この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#520 「源氏物語」3(谷崎潤一郎訳)

2008年09月28日 | 日本文学
本当に長い間本棚にただ並んでいたこの谷崎潤一郎訳の「源氏物語」を私は最近読み始めた。全部でこの8巻のうち、今6巻を読んでいる。

私はこの訳の素晴らしさに感銘している。当時の皇族や高級貴族達による見事に丁寧な、心遣いあふれた言葉づかいがていねいに原文に忠実に現代語に訳されている。

もう一つの素晴らしい点は、当時の上流階級が意思の表明に不可欠であった和歌がすべて訳者の手によって訳注で丁寧に解釈がほどこされていることである。

そして随所に出て来る言葉のやりとりが、貴族の必須の教養である当時のどのような和歌や漢詩にもとずいているかも訳者は註で教えてくれている。

この宮廷文学はたしかに全くの雲の上の話であるが、人の営み、人の心理、男女や家族、競争相手の愛憎は、どの世界でも似たようなものであることがよく実感できる。

私は今6巻を読んでいる。
光源氏や紫の上はすでに亡くなっており、時代は光源氏や頭中将など最初の登場人物の実質的な孫の時代になっている。
物語としてすこぶる面白い。

登場人物の心理描写を読んでいると、生意気な言い方かもしれないが、私は今、作者紫式部に何ともいえない親しみを感じているのである。


画像:谷崎潤一郎訳「源氏物語」第1巻~第8巻 中央公論社刊 昭和34年9月~昭和35年5月初版 定価 各180円 新書版

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