【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長代行 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

〜Facebook「華文俳句社」〜 〜【俳句界】2022.6月号〜

2022年05月30日 16時03分40秒 | 月刊誌「俳句界」

俳句大学国際俳句学部よりお知らせ!

〜Facebook「華文俳句社」〜
〜【俳句界】2022.6月号〜

◆2022年『俳句界』6月号が発行されました。
◆華文圏に俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。
◆東北公益文科大学教授の呉衛峰氏、台湾詩人の洪郁芬氏を中心として、マレーシア詩人の趙紹球氏、台湾詩人の郭至卿氏の四人が2018年にFacebookグループ「華文俳句社」を立ち上げました。
◆2018年11月1日には、華文俳句社の四人による二行書きの華文俳句の合同句集『華文俳句選』(醸出版)が刊行されました。
◆ 二行俳句の個人句集では、洪郁芬氏が『渺光乃律』(2019、10)を〔華文俳句叢書1〕として、郭至卿氏が『凝光初現』(2019、10)を〔華文俳句叢書2〕として、次々に刊行しています。
※全季節を網羅した、世界的にも画期的な「歳事記」が2020年10月に発行されました。これで季重なりの問題が解消されるでしょう。
◆さらに、2020年1月からは月刊『俳句界』に「華文俳句」の秀句を連載しています。
◆2020年『俳句界』3月号の特別レポートにおいて、「熊本大学」で呉衛峰氏が行ったラウンドテーブル「華文俳句の可能性」の報告が8頁に渡って掲載されました。
◆どうぞご理解とご支援をお願いします。

俳句大學國際俳句學部的通知!

~Facebook 「華文俳句社」Kabun Haiku  2022・6〜

◆2022年『俳句界』6月號已出版。
◆於華文圏提倡包含俳句的基礎「一個切」和「兩項對照組合」的二行俳句。
◆2018年12月1日已出版華文俳句的合著,『華文俳句選』。
◆2020年『俳句界』3月號以八頁的篇幅特別報導了於「熊本大學」舉辦的「華文俳句の可能性」座談會。
◆請各位多多支持指教。

華文俳句【俳句界】2022,6月号

永田満徳選評・洪郁芬選訳華文俳句【俳句界】2022,6月号
永田満徳選評・洪郁芬選訳


小孫子戲拉月老白鬍鬚
壽桃

帥麗
〔永田満徳評論〕
「壽桃」是台灣季語,是祭祀神明誕辰時常見的供品。月老是掌管男女姻緣的神明,「月下老人」的簡稱。小孫子跟祖母一同參拜,在祖母祭拜其他神明的時候,手上拿著壽桃的孫子他在一旁嬉戲,拉著月老的鬍鬚玩耍。此俳句描寫當孩子不得不參與大人的活動時,他們穿插在大人中間其間那天真可愛的模樣。

月老の髭を引く孫や寿桃菓子

帥麗
〔永田満徳評〕
「壽桃(ジュドウ)」は台湾の季語で、主に神の生誕を祝うときに祀るお菓子。「月老」は婚姻を司る神「月下老人」のこと。祖母といっしょにお参りし、祖母が他の神を敬拝しているときに、「寿桃菓子」をあてがわれた「孫」は月老の髭を引っ張って遊んでいる状況である。大人の行事に付き合わされる子どもの素直な仕草をうまく切り取っている。


烏俄談判桌下的伏特加
愚人節

胡同
〔永田満徳評論〕 
烏克蘭的玉米產量多,也是以玉米為原料的伏特加的名產地。此俳句大概是諷刺侵略烏克蘭的俄羅斯,在雙方交涉的談判桌上,因為普丁無理的要求,使每一次的談判總是難以順利進行。雙方交涉現場的「伏特加」是一個象徵,引發各式各樣的聯想,也讓讀者能用各種不同的方式解讀,非常有趣!

