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<ストーリー>
二つの話が並行して進む。
一つは、病院からの脱出を企む、みのすけ少年と患者仲間(丸星、杉田、岬、宝田、
品川先輩)のお話。精神的に、あるいは身体的にトラブルを抱えた彼らの脱出作戦と、
脱出を阻止しようとする病院の医師、看護士たち。やがて、みのすけたちは逃亡し続
け、海へとたどりつく。
もう一つは、ボケ老人を抱えた家庭の話。ボケ始めたおじいちゃんと、その息子夫婦、
孫たちとその友人たちが登場し、受験、妊娠、宗教など今どきの問題が進行する。
そんなおじいちゃんが、みのすけ少年に話してくれた、カラフルメリィの話。
実はおじいちゃんはみのすけ老人であり、みのすけ少年でもある。
はじめの病院の脱出劇は、おじいちゃんの頭の中で起こっている出来事だった。
<お芝居と脳梗塞と愛すべきキャラ>
とても楽しくて、いっぱい笑った。いいお芝居だと思う。
病気のことを扱っているのに観劇後は暗い気持ちにならず、むしろ元気になった。
みのすけ少年の笑顔と、みのすけ老人の飄々としたキャラが心に残った。
とはいえ、今回は観劇しながら、どうしても脳梗塞で亡くなった父のことがよぎって
しまう。それも悲しい思い出としてではなく、楽しい部分がクローズアップされて。
お芝居はお芝居。観劇をしていてもその辺は割り切っていて、自分の体験と重ね合わ
せることなど今まで一度もなかったのだけど、まさかそれがナイロン100℃の作品で
味わうことになるとは。
父の脳のCTスキャンで、黒く見える部分の面積が増えていくにつれ、脳が壊れていく
のを段階的に見せつけられているような気がして、それでも白い部分が少しでも残っ
ている限り、父は父だ。何ひとつ変わることはない。そう思っていた。
「カラフルメリィでオハヨ」の義彦も、ボケ始めた自分の父親のことを壊れた人間と
か、どこかが欠けてしまった人間としてではなく、最後までひとつの人格を持った父
親としてつき合おうとしていた、ただ一人の人間だと思う。
下田から兄夫婦がやってきて、ボケをバカにするような発言をしたり、妻が頭のおか
しな人間に接するような態度をとったり、孫の一人はボケを利用してお金を巻き上げ
たりするが、義彦だけは父親に対する見方にブレがない。
だから、父親の意表をつく行動に出合った時、自分の意思が貫けなくなりそうで、そ
のたびに泣いてしまうのだろうと思う。
(大倉孝二さん、最近シリアスな役どころが増えましたね。)
ケラさんの脚本はモノクロで味気ないCTスキャンではなく、自分の父親の脳をケラさ
んなりにスキャンしてみた断面図なのかもしれない。その断面図は切り取った部分の
輝きをうまく写し取っていて、どの写真を見てもイキイキと見える。もうしゃべるこ
ともできなくなった人間の見る夢が、このお芝居のようだったらいいのに。
ケラさん、スゴイ。重い題材を扱った私戯曲がこんなに楽しい作品だなんて。
と同時にケラさんのおかげで、私の父の姿までカラフルに彩られたような気がした。
それにしても、患者仲間の丸星、杉田、岬、宝田、品川先輩、それから医師と看護士
(婦)たちはバカバカしくて、頼りなくて、しかも愛すべきキャラたちだった。
ナイロンの役者さんたちはもちろん、三上市朗さん、市川しんぺーさん、小松和重さ
んら客演の人たちも、皆さんが実にツワモノぞろいなのでいっぱい笑わせてもらった。
最後に海にたどりついてからが、思いがけない展開で切なかったけれど。
ガンバルバ星人が、特に気に入った。
役名と同じ、役者みのすけさんの笑顔は(「消失」の時もそうだったけど)明るく笑っ
ていてもどうして物悲しさが漂うんだろう。
そして、おじいちゃんを演じる山崎一さんの長台詞、ブルーライトの中でしゃべり続
ける時間の長さは驚き。
あのシーン、だんだん危うくなってゆくおじいちゃんの記憶の中で、カラフルメリィの
イメージだけはとても鮮明に残っていたということになるのだろうか。本当にあった思
い出なのか、夢の中の出来事なのか、私にはわからなかったけれど。
この作品、リピートすべきだったかもと思い始めている。
『シアターガイド5月号』から(このブログ内の関連記事)
カラフルメリィがいっぱい(このブログ内の関連記事)
「カラフルメリィ~」観に行かれたんですね!
結局私は観に行けなかったので、
ムンパリさんの感想を楽しく読ませてもらいました。
うぅー、無理してでも観に行けばよかった。
あちらこちらの劇評でも、かなり評判良かったので、
観に行けなかったのが本当に残念。
劇中の映像が素晴らしいって評判があったんだけど、
よかったらどういう風に使われてたのか教えてくださいませ♪
wowowとかで放送してくれないかなぁ。(切実)
私、4演目で初めて観たんですがヨカッタですよ~。帰りに97年版のDVDを買ってしまったほど。
で、映像ですね。ちょこっと映像をからませる演出は、ナイロンの舞台ではときどきありますよね。
今回はですね、オープニングとして舞台の上に登場人物たちの等身大の映像を投影するという手法が使われてました。まるで今そこにいるかのように見せかけて、映像の中の人物が本物の舞台装置に合わせ、ありえない角度で腹筋したり、それぞれ面白い動きをするんです。たしか消えていくところで、あっ本物じゃなくて映像だー!!って。 ま、フツー、すぐに気がつくんですけどね(笑)。
続いてキャストの名前といっしょに、そのキャストのでっかい顔がドーンと映像で登場。ドキッとしてメチャ楽しい!
お話が少し展開し始めてからオープニングに入る、そのタイミングがまたカッコいいんですよ。
TV放映はWOWOWじゃなくてシアターテレビジョンかもしれませんね~。