一昨日、私の所属しているシニア・シティズン・湘南の集りがあり、夜はアルコールも入れての談笑の会があった。その時に、会のメンバーで医療ジャーナリストのWさんがニーチェについて話しはじめられた。何がきっかけでニーチェの話になったのかよく覚えていないが、やがて廣松渉氏の話になった。Wさんはあらゆる分野に広い知識を持っておられ、少しアルコールが入った状態でのお話は実に面白くためになる。廣松渉氏は私が大学に入学したばかりのときに教養学部の同じ語学のクラスのクラスメートであった。
クラスメートは君と普通呼んでいるが、広松渉氏はすでに私より2歳年上であったし、世に通った著名な哲学者であるため、私が君とよぶのはいささか気がひける。氏と書くこととする。
氏はその後、哲学科に進み、やがて著名な哲学者になり、東大で教鞭をとるようになる。そして東大を定年退官をした後すぐ、今から11年前に残念ながら世を去った。
その時彼の葬儀に出席したが、その後に廣松夫人より頂いたのがこの本である。
この本のはしがきの終わりには194年3月吉日と記されている。彼は1994年5月22日に61歳で亡くなった。これが出版された彼の多くの書物の最後のものだったのだろう。この本のはしがきを
亡くなる2ヶ月前に書いたことになる。
私は彼の著作を読んでいないし、哲学書というのは私には縁遠い書物であったのでよく知らなかったのだが、彼はとても人気の高い、評判の哲学者であったようだ。
何年か前になる。シニア・シティズン・湘南の仲間のメール交換で、人の名前の読み方、呼び方が話題になり、みんなでわいわいとメーリング・リストで話合ったことがある。
その時に私が、私が大学に入学して初めてのコンパで、クラスメートの一人が自己紹介で言ったことをメールで次のように書いた。
「『「同じ下宿にフランス語に夢中な友人がいて、その友人が俺のことを、イロマツと呼ぶので困っている。 イロマツならまだましだが、最近はエロマツと呼ぶようになった。そう呼ばれるのに身に覚えがないわけではないが困っている。何故フランス語ではヒロマツイロマツと発音するのか、うらめしいよ。』と言って皆を笑わせた友人がいた。そして彼は後に哲学科に進学した。」と書いたと思う。
それに対してWさんがレスポンスを下さって、それは廣松渉先生のことではないかと言うのである。ご自分も廣松渉氏の哲学著書はよく読んだとおっしゃるのである。
Wさんの博識ぶりは以前からよく知っていたが、それは廣松渉先生ではないだろうかというご指摘には驚いてしまった。そして私がそのレスポンスに同氏のことを若干書いたことがあった。
一昨日の集まりの時にも突然、Wさんがニーチェのことを話された際に廣松渉氏のことも話されたのである。
なお、当日の集まりは何も哲学や文学を話合う集まりではなかった。ビデオ撮影と編集をする「シニアの」仲間が昼間にその研究会を開き、夜一杯飲んで談笑するという会なのであった。(つづく)
画像:廣松渉著「マルクスの根本意想は何であったか」状況出版株式会社
1994年5月25日初版同年7月9日第2刷 全241ページ
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