烏露交渉の卓下のウォッカ四月馬鹿

胡同
〔永田満徳評〕
ウクライナはとうもろこしの生産量も多く、とうもろこしを原材料とする「ウォッカ」の生産も有名である。ウクライナ侵略の「停戦交渉」がプーチンの無理難題によって、なかなか進まないことを風刺的に詠んでいるのであろう。宇露交渉の場にある「ウォッカ」の存在が意味有り気で、様々な読みができるところがおもしろい。


戴着口罩追逐的孩童
風信子

鐵人
〔永田満徳評論〕
當今新冠狀病毒的感染已經蔓延到日常生活的各個角落。所有人,連孩子都無法置身其外,待在室內的時間愈來愈多。日本有個諺語說孩子是「風之子」,大概是指他們無論發生什麼事,都能活潑的玩耍。在一個風信子盛開的公園,孩子們戴口罩四處奔跑,瘟疫中展現著旺盛的生命力。

マスクつけ追ひかけつこやヒヤシンス

鐵人
〔永田満徳評〕
新型コロナウイルス感染症は日常生活の全般に及んでいる。子どもといえども例外ではなく、室内で過ごす時間が多くなる。しかし、「子どもは風の子」という諺があるほど、どんな状況であろうと、元気よく遊びまわるものである。「ヒヤシンス」の咲いている公園で、マスクをつけてまで元気よく遊ぼうとする子どもの生態をよく描いている。

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国際俳句〜Facebook「Haiku Column」〜【俳句界】2022年6月号

2022年05月30日 15時57分37秒 | 月刊誌「俳句界」

俳句大学国際俳句学部よりお知らせ【国際俳句の取り組み】!

〜Facebook「Haiku Column」【俳句界】2022年6月号〜

注目:『ウクライナ特集】(今月の秀句より)
 
◆俳句総合誌『俳句界』2022年6月号が発行されました。
◆俳句大学 〔Haiku Column〕のHAIKUから選句・選評した句を掲載しています。また、「俳句界」2019年1月号から毎月連載しています。
※ 2021年の『俳句界』10月号から、優秀な作品が揃って来ましたので、1ページ増えて、3ページに渡って掲載しました。
◆R 2・12月号から作者の国名を入れています。人種、国籍を問わず投句を受け入れていることから、その「人道主義的」スタンスが広く支持されています。
◆ 向瀬美音氏は日本語訳の改善に着手している。五七五の17音の和訳は、HAIKUをただ端に日本の俳句の五七五の17音にしただけではなく、原句のHAIKUの真価を再現するものであり、国際俳句の定型化に一歩近づくための有効な手立てであることを強調しておきたい。
◆例えば、ある日本の国際俳句大会で「飢えた難民の/前に口元に差し出す/マイクロフォン一本」のような三行書きにしただけで散文的な国際俳句が大会大賞、或いはある国際俳句協会のコンクールで「古い振り子時計―/蜘蛛の巣だらけになっている/祖父のおとぎ話」のような切れがあっても三段切れで冗漫な国際俳句が特選を受賞しているように、三行書きの国際俳句が標準になっていることに危惧を覚えて、俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。
◆2017年7月にフランス語圏、イタリア語圏、英語圏の55人が参加する機関紙「HAIKU」を発行しました。12月20日発行の2号では91人が参加しました。また、5月31日発行の3号では96人が参加し、320ページを数えます。さらに、12月26日発行の4号では112人が参加し、500ページを数えます。そして5号では150人が参加して、550ページを越えて、8月1日に出版しました。そして、6号を2020年12月に出版しました。また、2020年3月1日には「国際歳時記」の第1段として【春】を出しました。「HAIKU」6号と「歳時記」は原句の内容を損なうことなく五七五に訳出しています。
◆総合俳句雑誌「俳句界」2118年12月号(文學の森)の特集に「〔Haiku Column〕の取り組み」について」が3頁に渡って書いています。
◆「華文俳句」に於いては、華文二行俳句コンテストを行い、華文圏に広がりを見せて、遂に、2018年11月1日にニ行俳句の合同句集『華文俳句選』が発行されました。
◆ 二行俳句の個人句集では、洪郁芬氏が『渺光乃律』(2019、10)を〔華文俳句叢書1〕として、郭至卿氏が『凝光初現』(2019、10)を〔華文俳句叢書2〕として、次々に刊行している。さらに、全季節を網羅した「華文俳句歳事記」が2020年11月には刊行されて、これで季重なりの問題が解消されるでしょう。
◆さらに、2020年1月からは月刊『俳句界』に「華文俳句」の秀句を連載している。
◆『俳句界』2020年3月号の特別レポートにおいて、熊本大学で行われたラウンドテーブル「華文俳句の可能性」の報告が8頁に渡って掲載されました。
◆どうぞご理解ご支援をお願いします。

The June issue of 「HAIKUKAI俳句界」!
〜Haiku Colum of Haiku University [Monthly best Haikus]〜
◆the June issue of HAIKUKAI俳句界 has just been published. 
◆It contains the best haikus of the month selected by M. Nagata. 
◆according to the plan, we will continue to publish 2 lines haikus with kire and toriawase.

