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『いーよ ぐるっと88』-伊予市「らしさ」の探求

2008-01-07 00:16:19 | 日記・エッセイ・コラム

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  新伊予市になってはじめての観光・歴史・文化のガイドブック『いーよ ぐるっと88』が発刊された。新春早々、伊予市内はもちろん松山の紀伊国屋・春屋などの書店にも並べられた。表紙の写真は、五色浜の旧灯台、中山の栗、双海の夕日と、旧市町のシンボル。タイトルや「癒しの心・ふるさと発見」も市民からの公募にもとづくキャッチコピーが採用された。新しい伊予市の総合計画は、「自立をめざす多様な地域が交流し共生するふるさとーひと・まち・自然が出会う郷(くに)づくり」を目標としている。そのためには、各地域の特性や多様な地域資源、地域づくりの経験・蓄積が生かされ、共有されなければならない。Img015

 今回の取り組みの経過を少し振り返ってみたい。一昨年の5月に伊予市の「宝」 地域資源調査の委員会を立ち上げ、調査の進め方について打ち合わせが行われた。まず第1に、地域資源・地域資産には、地域固有の自然的条件や景観、歴史的建造物などの歴史・文化遺産、産業や生活文化など、自然や地理的条件、歴史的に形成されてきた他の地域にはない「らしさ」があること。第2には、本来の「観光」とは、地域で形成された「国の光」文物・風光や暮らしを観ることであり、これまで地域資源を持続的に維持・活用する手立てをとらず、短期的な集客を目的とした施策によって貴重な景観や資源を磨耗・損失させたり、むら・まちを画一化・陳腐化させた例も多い。地域の個性である「らしい」資源・資産を再発見し、誇りにし、自ら守り育てるという住民による地域づくりの視点を大事にしたいということを基本においた。

Img009  その上で、①地域文化遺産の保全・公開・活用の視点(有形・無形の地域文化財・歴史的遺産の保全、地域づくりへの活用)②観光資源の維持保全・活用の視点(「観る・訪れる」側と住民との観光資源の保全・利活用のしくみ、「もてなし」の向上) ③風景・景観まちづくりの視点(夕日・里山・町並みなど海・山・里・まちの景観を生かしたまち・むらづくり)といった総合的視点で調査を行うこととした。

Img008  具体的な進め方は次のとおり。2006年6月からの第1次調査では、6月6日の伊予・中山・双海の地域めぐり。その後「地域資源調査カード」にもとづき、(A) 自然・気候・地質・植物(B)景観・町並み・村並み(C)文化財・史跡・寺社・歴史遺産・旧街道(D)伝統・祭り(E)農魚産物・特産品・食文化(F)観光・交通・デザイン(G)人物・物語などの地域資源を、「資源名」「所在地」「写真」「概要」「活用方法」についてまとめた個表を作成。この資源カードを集約して、ジャンル別の整理・検討を行うとともに、絵地図化して地域資源マップを作成し、地域の全体像をまず把握する。自然・空間・暮らしを横軸に歴史を縦軸に地域を読み解く。これは地元学の手法だ。この膨大な作業に7月から10月までかかった。10月25日から11月29日の1ヶ月間は、双海・伊予・中山をそれぞれ丸2日をかけて第2次の「あるく・みる・きく」の現地調査を行い、ポイントとなる地域資源箇所を委員が相互に解説・評価しながら選定を行った。文字通り、伊予市の山・海・まちのすみずみまで500ヶ所をこえるフィールド活動となる。大半が高齢者のメンバーとはいえ各委員の元気さ、熱心さには圧倒された。

Img011  2007年の1月に入ると、こうした基礎調査・データベースの成果を伊予市の観光ガイドブックとしてまとめることが提案され、まとめ方と編集方針が協議された。その結果、地域別には全市88のエリアを選定し、地域資源のポイントを整理する。テーマ別には、伊予市らしさをアピールできるテーマごとに観光・景観・歴史・文化・産業を紹介するという方針となった。そして2月以降は、新たに10名の編集委員会を構成して、伊予・中山・双海の委員で作業を分担し、エリアごとの資料調査・写真・取材活動、原稿執筆に取り組んできた。テーマについても、「いーよ」にかけて「14のテーマで伊予市がわかる」と、伊予市の特徴的なポイントについて新たに精査・整理を行うこととなる。

Img007  当初は、資料作成だけと考えていた委員も、原稿執筆や校正まで手がけることになるとは、とても考えていなかった。しかし、今回の88エリア500ヶ所をこえる地域資源の紹介は、出版業者委託では不可能なもの。ふるさとを愛し、地域の「宝」を知り尽くしたメンバーならではの成せる技である。中山担当の上岡貞義さん、双海担当の中嶋都貞さんは、ともに傘寿の80歳。伊予担当の松田建雄さんも喜寿の77歳。地域とともに歩んできた語り部によって、足元の「記憶を記録し」、地域への誇りが伝えられていくのではなかろうか。愛媛を代表する地理学者・村上節太郎に教えられたというお話も聞いた。写真1枚1枚にも、その思いが込められている。限られたページ内にまとめ上げる苦労もあった。この『いーよ ぐるっと88』によってむら・まちを読み解き、伊予市らしい新たな地域づくり、サスティナブル・ツーリズムに活用されることを何よりも期待したいものだ。

  「足元を掘れ、そこに泉湧く」。


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