My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

19世紀の市場経済-Old Sturbridge Village(1)

2008-11-15 13:18:10 | ●アメリカ東海岸 紀行

翌日はスターブリッジへ。
19世紀-とくに1820-60年当時のアメリカを再現した、野外博物館。
アメリカが独立してしばらくたって、南北戦争とかが始まる前の時代がモチーフ。映画などのロケ地としても使われているらしい。
ニューイングランドのいろんなところから、歴史的な建造物が移築されている。

スタッフがその時代の人になりきってるプリマス・プランテーションにはかなわないけど、いろいろ見所があって、とっても楽しかった。

単に楽しい、というより、MBAに通ってる学生として発見がいくつもあった。
ひとつめは、実は19世紀は、現代よりよっぽど市場経済が人々の身近にあった、ということだ。

今の世の中で、石油価格以外で、実際の生活に直接響いてくる市場価格ってあんまり無いと思う。
そりゃ、小麦とか、鉄の価格とか、大事といえば大事だけど、庶民には関係ないよね。
だから、今日の鉄の価格なんて普通知らないし、日経新聞のコモディティの欄なんて、そういう仕事してる人以外は読まないでしょ。
そんなの知らなくても生活できるのが21世紀の世の中なのだ。

ところが19世紀のマサチューセッツは、日々の食料品の値段から、鍛冶屋で換金してもらうくず鉄の値段まで、人々が必要な価格がちゃんと市場の中で決まっていた。
市場が、人々の生活に密接につながっていた。

だから、普通の人々にとって、店の人にだまされないために、そして少しでも良い生活をするために、市場の取引価格を把握しておくのがとても大事だった。

これが、日々の必需品の値動きを知らせる新聞。
価格は、需要と供給の法則にしたがって、毎日変わる。
人々は日々この新聞をみて、糸や布を買ったり、作った野菜やお酒を売ったり、集めたくず鉄を売ったりしていたのだ。

このお店は、普通の人たちが作った商品(糸とか服とか、樽とか…)をまとめて取り扱う商店。
自分が野菜や布を作ってきたなら、新聞に出ているBid price(売値)で売ることが出来るし、タバコや服が必要ならAsked price(買値)で買うことが出来る。
商店は売値と買値の差額を儲ける仕組みだ。

債権など金融の世界では、いまでもBid priceとかAsked priceとか使うと思うけど(ていうかファイナンスの授業でやったけど)、こういう普通の必需品の取引から始まった言葉なのだ、と思うと不思議だ。
それに、ミクロ経済で、需要曲線と供給曲線から、価格平衡を求めるなんて問題も死ぬほどやったけど、19世紀の世の中なら、普通のこととして自然に当てはまったんだろうな、と納得できる。現代だと、それが当てはまる事例を探すのも一苦労なのに。

こちらは糸や布、くつなどの製品。
商店には、ほかにも酢、塩、スパイスなどの調味料やタバコや酒などの嗜好品まで、ありとあらゆるものが、そろっている。

鍛冶屋に行く。「地球の歩き方」によると、この鍛冶屋は観光客に最も人気らしい。
いろんな家事に必要な道具がそろっていて、その場で実演してくれるので、確かに面白い。

ここでも面白かったのは、やっぱりこの鍛冶屋が市場と密接につながっていたという話。
19世紀の前半でも、すでにちゃんと市場経済というものがあったのだ。

鍛冶屋は、新聞にも載っている市場価格で、鉄や鋼鉄を購入する。
イギリスの商人から買うこともあるし、アメリカ国内で鉄材を作り始めた生産者から購入することもあるとうが、購入価格は同じで、市場価格でちゃんとひとつに決まっているのだ。だから、相手が知らないことを利用して大もうけなどは出来ない。そう意味で効率的になってるのだ。

プランテーションのピルグリムが、毛皮の価格を知らないイギリス人に言い値で売って大もうけ出来たのとはえらい違い。
19世紀には、ちゃんとひとつの価格が決まる市場があり、それだけ効率化されていたということだ。

鍛冶屋では、普通のお客がお金での支払いの代わりに、くず鉄を持ってきて支払うことが可能だった。
そのときにくず鉄を買い取る値段は、新聞に載っている市場価格で決まるという。
うーん。ちゃんと生活に結びついてるんだなあ…

ちなみに、鍛冶屋のおじさんを演じていたのは、ニューイングランドのどこかの会社で働いていた、元エンジニアだという。エンジニアの彼は日本が好きで、その勤勉さに共感しているらしい。彼によると、ニューイングランドの白人は日本人のように勤勉なところがあるので、とても良い製品を作ることが出来るが、ノースカロライナの人間はダメらしい。
アメリカ国内で流通している偏見がどんなものか分かって、ちょっと面白かった。

市場経済ついでに。
当時の銀行を再現した建物もあった。

19世紀当時は、今みたいに中央銀行が紙幣を発行するのではなく、各銀行の銀行券として紙幣が発行されていた。
ということで、当時のいろんな銀行券のコピーが展示されていた。

こんないろんな種類の紙幣が流通して、市場は混乱しなかったんだろうか?
もちろん現代のアメリカでは、日本の紙幣と同じく、中央銀行 Federal Reserve Bankの銀行券として、ドル札が発行されてます。

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1 Comments

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Stock market (Holly)
2011-02-12 14:48:14
いつも楽しく拝見させていただいております。現代でも株式市場は、BidとAskがせめぎ合う毎日ですよ。おおよそ、市場主義経済においては、価格は同じプロセスを経て決まりますね。
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