Juin aout de 「HAIKUKAI俳句界」!
〜Haikus du mois de Haiku Colum de Haiku Universite〜
◆L Juin de aout de HAIKUKAI俳句界 vient d'etre publie.
◆il contient les meilleurs haikus du mois selectionnes par M. Nagata. 
◆Selon ce plan nous allons continuer a publier des haikus en deux lignes avec kire et toriawase.

Haiku Column(俳句大学)今月の秀句(「俳句界」R4.6月号)

永田満徳選評・向瀬美音選訳(仏・伊)・中野千秋訳(英)

【今月の秀句(monthly excellent Haikus)】  
(Facebook「Haiku Column」より)

Olfa Kchouk Bouhadida(Tunisia)

premier papillon épanoui ~
il perd ses ailes à Marioupol
〔Commented by Mitsunori Nagata〕
Mariupolis is an important place for Russia as it is located between the annexed Crimean Peninsula and the Russian mainland. Since the Russian invasion, the city has suffered numerous civilian casualties and has become the scene of the most fierce battle. The poem is heartbreaking in that it depicts the intensity of the battle, in which even the first "wings" of the newborn "first butterflies" are lost, by entrusting it to a small animal.

オルファ クチュク ブハディダ(チュニジア)

初蝶やマリウポリで翅失ひ 
〔永田満徳評〕
マリウポリは、ロシアにとって、併合したクリミア半島とロシア本土とを結ぶ位置にあり、重要な場所であることから、ロシア軍の侵攻以来、市民に多数の犠牲者が出ていて、最大の激戦地となっている。生まれたばかりの「初蝶」の初々しい「翅」さえも失せてしまう戦闘の激しさを小動物に託して詠んでいるところが心を打つ。


Françoise Deniaud-Lelièvre(France)

sous la neige drapée en jaune et bleu
une femme en pleurs
〔Commentaire de Mitsunori Nagata〕
Le drapeau ukrainien présente un ciel bleu dans la moitié supérieure et du blé dans la moitié inférieure, jaune, les couleurs symboliques du grenier à blé de l'Europe. L'armée russe l'a démoli et l'a battu dans les rues enneigées en signe d'agression. La "Nonna qui pleure" n'est pas seulement un drapeau, mais aussi une protestation sympathique contre la violation des droits humains des groupes vulnérables, tels que les femmes et les enfants.

フランソワーズ ドウニオ ルリエーブル(フランス)

雪の下に黄と青の旗泣くをんな 
〔永田満徳評〕
ウクライナ国旗は上半分の青が青空、下半分の黄色で、ヨーロッパの穀倉地帯のシンボルカラーである。ロシア軍は侵略の証として、雪の路上に破り、打ち捨てている。「泣くをんな」には、国旗だけではなく、女性や子どもといった、弱い立場の人たちの人権を蹂躙する行為に対する抗議が込められていて、共感できる。


Angela Giordano (Italy)

the sky illuminated by rockets
spring frost
il cielo illuminato dai razzi
brina primaverile
〔Commented by Mitsunori Nagata〕
Incendiary rockets are weapons that detonate and spread in mid-air and fall as numerous fireballs. They must have shone brightly only on a frosty spring night when the air was clear. There is nothing more terrifying than the light from the merciless and unreasonable Russian bombs, and it is good that the author only describes facts and leaves the heart-chilling scene to the reader's imagination.

