gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

景観ウォッチングー遊子水荷浦・津島御槙

2008-03-22 23:34:28 | 日記・エッセイ・コラム

Img_0006_edited

 岡田文淑さんと「むら・まち講」メンバーで、3月22日、宇和島の遊子水荷浦と津島御槙の景観観察フィールドワークに出かけた。Img_0025_edited 昨年7月に「重要文化的景観」に選定された水荷浦の段畑は、宇和海の海に映えた急峻な石積とともに半農半漁の暮らしと文化を伝える。訪れる人も急激に増え、直売所など観光整備がすすむとともに、あらためて「美しい景観」とは何かが問われているようである。Img_0011_edited 文化的景観と地域の暮らしとの調和、選定後の地区の景観計画の具体化を住民・行政・専門家などですすめていくことも課題なのであろう。引き算型で考えるならば、まずは「美しくない」ガードレールや看板の見直し、施設・建築物のファザードから手がける必要があるのかもしれない。Img_0040_edited ジャガイモ栽培とともに漁業の暮らしの伝え方にも工夫がいるのではないかと思いながらシャツターを切った。

 Img_0091_edited 津島・御槙盆地の中にある御内(みうち)には、「せんまく」と呼ばれる杉の防風林に囲まれた美しい農村景観が残されている。茅葺屋根の頃に、台風や季節風の被害から家を守ってきた「せんまく」は、杉やヒノキ・つばきなど様々な樹木を生垣として生かす独特の農村文化を育てている。Img_0058_edited 御内地区・槙川地区の世帯は約220、人口は約440人と聞いたが、静かな山里で高齢者が生垣や庭の手入れをしている姿があちこちで見られた。「剪定が大変でしょう」と声をかけると「みんながきれいにしているからね」と、村の美しさを誇りにしている様子がうかがい知れる。Img_0078_edited 生垣のオブジェやドーム、各家々の庭には季節の花が植えられ、石積みの通路や路地の面白さが、さながらガーデン・ビレッジの趣を醸し出している。Img_0094_edited 耕地整理やコンクリート張りの街路・水路が気にはなったが、美しい「せんまく」の村並みもまた未来に生かすべき地域資源。岩松川沿いの町並みと「せんまく」の村並みの連携を今後期待したいものだ。


サスティナブル・ツーリズムとまちづくり

2008-03-18 22:31:14 | 日記・エッセイ・コラム

Img_0289_edited

 『いーよ ぐるっと88』の発刊を機に、合併後の伊予市のサスティナブル・ツーリズムを考えるフォーラムが、3月15日伊予商工会議所で開催された。サスティナブル・ツーリズムという言葉には、次世代へ環境や資源を維持・発展させたいという願いがこめられている。国連世界観光機構は、「持続可能な観光開発とは、未来の人々の機会を守り強化しつつ、現在の旅行者とホスト地域がもっている要求にこたえるもの。あらゆる資源を、もとのままの文化、生態系が必要とするプロセス、生物の多様性、生活支援システムを維持しつつ、経済的・社会的・美的なニーズを満たすことができる仕方で管理すること」と定義している。Img_0292_edited

  鈴木茂・松山大学教授は、基調講演でグローバル化・ポスト工業化社会のもとで観光サービス産業の必要性とともに、愛媛の地域開発の歴史から観光政策の課題にふれ、産業振興との調和、衰退地域・合併後の総合的な観光振興計画の立案・実施にどう挑戦するかが課題とした。とりわけ観光産業の特徴として第6次産業としての多様性、女性が主役になれる地域密着型のサービス産業、観光客の視線を意識したホスピタリティある地域づくりをあげ、これからは交流・学習型観光、ソフト・ツーリズム、サスティナブル・ツーリズムの道をめざすべきとした。また都市と農村が共生するイギリスの美しい農村、ナショナル・トラスト運動を例に、都市から農村への所得循環の仕組みをつくることを強調。伊予市が拠点都市として都市的機能を再生すること、歴史的建造物の保存、水辺景観・農村景観の保存・利用などによって住民の生活の質を高めることが地域づくりであり、観光開発はその手段であり結果であるとした。合併効果として海・山・里・まちの未利用・遊休化している地域資源を観光客の視線で再発見し、松山圏域・「エミフルMASAKI」のインパクトを活用する重層的なネットワークで、住民が誇れる美しいまち・むらづくりをとしめくくった。Img_0236_edited

 フォーラムでは、編集にかかわった各委員から伊予市の歴史文化・観光資源の豊かさが報告され、観光カリスマ・若松進一さんは、心の中の夕日の思い出がまちづくりの原点だったこと、子どもたちがふるさとを誇れるようにしたいと語った。今後の提案として、パネラーからモデルコースや観光ボランティアの育成、学べる観光・「伊予市学」の発展、漆の梅の里の保全、夕日ばかりでなく朝日も美しいこと、五色浜のさざえ掘に海水を、自然海岸を楽しむ森の遊歩道、拠点施設をインフォメーションセンターになどと多くの具体案が述べられた。Img_0307_edited_2

