<さて報道の方だが、安全で早い多能性幹細胞の新しい作成方法と言う点を強調した記事と、独特のキャラクターを持つ若い女性と言う小保方さんを強調した記事とに分かれているようだ。後者の記事は私も大歓迎だ。★…一方、この方法がこれまでの方法より安全で役に立つと言う記事は願い下げたい。…★ただ問題は、(小保方論文への)驚きが論理的な納得に変わらない点だ。論理的に納得できるようになるには、この現象の背景にあるメカニズムを理解する必要がある。★…小保方さんを採用するときのインタビューで、彼女は私たち凡人の頭では思いつかない研究計画を提案していたので安心している。日の目を見なかったが最初のドラフトで「生への欲求は生物の本能だ」と、なぜ細胞にストレスを与える気になったのかの説明を始める感性は尋常ではない。★この論文には私も思い出が深い。最初にこの話を聞いたのは仕事でイスラエルに滞在していた約1年半前の事で、メールでの依頼に応じて論文のレフェリーコメントにどう答えればいいのかなどボストンのバカンティさんと電話で話をした。その後帰国してから、若山研に寄宿して実験をしていた小保方さんと出会って論文についてアドバイスをした。話を詳しく聞いて研究の内容についてももちろん驚いたが、小保方さんと言う人物にも強い印象を受けた。>

 この文章で理研の小保方採用人事にかかわっていたこと、研究について小保方にアドバイスをしたこと、小保方のネイチャー論文を科学論文としては評価していないことがわかる。医者の西川は「小保方がサイコパスである」と知りながら、あえて理研CDBに採用させるようにした、とも読める文章だ。
 (9/2の J-CAST Newsで香山リカが「自己愛性パーソナリティ障害とは、臨床のレベルで言えば、ほとんど妄想に近いようなファンタジーを確信している人たちのことを指す」と小保方に言及している。あんた最初は信じていたではないか。こういうのを「後だし」という。)
 さらに深読みすれば西川が「TCR遺伝子が再構成したT細胞からSTAP幹細胞をつくる」という一番重要なアイデアの提供者でありながら、共著者に名前を連ねていない理由も読めてくる。「小保方・時限爆弾」説もあながち荒唐無稽といえないだろう。西川さんは1/30/2014には理研をやめて、AASJに移っていたから、騒動には無縁だった。

 この文章の冒頭では、
 <メディアはこの話題で持ち切りだ。何人かの知り合いの記者からもコメントを求められた。自分の考えは全て自分のチャンネルを通してだけにしようと決めているので、メディアにコメントするのは全てお断りした。勿論このホームページ (HP)に書いた事を私の意見としてメディアに載せていただく事は、HPの宣伝にもなるので歓迎だ。さて、この論文については私も関係者の一人なので、まずそれを断っておく(神戸理研発生再生研究センター(CDB)に昨年(2013)まで在籍、現在も顧問)。>
 と自分の立場を明確にし、理研と距離をおいている。メディアへの距離をおいた対処法も立派だ。
 西川伸一は1948生まれ、1973京大医卒、1987熊本大教授になっている。私も血液学関係の学会で会ったことがある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B7%9D%E4%BC%B8%E4%B8%80_(%E7%A7%91%E5%AD%A6%E8%80%85)
 WIKIには
<STAP研究において論文やTCR再構成の助言を行うとともに[8]、小保方晴子のユニットリーダー採用にも関わっている[9][10]。研究不正再発防止のための改革委員会で西川を含む幹部の責任が厳しく指摘された後、CDB顧問を辞職した[11]。>
とあるが、内心CDB顧問をやめてほっとしただろうと思う。
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11 コメント

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Unknown (ttyama)
2015-09-08 13:45:23
「ネット集合知」がウソを暴いた事と、
「当事者」がシラをきり、
「出身大学と業界」がかばう流れは、
STAP事件と似てますね。。

「一般国民」に「わかりやすいウソ」だったけど、
いちデザイナーが王室弁護士を雇い、
国際裁判を起こすことの意味が軽視されてる気がします。
ヨーロッパ貴族がバックにいるでしょ?

盗作家が「ごめんなさい」しないと
「日本の国益」を損ねる事件になる可能性があります。


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Unknown (Mr.S)
2015-09-08 18:37:22
どっちにしてもたいしたデザインじゃないと思うけどね。
パクるほどの価値もないし、選ばれる価値もないデザインだったと思うよ、素人目で見ての事だけど。
その「素人目」が厄介だという事ですよ。
大多数が素人ですから、その素人からの支持がなければデザインの良し悪しは決定しない。
専門家でないと判らない、という言い訳など通用しない。
そもそも「デザイン」とは大衆的なシンボルであるべきなんです。
王室だろうがヨーロッパだろうが関係ないですよ。
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Unknown (ttyama)
2015-09-08 20:25:59
そう「エンブレムのでき」自体は本質でないのです。
あと2週間あまり、
このまま和解(取り下げ)せず裁判が始まることを期待してます。
「一般国民」が知らされてないエンブレム問題に関する「JOCと組織委員会の失態」が世界中にひろが...。

当初、日本のマスコミが「賠償金狙いの当たり屋」報道した事の手のひら返しが見たい。


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Unknown (Mr.S)
2015-09-08 20:58:06
外人は戦い方が上手だね。
まだまだ日本人は喧嘩が下手なんだろう。
訴訟起こすにも勇気が要るようではだめだな。
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Unknown (花土子)
2015-09-09 14:23:40
ヤン・チヒョルトのタイポグラフィ「T」と漢字の「飛・跳」を混ぜたんですかね。拡大すると危険なカラーデザインですね。ナチスやカルト宗教やヤンキー暴走族、サスペンス映画的な。

日本の信頼失墜、そうやって日本の貨幣価値が下がっていきます。
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Unknown (Mr.S)
2015-09-09 17:28:18
デザイナー一人の失態なんかで日本の信頼は失墜しませんよ。
信用もされてないと思うけどね、ヨーロッパなどにアジア民族の気持ちは理解できないだろうし。
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Unknown (花土子)
2015-09-09 21:04:20
組織の失態というか不正ですよ。日本に自浄作用があることは示せるとよいのですが。

国民の大部分は少ない給料から税金を差し引かれているというのに。年金取られるの嫌だな…。
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Unknown (Mr.S)
2015-09-09 22:11:55
気にしない、気にしない。
まぁ今回は白々しく盗作していないと言い張り、訴えられる筋合いは無いなどと欧州人に啖呵切っただけでも誉めてやろうじゃありませんか、日本の組織を。
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Unknown (花土子)
2015-09-10 00:31:57
分かり合えない( ` ´ )
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Unknown (Unknown)
2015-09-10 12:17:47
莫大な利権目当てで、実力のない人を担ぎ出してきたところなど、STAP事件と似ていますね…

ただ、うら若き女性の小保方氏と違い、オッサンの佐野氏に対しては、一般の人からの擁護の声がほとんどありませんでしたね。擁護しているのはほとんどがデザイン業界の方です(でした)。

生命科学者が一斉に批判していたのに、一般の人の擁護の声が多かったSTAP事件とは逆です。
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