アンジェラ ジオルダーノ(イタリア)

春の霜ロケット弾の照らす空  
〔永田満徳評〕
焼夷ロケット弾は空中で起爆し拡散して、多数の火の玉となって落ちて来る兵器。空気が澄み渡った春の霜夜だけに、さぞかし鮮やかな輝きを放っていたことであろう。無慈悲で、理不尽なロシア軍の爆弾の光ほど恐ろしいものはなく、心も凍る情景を事実だけを述べて、読み手の想像に委ねているところがいい。

【今月の季語(Kigo of this month】        
(Facebook「Haiku Column」より)

【春暁  しゅんぎょう shungyou  / spring dawn / lever du jour de printemps 】
Jean-Luc Favre(Switzerland)

rai de lumière sur son visage endormi
aube printanière
ジャン-リュック ファーブル(スイス )

春暁や眠る顔には陽の光 美音

Zaya youkhanna (Australia)

spring dawn
with tea a dish of marmalade
ザヤ ユッカナ(オーストラリア)

春暁やお茶に添へたるママレード  千秋

【 三月 さんがつ sanngatu / march / Mars 】 
Gabriella De Masi(Italy)

vento di marzo-
un uomo insegue il suo cappello
vent de mars-
un homme poursuit son chapeau
ガブリエラ デマシ(イタリア)

三月の風男は帽子追ひかける  

Rachida Jerbi(Tunisia)

Le ciel tisse un lien étroit avec la mer ~
pluie fine de Mars
ラチダ ジェルビ(チュニジア)

空は海と細き絆を三月の霧雨 
 
【春昼 しゅんちゅう shunnchu / spring afternoon / après midi de printemps 】
タンポポ亜仁寿(Indonesia)

spring afternoon -
cat's ears can move while sleeping
タンポポ亜仁寿(インドネシア)

春昼や寝ていても動く猫の耳 

Christina Chin(Malysia)

hop skip jump
hopscotch on a spring afternoon
クリスティーナ チン(マレーシア)

跳んで跳ね石けり遊び春の昼 

【春の川 はるのかわ harunokawa / spring river / rivière de printemps】
Zamzami Ismail(Indonesia)

spring river
there is no ripple that do not reflect light
ザンザミ イスマイル(インドネシア)

どの波も輝き持ちて春の川  

Kamel Meslem(Algeria)

Rivière au printemps
le murmure des eaux berce mon émoi
カメル メスレム(アルジェリア)

春の川感動揺らすざわめきよ 

【女性の日  じょせいのひ joseinohi /women's day / Journée de la femme 】

Mirela Brailean(Romania)

Women's Day -
a global day of prayer for men-at-arms
ミレラ ブライレーン(ルーマニア)

女性の日兵士のための祈りの日  千秋

Feten Fourti(Tunisia)

l histoire d une héroïne inachevée
8mars
フテン フルティ(チュニジア)

女性の日歴史に未完の女性の名 

【春セーター はるせーたー  haruse-ta- / spring sweater / chandail de printemps 】

spring sweater
the softness and smoothness of my knitting
Rina Darsa(Indonesia)
リナ ダルサ(インドネシア)

春セーターふはり滑らか我が手編み  

Ana Irina(Romania)

spring sweater
the pattern made by shadows
アナ イリナ(ルーマニア)

その柄は影によるもの春セーター  

【木蓮  もくれん mokuren / magnolia / magnolia 】
Agnès Giallongo(Italy)

La magnolia -
Aiuta la mia solitudine con la sua bellezza
Magnolia -
Brillant plus que le soleil avec ses couleurs
アグネス ジアロンゴ(イタリア)

木蓮や美しき色孤独を癒し 

Isabelle Carvalho Teles(France)

Fleurs de magnolia
le long de ton cou une goutte de parfum
イザベル カルバロ テールス(フランス)

木蓮や首筋に一滴の香を 美音

【チューリップ ちゅーりっぷ chu-rippu / tulip / tulipe 】
Nuky Kristijno(Indonesia)

her jelously shows on her face
yellow tulips

ナッキー クリスティジーノ

黄のチューリップ顔に出す妬心かな  

Choupie Moysan(France)

tulipes de printemps
les premières fleurs sur les enterrés
シュピー モイサン(フランス)

埋葬の上に最初のチューリップ

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平和願いしHAIKU 黛さん企画、世界から詠み人

2022年05月29日 22時55分49秒 | 国際俳句

中日新聞(2022年5月29日 05時05分 )

〜 平和願いしHAIKU 黛さん企画、世界から詠み人 〜

◆ 「Facebook「Haiku Column」」では、月刊「俳句界」5月号・6月号において、いち早く〈ウクライナ特集〉をしているが、「中日新聞」も黛まどか氏企画による「戦争を題材にした俳句」を掲載した。
◆平和への願いとともに、「伝達性」と「記録性」、「慰撫の力」がある俳句の国際化の絶好の機会であるので、マスコミから発信されることはいいことである。

