めいすいの写真日記

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根津美術館を訪れる (2) ・・・ 展示品など

2009-11-21 | 美術館を訪れる
 新装なった根津美術館は、ほぼ一年にわたり「新創記念特別展」を8部(1部・・・休みを除き、ほぼ4週間)に分けて行います。
 私の行った時は第2部の「根津青山の茶の湯」(2009.11.18 ~ 12.23)特別展を行っていました。

 これまで知らなかったですが、国宝の絵画などは、公開している時は照明による紫外線や熱などによって劣化してしまうため、
1年間に4週間以上は公開してはいけないという文化庁の指導があるそうです。
 このため、この美術館でもっとも有名な「那智瀧図」は第1部「国宝那智瀧図と自然の造形」(2009.10.7 ~ 11.8) 特別展で公開してしまったので、
今後ほぼ1年は見られないことになります。



 この日見ることが出来たのは、この美術館の3つの国宝のうちの1つ「鶉図」(うずらず)。縦24.4cm 、横27.8cm 。
 伝 李安忠(りあんちゅう)筆、中国南宋時代 12・13世紀。

 展示室の解説文には 
 「赤い実のなった枸杞(くこ)や穂のついた雄日芝(おひしば)が生えるなか、1羽のうずらが歩む。
 うずらは、精緻な羽描きによって、量感豊かに表現されている。その実在感に飛んだ表現は、本作品が宋代花鳥画の名品たらしめている。
 画面右上に足利義教の鑑藏印「雑華室印」が捺されている。」
 とありました。

 この作品が何故、「国宝」なのか?展示室のケースのガラスにおでこを擦り付けてじっくりと見てみました。
 やはり羽の描き方などは本当に精緻で素晴らしい描写です。植物の表現も見事です。
 また、足利将軍家に蔵されていたということも国宝になった理由のひとつでしょう。
 それと、この美術館の学芸員の話では、中国にも南宋時代の絵画はほんとんど残っていないのだそうです。
 南宋の後、漢民族以外の異民族が侵入して中国を支配したので、こうしたものは破棄されてしまいがちということらしい。



 根津美術館の収蔵品の中で、特色のあるのが「殷・周時代の青銅器」。
 世界屈指のコレクションとして知られているようです。
 殷という時代は、紀元前17世紀~11世紀。気が遠くなるような遠い昔です。こうした作品を良く揃えることが出来たと感心します。
 
 この青銅器は「双羊尊」です。殷時代13~11世紀。高さ45.4cm。口径14.9cm ~ 18.4cm。
 2匹の羊が合体し口の開いた器を背に載せています。尊とは酒を供える盛酒器。 
 器には大きな獣の眼が見開き、羊の身体は鱗で覆われ、足のつけ根には龍がとぐろを巻いています。
  大英博物館に同型のものがあり、どちらが雄で、どちらが雌なのかとの論争があるのだとか。
 入場券にデザイン化された、この「双羊尊」が印刷されていました。美術館のシンボル的な役割を持っているようです。



 殷・周など古代中国の青銅器を展示しているのは2階の「展示室4」。
 根津美術館を新装したのは、これらの青銅器を整然と展示するための専用ギャラリーを設置したいという目的もあったとのことです。 
 この部屋の中央に一際目立ち展示されているのが、この「饕餮文方盉(とうてつもんほうか)」です。

 「盉 (か)」とは、酒を、他の酒、香料、水などと混ぜたり、盃に注いだりする酒器。殷時代13~11世紀。高さ71.2 ~ 73.0cm
 「饕餮」とは古代中国の神で、頂面に描かれています。
 この写真では分かりませんが、細部にわたって凝った造形がされていて、力強さが感じられます。
 同型の盉が3個揃っているのも珍しく、右、中、左と彫り込んであるので3個セットということも分かるのだそうです。
 このため、殷王朝の所有品であった可能性が高いとのことです。
 この3個セットの「盉」をオークションにかけたら、「ハウマッチ?」・・・なんと100億円は下らないだろうとのことでした。



 根津美術館には、仏像彫刻がガンダーラから中国、そして日本の平安、鎌倉の木彫りなど多く収蔵されており、
石像がホールに、木彫り彫刻は展示室3に公開されていました。
 
 私は、この中で展示室3の一番奥にあった「帝釈天立像」に惹かれました。
 定慶作。鎌倉時代 建仁元年 ( 1201年 )。像高 183cm。
 今も興福寺に残る梵天像と一対をなしていて、元は興福寺に安置されていたとのことです。
 興福寺といえば、高校時代の修学旅行で阿修羅像をつくづくと眺めた思い出があります。
一時は同じ建物の中に安置されていたこともあったのでしょう。
 正面に立つと、とても良い表情をしておられ、落ち着いた心になれるような気がしました。

 館員の方に、この像から受けた感想を話してみました。
 私・・・「彫刻というとギリシャ・ローマの彫刻などヨーロッパのものばかりが良いものに思え、日本の仏像には最近まで興味を持たずにいました。
改めて、仏像を見てみると日本人の彫刻の技術というのは、高い技術があるということが分かってきました。
むしろ仏教彫刻の方が優れているのではないかと思います。」
 館員・・・「やはり、ギリシャ・ローマの彫刻は時代が古く価値のあるものです。ここのホールに何点かガンダーラの石像の仏頭が飾ってありますが、
ギリシャ・ローマの彫刻の影響を受けて、これらが作られ、シルクロードを経て中国に彫刻文化が伝来し、日本の仏像の手本となったと考えられます。
したがってギリシャ・ローマの彫刻がなかったら、日本の仏像もまた存在しないと考思います。」

 私・・・「帝釈天立像に感銘を受けました。この美術館の所蔵する仏像の中には何点も重要文化財になっているものもあります。
この像が重要文化財でないのが不思議な気がします。」
 館員・・・「確かに表情はよいと思います。ただ、この像は定慶の作です。運慶・快慶の作でなく、弟子の定慶である点にやや問題があります。
それと江戸時代に修復が行われていて、その修復方法に難点が見つかっているのです。」
  
 ---写真は根津美術館発行「百華撰」より---


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