My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

今、米国MBAに行く意味はどれだけあるのか

2010-04-20 17:00:17 | 7. その他ビジネス・社会

論文執筆に追い込まれていて、最近全くブログが書けないけど、連休なので、今日は一本書いてみる。

4月に入り、どのビジネススクールもRound 2の合格者が決まりつつある。
ずっと長い間MBAのために準備を進めてきた方には喜びひとしおでしょう。
Waitの方も強力にプッシュし続けると、追加で受かることが多いようなので、お勧めします。

さて、MBAに向けて頑張って勉強している人の気を削いではいけないと、遠慮していた記事を。
ずばり、今更アメリカのMBAに行って、何のメリットがあるのか。
いや、どうしたらメリットがあるように出来るのか?

米国MBAに留学する価値、そもそもこの時代に米国に留学や仕事を求めて行くことの価値については、
いろんな方が、批判的な意見を書いている。

私に言わせれば「そんなの、留学する人がどうMBAという場を活用するかで違うでしょ」である。
もっと言うと、
「MBAに来て、旅行・ゴルフ三昧で、何とか学校の授業でやってることだけついていく、
という1990年代の一般的な留学生と同じことをするつもりなら、日本で2年間仕事していた方がずっと価値がある」
というところか。
MBA経験者で、今MBAに行くことを批判する人は、
きっと日本人留学生が自分と同じ生活をすることを暗黙の前提としているのだろう。

当時は、今よりも留学の壁が厚く、MBAに来れるような人たちはそれだけで凄いことだった。
(その上で、単なる留学以上のことをする優れた人たちもたくさんいたと思うが)
でも今は時代が違う。

MBAに2年間来るだけ、MBAを資格として取るだけで価値がある時代は、すでに終わった。
これは社外での市場価値だけでなく、社費で来る場合の社内の価値についてもいえる。

何故か?
考えれば当然なのだが、以下が大きな理由である。
1. 80-90年代までは、そもそも「米国生活経験者」が少なかった。(ウルトラクイズの時代だ)
従ってMBAに行って「米国を知ってる」だけで、英語が大して上達してなくても、例えば社内で海外部署に送られる理由になった。
今は、一流企業は帰国子女を大量に採用しているし、語学・交換留学などもずっと簡単で留学経験者も多い。
「MBAで2年間海外住んでました」が全くメリットにならない

2. 80-90年代までは「MBA」自体が資格としても、学んだ内容としても価値があった。
しかし今はMBA保持者も増え、加えてコンサル出身者などMBA相当と思われる「資格」の持ち主が増え、
更にMBAでやるような内容を企業研修などで受けられる機会が増えてきた。
MBAで学べるような知識はコモディティ化し、「資格」としての価値も薄れているのだ。

3. その割には、米国MBAに行く経済コストが高すぎる。
日本がデフレ20年の間に、米国の物価が2倍近くになってる、というのもあるが、
トップ校の学費自体米国内でもインフレしているためである。
米国トップ校の年間学費は400万円程度、その他日本よりかかる生活コストが100万円程度。
従って、2年間の間、「日本で2年間もらえてたはずの給与所得+1000万円」のコストがかかるのだ。

仮に日本で600万の給与をもらっていたとしたら、そのコストは2200万円になるわけだ。
MBAに「ただ」行くだけで得られるものが、2200万円の価値があるか?

社費の人はこういうコストは心配しなくて良いだろうが、
代わりに2年間実務を離れて「2年遅れる」ことのコストを考えると良い。
2年間、本当に努力して英語で仕事する力をモノにした人は、海外の前線に出て活躍できるだろう。
進歩していない人は、一瞬フロントに送られても、パフォームせずに国内の部署に引き戻されることになるだろう。
仮にパフォームしていないのに、引き戻されもしない会社だと、その会社自体が危ない。

(もっとも企業派遣の場合の、MBA後の配属先は、それ以外の要因などで決まることも多いので、
仮に英語力などの力が身についていても、国内に配属されることは多々あるでしょうが、
後々の自分の力につながっていくはず。)

それでも私は、やる気がある人は、MBAに来ることを強くオススメする
それは、新しいことにチャレンジし、努力をし続けた場合は、日本にいるよりずっと自分の価値を高め、
可能性を広げることが出来るからだ。

一言で言うと、下記のチャートに集約される。

本当に今までずっと日本で過ごしていた人が、
ビジネスで英語で交渉・ネイティブのみの環境で働いてパフォームする、なども出来るようになるには、
日本にいただけでは、とても鍛えられないのは確かなのだ。
2年間、授業、チーム活動、インターンなどで、英語ネイティブの人に負けないつもりで駆けぬけ続け、
得られる英語力を、日本ではどんなにお金を払っても得られないだろう。
(追記:コメントにも書きましたが、単なる英語の語学力ではなく、相手の文化や動き方を理解し、
その文化に最も適応し、効果的な形でコミュニケーションしたり動いたりする能力全般です)

また、留学に行くとやはり人間関係で苦労が多いから、本当にその苦労に向き合って、克服することで、人間的に学ぶことも多い。
これも語学の問題がない日本では、「なんとかうまくごまかせる」から、なかなか成長しない部分だ。
リーダーシップのスキルも同様。
日本の職場では中々実践する機会もなく、成長させるのが難しいスキルの一つだ。
私みたいに、本などを書くつもりで一つの分野を深く掘り下げる、研究する、というのもあるだろう。

それが上に書いたように「2200万円(人によってはもっと)」の価値になるか?
というと、人によってはYesなのだ。
(少なくとも私は自分でそうだと言える自信はある。それを意識して、そのつもりでやってきた。)