 「観光まちづくり」とは、住民が主体となって自然・文化・歴史・産業・人材など、あらゆる資源を活かし、交流を振興し、美しいまち・むらをつくることである。サスティナブル・ツーリズムという知的ソフト戦略によって、環境や景観、経済・社会・文化を含めた総合的なまちづくりへと発展させていくことが重要と思われる。「観光まちづくり」は学習であり地元学でもある。そして次代を担う子どもたちにふるさとを伝えていくことでもある。21世紀型の持続可能な都市と農村の共生のために『いーよ ぐるっと88』がテキストとして活用されるよう期待したいものだ。 Img_0310_edited_2

 春の日和に誘われた次の日、閏住の菜の花街道、翠小学校区の「石窯香房みどり」を訪ねた。ここでもふたみグリーン・ツーリズムをすすめる岡田博助さんや西岡農園の西岡さんとフォーラム実践編の話。石焼の紫いもやいちごまでいだいた。シーサイド公園では、パネラーの中嶋都貞さんともばったり。「観光まちづくり」の知的エネルギー溢れる面々ばかりである。Img_0321_edited 23日は郡中の五色姫まつり。今年から地域の女性たちによって商店街に雛人形が飾られるようになった。まちを歩くと、宮内邸の格子戸からもお雛さまが覗いていた。『いーよ ぐるっと88』が、新伊予市の人々をつないでいく。


市街美に町位を荘厳する-臼杵の市民力

2008-03-02 23:52:12 | 日記・エッセイ・コラム

Img_0013_edited

 全国で春一番が吹き荒れた2月23日、地域づくりの仲間たちと大分の臼杵のまちを訪ねた。十数年前から臼杵のまちをしばしば訪れるようになったが、歴史的町並みはそのたびに様々な顔を見せてくれる。臼杵の景観を守る会会長・斉藤行雄さんたちが開催した「まちづくりセミナー」では、臼杵デザイン会議、臼杵伝統建築研究会、うすき竹宵、うすきツーリズム研究会、ふるさと風の映画学校、大分建築士会臼杵支部と、臼杵のまちづくりを支えるグループによるディスカッションが交わされていた。Img_0011_edited 八町大路とよばれる中通り中央商店街のアーケードが撤去され、二王座歴史の道などと調和した歴史的景観が形成されたが、商店街店主や市民意識の向上、観光施策と町並み保存のあり方などが課題として議論されていた。感心したのは、行政から自立した各団体が、自らの主体性をつむいでまちづくりに取り組んでいること、安易に「一つにまとまらない」ことで、多彩な強みを発揮している市民力の成熟度である。Img_0061_edited

  斉藤さんからお聞きした臼杵の景観を守る歴史のなかで、昭和9年に臼杵史談会が提唱した『名蹟の標石建設』の一節が印象深い。「臼杵の名蹟は・・洵に臼杵の誇りであり、また光彩であり、更に市街美の上に典雅なる潤いを与え、町位を荘厳すること、そも幾許であるか量り知れない」。゛市街美の上に町位を荘厳する゛という市民の文化意識の高さがうかがえる。その標石の一つ、畳屋町のT字路に立つ「石敢當」旧址を案内してくれた。「石敢當」(せっかんとう)は、悪魔を追い払うという石。敢當とは無敵の意味。福建省から伝来し、沖縄など西南諸島に広く分布しているらしい。異文化は西南の海からやってきた。Img_0063_edited 洋風建築「サラー・デ・うすき」の裏には、ポルトガルタイルの見事な壁画の蔵がある。ポルトガルとの交易をすすめた大友宗麟ゆかりの町らしいシンボルである。蔵には紙の雛飾りが展示されている。 天保の改革の頃、第14代臼杵藩主・稲葉観通の倹約令によって雛人形の雛飾りが禁止され、紙雛のみが許されていた当時の紙雛を復元したものだ。Img_0010_edited

 臼杵デザイン会議が手掛けた古民家再生の経験を「伝える技」事業も取り組まれており、「大工講座」「造園講座」での技術の継承によって文化財を維持していると聞いた。会員によって古民家を買い取り、再生した家を見学させていただいたが、古いものの継承と新しい暮らし方の創造がなされ、いつまでも座っていたいと思うような快適な住まい空間を提供していた。Img_0054_edited 斉藤さんの新たな再生プロジェクトの対象物件にも案内された。中高年の大工講座会員による共同作業で古民家を再生するとのことだ。一人ひとりの市民の力によって臼杵らしい町の市街美を蘇らせる。斉藤さんたちがすすめる究極の市民型ナショナルトラスト運動は、西南の海からきた交流文化が育てた進取の風なのだと思ってみた。