千葉茂樹 訳
あすなろ書房
1850年代のアメリカで、逃亡したした奴隷家族をかくまった一家のお話。
ある夜、10歳の少女アマンダは、奇妙な人の声や物音に外に飛び出すと、麻袋が馬車から下ろされるのを見た。しかも、その麻袋はもぞもぞと動き出した。その正体は、逃亡した奴隷の家族だった。家族は4人で、その中にアマンダと同じ歳の少女ハンナがいた。一家は、アマンダの父親に案内されクローゼットの奥の隠し部屋に入っていった。次の日、アマンダは、ハンナの身の上、逃亡の話を聞いた。ハンナ家族は、ある主人のもとで奴隷として働き、読み書きを学ぶことは許されていなかった。10歳になったらひとりで、よそへ働きに出されるという。父親は奴隷市場に売りに出すという話が出ていた。そこで、家族は逃亡することにしたという。かれらは、『地下鉄道』という、逃亡を手助けする味方を頼って、ここまでたどり着いたのだった。アマンダは、ハンナに自由を感じさせてやりたいと、人目につかないよう気をつけながら、外に連れ出した。しかし、馬の蹄の音が近づいてきて…。
アンクル・トムの小屋より読みやすく、奴隷社会のことを学べる物語です。
ハンナの仕事は、お嬢様の世話で、綺麗な服や、柔らかなベッドに眠ることができるとありますが、逆に親たちは粗末なものを着、粗末なわらのベッドに寝て、美味しいものは食べられない状況が想像できます。そして、主人の都合で、父親は、1人奴隷市場に出されてしまうという酷い状況が待っています。そして、ハンナも、次の仕事場の女主人は、奴隷がうれしそうな顔をしただけでむちでたたくという、うわさも聞いたと、言っています。短いストーリーの中に、奴隷社会の悲惨さを残酷なシーンは描かないけれども、もれなく詰め込んでいます。ハンナのおばあちゃんは、もとはアフリカの女王だったと説明するシーンも重要で、もともと、奴隷が、アフリカから連れ去られて来た人たちだということも分かります。