日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

夜の銀座は涙雨(番外編)

2009-10-27 22:19:44 | B級グルメ
過去に一回取り上げただけで完全に企画倒れになった感のある「都内のB級グルメ」が、他人様はもとより本人も忘れた頃に復活と相成りました。五ヶ月ぶりにご紹介するのは銀座一丁目の「煉瓦亭」です。
煉瓦亭といえば、オムライスの元祖であり、トンカツ+キャベツの組み合わせや、ライスを皿に盛るスタイルを編み出したことでも知られる三丁目の店が圧倒的に有名ですが、こちらはその煉瓦亭からのれん分けで生まれた店の一つです。本家と違い全国的な知名度こそないものの、常連客でにぎわう店内が、この店の根強い人気を物語っています。かくいう私も、今の職場に移るまでは、ランチや残業食のために片道10分の距離をわざわざ歩いて通ったものです。

世の中に洋食店は数あれど、その味わいとコストパフォーマンスのバランスにおいてこの店の右に出るものはないと私は思っています。あっと驚く奇抜なメニューや、この店に来たら絶対これというような名物メニューがあるわけではなく、出される品々はいたって普通の洋食なのですが、それは見方を変えれば「何の変哲もないものがうまい」という本物の名店の証でもあります。中でも秀逸なのがデミグラスで、ほとんど黒に近いような深い色合いのソースが、オムライスやハヤシライスはもちろん揚げ物にもふんだんに使われます。見た目通りの深い味わいには何度通っても感服します。揚げ物の衣も細かすぎず粗すぎず絶妙な食感で、ほんのり香る油にも素性のよさが感じられます。
メニューはオムライス、ハヤシライス、ドライカレーといった単品の他には、ポークカツ+クリームコロッケといった盛り合わせとスープ、ライスのセットメニューが中心です。もちろんファミレスの盛り合わせメニューとは全くものが違います。老舗の由緒正しさと満腹感を両方感じさせてくれる希有なメニューが、終日1000円台の前半でいただけるというお得感もこの店の魅力です。年配の店主夫妻、レジ係のおばちゃん、三人組のコックなど、店を切り盛りする人達にもそれぞれ味があり、居酒屋でならさしずめ「いい酒、いい人、いい肴」の三拍子揃った名店というべき存在です。たった一つ問題点を挙げるとすれば、この名店が今日限りで閉店になってしまうことなのですがorz

二週間前に久々に訪れたところ、月末で45年の歴史に幕を下ろすとの張り紙が。店主も店舗も寄る年波を感じさせるようになっていただけに、時代の流れで仕方のないこととはいえ、あまりに惜しい閉店です。なくなるからといって急に通い出すのは性に合わないのですが、今回ばかりは話が別です。以来3回ほど足を運び、ハヤシライス、オムライスなど特にお気に入りの品々一通り食して名残を惜しむことができました。虫が知らせたというわけではありませんが、結果としてこの名店の最後に立ち会うことができたのは不幸中の幸いでした。これでもう思い残すことはありません。よい店だっただけに返す返すも残念ですが、長い間おつかれさまでした。そしてごちそうさまでした(最敬礼)

ちなみに、系列の新富本店は引き続き盛業中なので、同じ味わいと雰囲気を体験したい方にはそちらをおすすめします。

煉瓦亭 銀座一丁目店
東京都中央区銀座1-14-1
03-3561-3838
1130AM-1400PM/ 1700PM-2100PM
オムライス1050円
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