ゾディアック

アメリカで実際に1969年から連続して起こった殺人事件をもとにした一作。未解決事件であり多くの謎に包まれたまま、関係者が死亡するなどして未解決のまま現在に至っている。

2007年　アメリカ　サスペンス、ミステリー
2007年6月27日　ワーナーマイマル・シネマ・新百合ヶ丘
監督　デヴィッド・フィンチャー（セブン、ファイトクラブ）
出演　ジェイク・ギレンホール（デイ・アフター・トゥモロー）、マーク・ラファロ（コラテラルなど）、ロバート・ダウニーJr.、アンソニー・エドワーズ（フォーガットン、ER/緊急救命室、トップガン）、クロエ・セヴィニー（メリンダとメリンダ）
(出演作品などは、私が観た物にかぎる)

ゾディアックと名乗る劇場型連続殺人犯が現れた。刑事と新聞記者というそれぞれの立場で4人の男たちが犯人を探す。その中で、風刺漫画家ロバート(ジェイク・ギレンホール)はこの事件に次第にのめりこんでいく。彼が家庭を崩壊指せてまで執着したこの事件だが・・・。

当時はとても珍しかった劇場型連続殺人犯。殺した人数はさほど多いのはいえないが、名前を自分で名乗ったり、暗号文をマスコミに送りつけてくるなど、独特の自己顕示欲を示している。こんな犯罪は今では日本にも現れているが、無意識のうちにこのディアックの影響を受けていると言えるだろう。
素顔を見せて銃で撃ったかと思うと、覆面をしてナイフで刺したり、カップルばかり狙っていたのがタクシー運転手を殺したり・・・数年沈黙を守ったかと思うと連続して手紙を送りつけてきたりと、行動に法則性が見出しにくい。当時は筆跡鑑定と指紋照合くらいしか科学的な捜査ができないし、管轄の縦割りによる連絡の悪さや、ファックスのない署もあって、捜査が難航してしまう。
犯人はのうのうと生活しているのに、追う側は次第に疲弊していくのも印象に強い。後半はロバートの活躍ぶりが目に付く。本業の風刺漫画を放り出し、家庭をだめにしてまでゾディアックにのめりこんでいく彼は、「真実を知りたい」というシンプルなところにいるからこそ、そこに留まっていられたのか？しかし彼が家庭も仕事もめちゃくちゃして、命の危険さえ犯して知りたかった真実は未だに判明していない。映画を見終わったときに中途半端な気持が残るが、そこがこの映画の持ち味だろう。元々オタク気味で変わり者のロバートでなくても、映画を見るうちにやはり真犯人を知りたいという気持にさせられてしまう。そんな説得力のある一作である。
出演者はいわゆるハリウッドの人気者を登用せず、地味な実力派で固めて成功している。アンソニー・エドワーズの「かつら」には少々違和感があったが、地のままだと年齢の割りにハゲすぎていて目立ちすぎるのだろうか。
変な効果音を使わず、カメラワークやカットの巧みさで怖さを表現。ヒッチコックを思い出させる高質度だ。特に地下室の場面は怖い！上手い！
時間が急に何ヶ月も何年も飛んだりして、時々面食らったが、157分の長尺を感じさせない。少々変形だが、質の高いサスペンスだろう。

細かいところで見せる気の効いたセリフやユーモアも面白く、好き嫌いは分かれるのだろうが今までのフィンチャーの中では一番好きかな？