この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#847佐伯有一著「近代中国」(中国の歴史8)

2015年03月21日 | 歴史

講談社刊の「中国の歴史」(1~10)の内の1冊である。

この1冊「近代中国」だけを私は持っている。

この本は懐かしい本というより、私の本棚に入って来た経緯が懐かしいのである。

製造会社に勤務していた私は、十数年の関西での工場の勤務後東京本社に転勤になり、学生時代を過ごした東京に戻って来た。そして東京に勤務している旧友たちと会う機会ができ、ゆっくりした再会を楽しむ事ができた。

それらの友人の一人に学者になっている女性がいた。

実は友人と言うには恐れ多いのである。

彼女は美しい女性で学生時代から多くの男子学生の注目をあびていた。美しいだけでなく理知的でかつ優しく全ての面で素晴らしい女性として崇拝者が多かった。

私も遠くから憧れの目でこの女子学生を見ていた彼女の崇拝者の一人であった。

そして大学を卒業してから十数年の後東京に戻って来たという私が、ある日、何とこの女性と喫茶店で、話をすることができたという幸運に恵まれたのである。

いろいろの話の中で、彼女はたまたまその時に求められて書いていた小論についても触れ、私の意見を求めてくれた。

私にとっては全く知識のない学問の分野であり、何の意見の持ち合わせもなかったが、初めからそうわかっていながら私の意見を求めてくれる彼女の気配りの優しさにあらためて「崇拝」の気持ちを持ったものである。

その小論の期限を尋ね、私なりの意見を連絡すると言った。

その後、その方面にほとんど無知の私は書店で何冊かの本を買い求め、幼稚ながらも自分の考えをまとめ、内容のない意見ながら電話で彼女に連絡した。

はじめから私の意見など期待するはずのない彼女であったと思うが、静かに私の話を聞いてくれた。そしてその後はとりとめのない話をして電話が終わった。

彼女にとっては何の役にも立たない私の意見であったろうが、電話が終わった私はあらためて自分が彼女の崇拝者の一人であるというしみじみとした実感を持ったことであった。

この本は、その時に買って読んだ本の一つであり、内容にということではなく手元にもつようになった経緯として私の懐かしい本なのである。

                                           (おわり)

画像:佐伯有一著「近代中国」(中国の歴史8)講談社刊 昭和50年1月12日第1刷発行  全385ページ

 

 

 

 

 

 

 

 


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