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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【論語読みの論語知らず】難波先生より

2012-11-14 13:11:38 | 難波紘二先生
【論語読みの論語知らず】という言葉がある。多くの経済学者がそれではないか、と思う。
 1)自給自足型の農業社会では、物物交換が主体だったから貨幣の必要がなかった。李朝時代の朝鮮がそうだった。


 2)遠距離の交易が生じると、万人にとって価値が共通のレアメタルである金、銀が価値を媒介する貨幣として生じた。物物交換ではコストがかさみ、商品のロスも大きいからである。
 この段階ではアロイ(合金)技術が発展する。アルキメデスの原理はこうして発見され、グレイシャムの法則が成立するようになった。


 3)交易範囲が広がると、貨幣自体の重さがわずらわしくなり、紙幣が生まれた。これはモンゴによるの世界制覇の結果であり、このとき「世界史が誕生」したと岡田英弘はいう。紙幣は「国家による信用」の裏打ちがあって(兌換性紙幣)、はじめて有効に流通する。古代ペルシアにはすでに銀行があり、為替も存在したという説があるが、ロスチャイルド家の歴史を見ると、16世紀半ばにフランクフルトで両替商として始まったようだ。


 4)株式はある事業に必要な巨額資本を集めるためと、失敗の際にリスクを分散する方法として始まった。株が転売可能になると、バブルが発生し得る。最初のバブルはチューリップ球根の転売によりオランダで発生したが、その次は株式バブルとしてロンドンで「南海バブル」が17世紀に生じた。歴史的にみると、バブル後遺症からの脱却には、「痛い目にあった記憶」が失われるまで、ほぼ一世代30年かかる。


 5)生産者側のリスクを減らすために、先物市場が生まれた。リスク・ヘッジという。これは大阪の米先物市場が世界最初で、18世紀半ばに成立している。貨幣経済が普及すると、自給自足型経済から見えざる消費者を対象とした生産の経済に移行する。自由市場の形成である。ここにはじめて「見えざる手」を媒介とするアダム・スミス型の経済学が成立する。それは18世紀後半のことである。この段階で、農産物の生産・輸出を重んじる「重農主義」と商品の原料輸入・加工輸出を重んじる「重商主義」の対立が生じた。


 6)19世紀に入り産業革命が進行し、化石エネルギーの大幅利用が可能になると、動力を用いた工場における大量生産が可能となった。農村から都市への労働者移動が起こり、商品生産を職業とする階層が大量に生まれた。労働者階級の誕生である。この段階でマルクス経済学が成立する。経済は、生産が需要を引き起こす好景気と過剰生産による不況・倒産・失業とのサイクルを繰り返すようになった。しかしこれらは先進資本主義国家の話である。


 7)20世紀になる、ロシア革命の失敗に学び、工場生産型資本主義に固有の不況に対する処方箋として、ケインズ経済学が登場する。国家による公共投資により、社会インフラを整備し、失業者を救済すると共に道路、公共施設、ダムなどを建設することで、時間距離を短縮し公衆衛生をたかめ、社会そのもののレベルをアップしようとした。この最初の実験場がアメリカのTVA計画である。


 8)20世紀の終わりになると、先進資本主義国ではもはや社会インフラの整備が終り、不況対策としてのケインズ経済学の出番がなくなった。社会のIT化により、金融派生技術はますます高度になり、ソ連崩壊とあいまって、世界が単一の経済圏になった。しかも従業員が10万人を超える巨大企業が出現し、その年間売り上げは弱小国数カ国分のGDPを超えるという、20世紀の「国民国家の時代」には見られなかった状況が出現した。
 これが「グローバリゼーション」である。巨額の投資マネーがインターネットにより、瞬時にして国境を超える。ハゲタカ・ファンドにねらわれたら、小国の通貨などひとたまりもない。


 以上のように、社会構造の進化(時間軸による変化という意味で、「進歩」という意味はない)に対応して経済も進化している。21世紀の経済学は、生産と消費・流通、通貨と信用の制度、為替交換、中央銀行と国債・地方債の発行権などの問題を統一的に扱わないといけないが、それが扱える経済学はまだない。
 こういう基本的なことを押さえて、経済学の本を書いてもらいたいものだ。


 夜9:00のNHKニュースをほんと何年かぶりに見たら、「世界同時不況」ということを強調していた。まあ、「世界恐慌」だ。しかし、20世紀の前半と違い、ケインズ経済学では病人は治らない。円高で輸出が伸ばせないのだから、内需を喚起するしかない。ただ竹下内閣みたいに、ばらまきをやってもダメなので、この際、税制を変えアメリカと同じように全員確定申告制にし、サラリーマン控除をやめ、全員確定申告制にしたらよかろう。


 これでサラリーマンも自営業と同じように必要経費が落とせるようになり、納税者意識が高まり、かつタックス・リターンも増え、その分を消費に回せるようになる。税務署は申告の内容まで、いちいちチェックする必要はない。なぜなら、確定申告というものが普及することが大事なのだから。
 同じ医者でも関西の人は、学会費から学会旅費、宿泊費、本代まで、確定申告により必要経費として落としているが、東京や広島はノホホンとしていて、そういうことをやっていないと思う。(少なくとも私は「落ちないもの」と思いこんでいた。)
 これ、やるとやらないで、20万円位税金が違うはずです。

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