吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

アンディー・ウイアー『アルテミス』ハヤカワ文庫SF(2018年1月25日発行)

2018-04-03 07:52:38 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 『火星の人(オデッセイ)』で華々しくデビューしたウイアーの第2作。こんどは月での秘密工作()。



 近未来、月には小規模ながら都市が建設され、宇宙開発に携わる技術者だけでなく、そこで働く労働者の街もある。
 ただし、最下層の労働者の住居はカプセルホテル並みの個人スペースしかない。
 主人公ジャズ(女性です)は下層居住区からの脱出資金を貯めるため違法行為に手を染め、陰謀に巻き込まれていく・・・。

 月での限られた資源を隅々まで活用する生活が細部まで描き込まれて臨場感はタップリ、様々な施設もリアリティが凄いンです。

 しかしこの月都市『アルテミス』の社会構造は疑問の連続・・・ここ、法律はナイのか?(ほぼ無法地帯?)とか、これだけの破壊をやっておいて、ほぼお咎めナシってぇのはなー・・・とか、閉塞的な現代に生きるニンゲンには信じられない出来事の連続です。で、危ない橋を渡って稼いだ大金をほとんど失うって『黄金の七人』のような結末!
 解説には『月はフロンティアでまだ若い社会』とあるが、西部開拓時代のようなおおらかさに『何なんだ?こりゃ!』と思ってしまうのは確か。

 主人公は月面の重力下で小気味よい活躍を見せるので、それにつられて読み進めれば・・・ま、いっか。
 楽しく読み進んで、ラストはめでたしめでたし(・・・をいをい、笑っててイイのか?月面基地壊滅してほぼ全員死ぬところだったンでしょうが!)。あああっ!何か腑に落ちーーーん!