◆ なお、HAIKUという点では、二行Haikuの「Haiku Column」と比べて、三行書きの欠点である、冗漫なところはあるが、切れ、あるいは取り合せがあり、何よりもKigoのあるhaikuが常識になっていることが分かり、有益な内容になっている。

記事(抜粋)
 戦争を題材にした俳句は、ロシアの軍事侵攻後の3月19日にインターネットで「Haiku for Peace」と銘打つ企画を始め、国内外から募集。今月27日までに集まった475句は「戦争は絶対にいけない」(黛さん)との思いに呼応し、35カ国の10言語にわたる。
 黛さんは短詩型文学の俳句について「全てを言い切らず余白にあるものへの想像力をかきたてる。世界の人々が、遠い戦争の悲惨を自分のこととして受け止めるよすがになり得る」と強調。平和を願い、世界の人々が参加するオンライン句会を開きたい考えだ。
(林啓太)

https://www.chunichi.co.jp/amp/article/473899

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月刊『俳句界』2022年6月号発行!

2022年05月26日 00時21分56秒 | 月刊誌「俳句界」

〜好評発売中〜

●特集「三世代俳人 〜受け継がれるもの」
○三世代で俳句を詠むこと(50P〜53P)
三世代合同句集『俳壇坂本の会』坂本真二
※ 『俳壇坂本の会』の序文は永田満徳

【永田満徳関連記事】
●「今月の秀句・今月の季語」54P〜56P
永田満徳選評・向瀬美音選訳(仏語、伊語)・中野千秋訳(英語)

●「華文俳句」57P
永田満徳選評・洪郁芬選訳

●「文學の森」ZOOM句会(153P〜157P)
・基礎から学ぶZOOM俳句教室(講師:永田満徳)第三回
・仙田洋子ZOOM句会第三回
・仙田洋子ZOOM句会第四回
・北海道「文學の森」ZOOM句会第四回
・関東「文學の森」ZOOM句会第三回
・関西「文學の森」ZOOM句会第三回
・九州「文學の森」ZOOM句会第七回(担当:永田満徳)
・全国「文學の森」ZOOM句会第三回(講師:木暮陶句郎)

●7月の「文學の森」ZOOM句会ご案内(158P〜159P)
・月刊「俳句界」文學の森では、「ネット時代の俳句の可能性を探る」取組みとして、「ZOOM句会」を開催しています。

※お読み頂ければ幸いです。
毎月25日発売/A5判/定価1,000円

画像:「俳句界」6月号表紙

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「軟鉄」の句集『肥後の城』  ~『肥後の城』を読んで~

2022年05月14日 20時47分51秒 | 第二句集『肥後の城』

「軟鉄」の句集『肥後の城』

 ~『肥後の城』を読んで~

                          牛村 蘇山

 待ちに待った永田満徳さんの第二句集が出た。第一句集『寒祭』の上梓(平成二十四年)から十年。このたび『寒祭』を読み返し、『肥後の城』の世界に浸った。十年の歳月は満徳句をさらに磨き上げ、豊饒な世界を築かせていった。十七音の響きとリズム。『寒祭』を硬度の高い鋼(はがね)に例えるなら『肥後の城』は同じ鋼でも柔軟性に富んだしなやかな「軟鉄」といえようか。

 第二句集の出版計画が輪郭を整え始めたころ、思いも寄らぬ事態が起きた。肥後の大地を襲った平成二十八年四月の大地震だった。そして令和二年七月に球磨地域で発生した大水害。人吉市は満徳さんの生れ故郷だった。

 句集の顔を眺めよう。淡いブルーの「寒祭」の表紙。これに対し『肥後の城』は黒。熊本城はすっくと立っているが闇夜に孤立しているように見える。表紙からは大地震と水災害への哀悼と鎮魂の鐘が低く長く鳴り響いている。

        ☆

 大地震の年、私が東京から熊本を訪ねたのは地震からちょうど半年後の十月中旬であった。熊本空港に迎えに来た友人と空港からそのまま益城町へ直行した。地震から半年たっても町の姿は痛々しく目を覆うばかりの有様。かつてゴルフ帰りなどに立ち寄った静かな町並みは跡形もなく消え去っていた。

