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新たな「地域文化財」発掘の息吹き

2008-01-10 08:22:22 | 日記・エッセイ・コラム

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 いま、伊予市では「地域文化財」発掘に熱い関心が集まっている。1月9日に開催された伊予市文化財保護審議会では、新たな文化財保護の対象が次々と提案された。昨年11月1日には、文化5年(1808)の郡中三町の独立(郷町引き離し)と安政大地震の湊町の記録など『郡中湊町町方文書』が伊予市指定文化財となった。現在、柚山俊夫先生によって解説書が作成中であり、新たな関連資料も添付される予定である。また、宮内小三郎家の登録有形文化財の申請は、主屋・新隠居・古隠居に加えて裏庭の石積み堀についても対象とされ、2月に正式申請がされることになった。Img_0010_edited_2

  審議会後は、「平岡のヤマモモ」の現地視察を行う。昨年10月2日、えひめ森の案内人の方からの連絡で、県下にも類を見ない巨木であり天然記念物としてとりあげてほしいとのこと。平岡集落を抜けてキウイ畑を越え、東側の尾根伝いに20分ほど山道を登る。前日に教育委員会の職員らで竹藪を刈り道をひらいてあったが、それでも険しい。目の前に現れた「ヤマモモ」は確かに大きい。幹周4.22m、根回り3.77m、田島先生によれば樹齢300年位ではないかという。旧伊予市ではめずらしい巨樹の発見である。平岡集落は、中世城址・平岡氏の山城があったところ。集落の辻には地蔵堂が残されている。Img_0024_edited

「地域文化財」という考え方は、60年代の後半、京都大学の西川幸治らによって提唱された。上からの文化財保護行政に対して草の根からの文化財保護を訴えたものだ。町並み保存などの伝統的建造物群の概念は「面」としての文化財保護として重要だが、「点」としての価値を法の枠組みで評価できない限界もある。法の枠内での等級付けも価値基準の弊害としてある。あらためて草の根の視点から「地域文化財」の固有の価値を発見・再評価する作業が必要なのだろう。Img018

 この日の文化財保護審議会では、委員の松田米博さんが自費出版した『秋鰯が消えた海-伊予灘鰯網史』が披露された。47年間、小網の漁家で「共栄網」のイワシ網に従事してきた松田さんの体験に基づく伊予灘・鰯網の郷土史研究であるとともに自分史でもある。伊予灘の沿岸の地形と鰯漁の歴史、高所から漁群を見張る山見(魚見)、近代化による巾着網、昭和18年の「共栄網」の始まりなど歴史や当時の写真も興味深い。共同で得た利益を平等に分配する「相互援助」の組織がイワシ漁を支えてきたことがよくわかる。その「共生」の理念で伊予灘の海洋資源の保全をと、「伊予灘漁業公社」設立の夢を語られている。「夏までにチリメンを獲ってしまう」資源の乱獲・減少によって秋イワシが消えた現代への警告でもある。20070519_2949561 松田さんの郷土史研究の契機は、村上節太郎が撮った「共栄網」の写真にあったという。ヒヤマと呼ばれる棚にイワシやエビを天日干しする漁村風景もかつての小網の原風景だった。


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