星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

ツグノフの森  観劇メモ

2007-05-12 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)


 公演名  ツグノフの森
 脚本・演出  G2
 劇場  伊丹アイホール
 観劇日  2007年5月6日(日) 14:00開演
 座席  G列

「森」ですよ(笑)。
もうその響きだけで行きたくなるじゃないですか~。
ちなみに「ツグノフ」とは「償う」の意味らしい。
G2さん、小劇場回帰に突然めざめたらしく、とにかく小さな劇場でしか上演で
きないような作品をと、今回は自ら執筆。
G2脚本による「痛くなるまで目にいれろ」とか、MOTHER 最終公演の「ロング・
ディスタンス」が好きだった私は、ひょっとしたらエポックメーキングな舞台に
立ち会えるかも、と密かに期待して劇場へ行ったのだけれど・・・・・・。

以下、全面的にネタバレです。

<STORY>
震度3?これで?ありえねー。
彼女が昏睡状態に陥った夜、
大地はまるで意思を持ったかのように動きだした。
震度3と告げられたその地震は、すべての地表を横滑りさせていく。
ものの見事に破壊され、折り重なるようにうねり上がる大地。
新たな境界線を我が物にせんとハイエナのように争う人々、そして地方自治体。
日本は軽く、内戦へのステップを舞い始めた──
そんな中、とある画家が棲息する巨大な森の奥深く。
何かに導かれるように集まってくる人々の周りにも、
ゆっくりと静かに、狂気が立ち昇っていく。
それは恐怖?それとも癒し?
不安定な精神状態が、誰しもの三半規管を揺さぶり続ける中
歯車は大胆に、ひとつずつ壊れていく
(公式サイトより、そのまま引用)


<舞台セットなど>
森の中に住む画家のアトリエ兼自宅。舞台手前下手側がアトリエになっていて、
キャンバスが数点とイーゼル、画材などが置かれている。舞台奥上手側が寝室
になっていて、昏睡状態の女性が眠っている。
そのアトリエに出入りするのはヤクザ、姉弟、兵士、動物と戯れる男など。
ラストシーンで円盤が去った後、闇が訪れ、一面緑色の世界が広がる。緑の中
に小さな光が点在する場面で終わる。

<全体を通しての感想>
それぞれに事情を抱えた登場人物が同じ場所に集まって繰り広げる、荒唐無稽
のファンタジック・コメディ。
部分的に大笑いしたり、登場人物一人一人は面白かったけれど、全体としては
何が言いたかったのか? 台詞に出てきた言葉を引用すれば私には「わかりに
くい絵」で、点描画の点が最後までつながらなかった。私の想像力不足が大き
いのかもしれない。あと1回見れば作品に近寄れたような気がする。

このまま感想を書こうかどうか悩むこと数日(マジ?)。
しかたないので、後から点と点をつないで自分なりに絵を描いてみた。
その絵の題は「トーク・トゥー・ハー」。
そう。ペドロ・アルモドバル監督の映画のタイトルでもある。
この監督については、私も当ブログを訪れてくださるある方に教えて頂いた。
映画「トーク・トゥー・ハー」では昏睡状態に陥ったバレエダンサーの女性を
親身になって世話する介護士の男性の話が繊細なタッチの映像で描かれている。
ちょうど「ツグノフの森」のタニガワという画家がこの人物にダブる。
昏睡状態の女性、イズミの体の向きを変えてあげたり、マッサージしたり、と
きには話しかけたりするところや、やがて明らかになる二人の本当の関係、昏
睡中に彼女の身に起こった出来事・・・。そういう点も映画と酷似している。
で、ふと気づいた。
まさに「トーク・トゥー・ハー」という言葉で、タニガワとミナヅキ、ミシオ
とタケオの姉弟、三角形のペラペラがきれいにつながるんではないかと。

この作品には<対話>し続ける二人の男が登場する。一人は前述のタニガワ。
もう一人はバークレイという見えない動物に話しかけるミナヅキ。
最後にミシオが二人から教わったことは、死んだ母親(バークレイ=自縛霊)と
の「対話」だった。
自分の愛する夫(=ミシオとタケオの父親)を自分の子供たちに殺され、それを
自分のせいだと悲しみ、そこから動けないでいる母親。ミシオが彼女に話しかけ、
撫でることで、ようやく悲しみから解放される。
償わなければならないのはミシオとタケオだと思い込んでいた私は、母親の方も
二人に対して負い目を感じていたんだということが、この自縛霊の様子でわかっ
た。負い目を感じる相手からただ撫でてもらえるだけで、いったいどれだけ救わ
れるか。似たような経験を持つ私には想像がつく。
「ツグノフの森」は対話することで癒され、やすらぎを得る森。
私的にはそんなふうにこじつけてみた。
目に見えようが見えなかろうが、その対象と対話することは救いとか、癒しにつ
ながることだと思うから。