  骨といふ骨の響くや朱夏の地震

この上五・中七の措辞が地震の凄まじさをなによりも的確に詠み切っている。俳句の記録性という観点からも脳裏から離れない一句である。平成七年一月の阪神・淡路大震災の時は発生から一週間後に神戸、平成二十三年三月の東日本大震災の時は一か月後に福島のそれぞれの地を訪れた。その時の変わり果てた地域の光景と益城町の姿が重なった。

 阪神・淡路大震災を先人はこう詠んだ。印象深い句である。

  寒暁や生きてゐし声身を出づる 桂 信子

  国一つたたきつぶして寒のなゐ 安東次男

 また、東日本大震災ではかく詠まれた。

  四肢へ地震ただ轟轟と轟轟と 高野ムツオ

  地震の闇百足となりて歩むべし  〃

 満徳句はこれら先人たちの句に対峙するとき作句精神において、語彙の選抜において一歩も遅れをとらない出来栄えを見せる。 

       ☆

 益城町の中心にできた「復興市場」に足を運んだ。市場の売り場に立つ女性たちと言葉を交わす機会があった。驚くほどよく通る声で話され、表情はきりりとしまり、笑顔も溢れとても頼もしく映った。

  「負けんばい」の貼紙ふえて夏近し

 市場の女性たちの立ち振る舞いはみな「負けんばい」だった。市場の建物全体から「負けんばい」が漲っていた。

 益城町から熊本市内へ。すぐに熊本城に向かった。想像を絶する壊れようだった。胸を締め付けられる惨状だった。熊本在勤時(平成八年~十一年)は毎日見上げた天守閣。美しい曲線を描く石垣や塀。哀しい崩れ方だった。

  曲りても曲がりても花肥後の城

  石垣のむかう石垣花の城

 花に囲まれ美しく気品溢れる熊本城をこう詠まれたが、わずか数日の大地震が城郭を激変させた。

  石垣の崩れなだるる暑さかな

 変わり果てたわが姿に驚き、炎暑に耐える気構えさえ失った石垣の心を詠んでいる。

  あれこれと震度を語る芒種かな

  体感で当つる震度や夜半の月

凄まじく揺れ動いた大地。震度に過敏になってしまった肥後の人々の姿がここにある。

        ☆

 記録性にも富んだ満徳句。故郷人吉の球磨川氾濫の惨状をこうとらえている。

  一夜にて全市水没梅雨激し

 むごかぞと兄の一言梅雨出水

  梅雨出水避難の床にぬひぐるみ

  出水川高さ誇りし橋流る

 熊本在勤時代。鮎釣りによく出かけた清流球磨川。水量に恵まれ、水は澄んで冷たい。延々と続く両岸の緑。その背後の山々から吹き抜けて来る緑の風。この宝石のような球磨川が豪雨で一転して猛り狂い、護岸を切り崩して氾濫。全市を水没させた。「むごかぞ」の兄上の言葉。この氾濫を「むごかぞ」の一言が人吉市の悲傷を象徴している。流された橋は天狗橋だろうか。それとも西瀬橋だろうか。

 当稿執筆している令和四年五月の人吉市。水害からの復旧作業をあらかた終えたのだろうか。気がかりである。

 鴨長明「方丈記」を読み返した。「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」この有名な序章が終わると、天変地異に見舞われた京の都の惨状描写にうつる。大風で倒壊した多くの塔頭や民家。餓死・疫病。鴨川の河原や路地に打ち捨てられた夥しい遺体。長明の筆は見聞し、情報を集めては記録してゆく。歌人であり随筆家でありドキュメンタリー作家だったのである。

 満徳さんの『肥後の城』は熊本地震と人吉水害をコアに据えた句集である。当初の出版計画には予想だにしなかったテーマの出現だったといえよう。熊本の地でこのように真っ向から熊本地震と人吉水害を詠んで編んだ個人句集はまだ無いと仄聞している。『方丈記』とつながる水脈を強く感じる。

 今後「肥後の城」を追いかけるように熊本地震・人吉水害を詠みこんだ句集が登場するにちがいない。そうだとしたら熊本文学史にとって『肥後の城』はその嚆矢となる貴重な句集の登壇といえよう。

