星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

鴨居玲展に行ってきた。

2015-11-06 | ミュージアム・企画展
「没後30年 鴨居 玲展 -踊り候え-」に行ってきた。
11月3日はちょうど伊丹市立美術館の開館記念日だったらしく、
入館料無料だった。(初めて行ったので知らなかった。)

鴨居玲さんの作品をナマで見るのは初めて。
(昔、神戸にあった有名フレンチレストラン以外では。)
今回はデッサンを含む約100点が出品され、初出品作もあるそうだ。
構成は4つの章に分かれていて、特に凄かったのは「第2章 スペイン・
パリ時代」。それに「第3章 神戸時代 一期の夢の終焉」の一部。


美術館の外壁のポスター。作品タイトルは「出を待つ(道化師)」


今回のポスターになっている道化師の絵は、顔以外全面「赤」。
「赤」は初期の頃の作品にも大胆に使われていた。若い頃の抽象画の
赤は本物の血のようなどす黒い赤だった。
そして・・・絶筆となった自画像も「赤」だった。

このひとの絵が思わず目を留めさせ、心を捉えるのは、人間の本質的な
ことが描かれているからだろうか。
人が内面に抱え込んでいる闇の部分をさらそうとしているのか。
それとも変化し続ける自分自身をひたすら描き留めようとしているのか。
そこにあるものを見極めようと絵を凝視していたら、グワッとこちらの
内蔵をえぐりとられるような気持ちになった。痛みをともなって。
作品が発する力があまりに強いのでしっかり受け止めないと負けてしま
いそうになる。

一度ぜんぶ見終えたあとに、もう一度「廃兵」を見に行った。
廃兵は引退して静かに余生を送る老兵とは違う。社会に捨てられ、忘れ
去られ、それでもなお生き続けている一人の人間の、憤懣やるかたない
負のエネルギーが大きな塊となって迫ってくる。


これも美術館外壁にかかったポスター。作品タイトルは「私」


ところどころにご本人が写ったスナップ写真が貼ってあった。滞在先で
ダンスをしていたり、老婆と写っていたり・・・。
老婆を気配のように描いた絵や、教会の一連の作品もいいなあと思った。

神戸時代にリアルタイムで随筆を読んでいた一人としては、あの頃は
本当は苦しい時代だったんだ、とあらためて思い知らされた。絵に如実に
表れていた。私自身、いまこの年齢で観られてよかったと思う。
心地よい後味に終わらず、観た後に種々の思いがわいてくる作品展だった。

●「没後30年 鴨居 玲展 -踊り候え-」伊丹市立美術館で12月23日まで。
公式サイトはコチラ

ブログ内関連記事:鴨居玲さんの本『踊り候え』

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