他の登場人物のなかで負い目が生じている関係としては、ヤクザのヨコミネ(頭
に直接ピストルの弾を撃ち込んだミナヅキに対して)、シモダ(自分が撃ち込ん
だバズーカ砲が原因で昏睡状態になったイズミに対して)の二人も考えられる。

<ディテール編>
全体としてはよくわからなかったけれど、部分的には楽しめたし、メチャ笑えた。
そんな断片メモ。
●笑い
・大笑い編
ここ、ご当地ネタっぽい。地震によってとんでもない場所にとんでもないモノが
出現したという混乱ぶりを伝えるニュースの大阪編。
「こちらは天下茶屋。大阪中のスーパー玉出全店が天下茶屋を埋め尽くしています」
スーパー玉出は1店舗でもキョーレツやのに、それはス、スゴすぎる~。
・小笑い編
バークレイと戯れる男ミナヅキが、昏睡状態のミズキだった頃の回想シーン。
ミズキと三角形のペラペラの二次元に関する会話がめちゃめちゃ好き。最後に出
発する円盤がデッカイのに薄っぺらいところも(笑)。転球さんの大阪弁と権藤
さんの博多弁(?)が醸す脱力系の空気もかなりツボでした。
坂田聡さん演じるヤクザと片桐仁さんのタニガワが「わかりやすい絵、わかりに
くい絵」についてマジメに話し合うところも楽しかった。

●キャスト
片桐仁さんはもっぱらG2演出作品でばかり見ているけれど、まじめな会話がどこ
となくオカシイというキャラが今回はよく生かされていたと思う。恋人の世話を
しながら穏やかに暮らしていた頃から一転、皆の前で真実が露呈してしまう時の
うろたえぶりが切なかった。
福田転球さんはどこまでが演技だかわからないほど転球さんだったにも関わらず、
この作品にはピターッとはまっていた。(あて書きの勝利?)とにかく出演シー
ンは転球さんから目が話せないほど思いっきり楽しませていただいた。
坂田聡さんの心優しいヤクザ。画家と絵画論(?)をたたかわす場面や数学パズ
ルに取り組んでいる場面が面白かった。かつて自分が撃ち殺したはずのミナヅキ
に探りを入れる会話にも味わいがあった。
タケオ役の杉浦理史さん、キモい感じがよく出ていた。あの髪型のカット代は
4500円とカテコで言っていた。
ミシオ役の岩橋道子さん、声がよく通る人だと思う。最後、母親に話す時の感情
が昂った表情を前の席で見てみたかった。
薄っぺらさが感じられる権藤昌弘さんの情けない演技、なかなかよかったと思う。
G2演出作品で何度か見ている久ケ沢徹さんはビジュアル的にも素敵な役者さん。
ちょっとズレた兵士のコミカルな狂気、TVコメンテーターのおかしさがそれぞれ
に味わえた。
イズミ役の水野顕子さん、ずっと横になったままオツカレさま~。その間に一気
にタニガワを奈落に突き落とすエネルギーをたくわえていたんだなと思った(笑)。

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2 コメント

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ありゃ~~。 (かずりん)
2007-05-14 12:32:20
昨日アイホールの前通ったら
終わってる事に気がつき愕然・・としました。
残念っ!!
家に遊びに来てくれたらよかったのにぃ~~~。
・・・と、再び残念っ!(笑)
返信する
接近警報 ♪ (ムンパリ)
2007-05-15 12:19:55
かずりんさん、終わっててゴメ~ン!
それ終わってからアップしたからねー(泣&笑)。
私も先行でハズれたので当日券で行ったのよん。
かずりんさん家、近いのかな~とは考えたんだけど、GW中だし、家族そろってのお出かけ予定もあるだろうから、お邪魔しちゃ悪いと思っちゃった。接近警報だけでも出したほうがよかったかなあ。次回アイホールに行くときはお知らせするねっ。
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