       ☆

 私は第一句集『寒祭』の栞文を書かせていただいた。その中で満徳さんに「熊本の自然を、阿蘇をとことん詠んで」と頼んだ。

 約束とおり阿蘇の秀句がふんだんに顔を見せる。句集の表紙にある一句。

  阿蘇越ゆる春満月を迎へけり

 春の宵。阿蘇五岳が悠然と座して、広い裾野の人家は水を打ったように雍容として満月の出を待っている。愈々月の出。阿蘇の春夜は肌寒いが美しい満月の感動がかき消してくれる。漱石の小説か漢詩に出くわしたような別乾坤の空間である。満徳句の範疇を超えて阿蘇句の秀吟といえよう。感動の一句である。

 私も熊本生活を終えて東京に帰還してからも熊本を訪ね続けている。阿蘇はずいぶん訪ねた。そのたびに勇壮で人懐っこい阿蘇の表情が好きになっていった。裾野の大カルデラ内には五岳を囲んで阿蘇市、高森町、南阿蘇村がある。鉄道が走り、温泉が湧き、観光スポットが随所にある。湧き水がおいしく、酒も旨い。

  大阿蘇の地霊鎮める泉かな

  大阿蘇は神のふところ青田波

 阿蘇の夏である。地霊・神のふところ。夏雲を従えて神々しく裾野を広げる姿がある。

  コスモスや阿蘇からの風吹くばかり

  阿蘇五岳まず野分雲懸かりけり

 秋の阿蘇はコスモスの集団がここかしこに揺れ動く。夏の喧騒のひと時が去り、少し寂しげな阿蘇の顔。阿蘇の野分雲は残念ながらまだ拝見したことがないがさぞや独特の天地の趣を見せるにちがいない。

  食前酒かつ月見酒阿蘇の宿

 阿蘇の月見。このあたりの世界となると東京から孫悟空の觔斗雲(きんとうん)に乗って月見の宴に駆け付けたくなる。

やがて冬。

  冬麗のどこから見ても阿蘇五岳

  阿蘇見ゆる丘まで歩く師走かな

  寒日和窓てふ窓に阿蘇五岳

  ひとしきり煙りて阿蘇の山眠る 

 満徳さんの師・首藤基澄先生が愛された阿蘇。その阿蘇句で編まれた句集『阿蘇百韻』。先生の句集『己身』『火芯』『魄飛雨(はこびあめ)』からの抄出句集である。

  きれぎれに思惟の飛ぶごと野火の煤(『己身』)

  阿蘇谷の田毎の煙半夏生     ( 〃 )

  転身の夢遂げて白独活の花    (『火芯』)

  山雨に根子岳奪られ山女焼く   ( 〃 )

  肥の国の山の滴り辿り行く    (『魄飛雨』)

  漱石の笑ふ阿蘇の温泉百日紅    ( 〃  )

 魂の翼を阿蘇の天地自在に滑空させた先生の百韻。満徳阿蘇句は首藤先生の百韻エキスを存分に滋養として詠んだ。

   ☆

 さて。

熊本地震・人吉水害・阿蘇へと筆を進めてきたが、満徳さんのユーモア句を見逃すわけにはいかない。

  いがぐりの落ちてやんちやに散らばりぬ

  助手席の西瓜ごろんごろんかな

  かたつむりなにがなんでもゆくつもり

  さみだれの音だりだりとわが書斎

  荒梅雨や呵呵大笑の喉仏

  あぶれ蚊の寄る弁慶の泣きどころ

 『肥後の城』には随所にユーモア句がちりばめられている。この句集の懐の奥深さを感じる。

立秋やどの神となく手を合はす

 八百万の神々。細かなことは脇に置いといてまず神様に手を合わす。なんという日本人論句だろうか。ユーモア句であり、深いため息をもたらす一句である。

  日本てふ平たきものよ餅を食ぶ

『寒祭』にある一句である。この列島に肩を寄せ合って暮らす島国人を詠んだ秀句であろう。

 まだまだ触れたい感動句はたくさんあるがこのあたりで擱筆としたい。

 満徳さんの分厚くなってゆく俳人としての力量。さらなるご健吟と後進指導を願ってやまない。  

 

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