でもこういうことも、「日本人だけのコミュニティ」に籠り、自分のハードルも上げず卒業するだけなら、
2年間逃げ続け、ただMBAの学位をとることは可能だ。
しかしそれだったら、日本にいた方がよほどいいだろう、と思う。お金と時間の無駄だ。
日本にいても、勉強手段があり、情報が流通し、海外の擬似経験も出来るようになってる今、
その程度なら、別に日本にいて、仕事を続けることで、自分の価値を高めることは可能だからだ。

これからMBAに留学しよう、と思う人は、心して置いた方がいいと思う。
「MBAに来て、プログラムを全うすれば価値がある」時代はもう終わったのだ。
MBAのリソースをフルに活用し、常に自分を追い込めば、日本にいる数倍の成長が可能だろうが、
それをしないなら、全く価値がない。

では、具体的に、どのようにそのチャレンジ・努力をしていけばいいか、というのを次のエントリで書こうと思う。

(追記:ちなみに私自身は、ブレークイーブンの点から右に約1センチくらいのところにいる、と思っている。
 Bスクールには、もっとリスクとって色んなことやってるひともたくさんいる。
 「上がいる」ことをまじかに見て、理解でき、自分の適性について考えられた効果は大きい。)

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why you should study MBA (Erika K.)
2010-04-20 17:58:36
Sorry for the English entry - would have written in Japanese but you would respond anyhow in English realizing I am a foreigner.


Give you though three reasons:


1. Networking, networking, networking
If you fail to talk to, meet, befriend, work with, as many people as possible - you wasted your chance - not only money and time.


2. Indoctrination in the higher society
Closely linked to the previous one

3. I guess contacts with people with different working culture and work ethics might be of a great value for the quite rigid, traditional, approach of Japanese working with foreigners.


I think of languages being English, Japanese or Vietnamese as a tool, business English is useless if the person does not realize why he/she needs it.
Unknown (シゲ)
2010-04-20 21:49:05
細かい突っ込みでスイマセン…
「2年間日本にいた場合」の曲線が極値を持つのに違和感があります.「チャレンジの度合いと努力」に関してはどちらも単調増加ではないでしょうか?
ブレークイーブン前は(「2年間米国MBAに留学した場合」-「2年間日本にいた場合」)が負で,ブレークイーブン後は正に増大するという点に関してはよく理解できます.
ありがとうございます (kentosho)
2010-04-20 23:52:45
何故、今MBAなのかという疑問について真摯に考え、表現して下さってありがとうございます。MBAはビジネスの世界のアカデミズムでありサイエンスです。おっしゃる通りそういう所では何をモノにできるのかは人によるのです。

失敗に学ばないといけないという趣旨のコメントをしたことがありますが、アカデミズムであるならば、そういう疑問を持つ人がそういう実験をすればよいことなのです。

何事もサイエンスすることに意義はあると思います。MBAに意義があるか?という発言について悪意や蔑視のある発言と取られてしまうとやや心外なのですが、本来アカデミズムはそういう問いに答えるのも使命の一つであると考えております。

分野は違えど応援しておりますので、頑張ってください。
英語を学ぶとはどういうことか。 (Lilac)
2010-04-21 00:22:06
@Erika.K-san
I think spending 6 digits money only for networking does not make sense for most Japanese. But it does if you want to live and be successful in the US after your study.
Networking IS a tool as well as language.

Agree very much with your point 3.
I don't know how you understand my Japanese blog posting but when people say "learning how to communicate in English in business occasion is important" in Japanese, the point includes your point no.3

English is a very self-explanatory language, but Japanese is a high-context language and requires people to read its implications within Japanese cultural context.
The biggest obstacle for Japanese people to communicate in English is changing their Japanese communication style to that of English; many Japanese tend to expect people to understand without explaining logically and articulating points clearly.
English speakers also read between lines, but implications from same sentences are different from Japanese because culture and ethics are different.
(Those are also different by industry, by gender, and by country in the same English speaking countries)
Those points are also what you can learn and practice in b-school.

@シゲさん
そう思います?多分人によって違うかな、ともおもいますが。
日本は本当に極限まで色んなチャレンジをすると、例えば起業するとかして失敗したりすると、(或いは「出る杭を打たれて)何故か価値が下がってしまうことが多いと思ってこう書きました。
もちろん人によって違うのですが、期待値としては下がるのではないかと。

一方で、私はそこまでの極みに達しませんでしたが、
米国だとビジネススクール在学中に起業して、失敗した場合でも、むしろ在学中にそういうチャレンジをしたことが高く評価されて、一般的にはプラスになります。

@Kentoshoさん
そうですね、常に自分がやっていることが意味があるのか?を問いながら進むのは大切と私も思います。
はじめまして (yoshi)
2010-04-21 00:23:49
米国MBA留学中のyoshiと申します。以前からブログは拝見していましがた今回のエントリーはまさに僕が今考えていることと限りなく近いので思わずコメントさせて頂きました。僕にとってのこの1年間の価値とは何だったのか?と考えた時に思い浮かんだのは「今までの自分の住んでいた狭い世界の外ににある広い世界を知り、自分もその一員にふさわしい人材として成長しつつある」ことかなと思っています。そしてポイントは広い世界を知るため、そしてその世界の一員になるためにはその世界にいるだけではなく、積極的にその世界に関わっていかなくてはいけない、、、そういう意味でLiliacさんの記事に共感いたしました。この「世界」がなんなのかはまた別の議論ですね。書き続けると恐ろしく長くなってしまいそうなので、この辺で。論文等でお忙しいと思いますがブログの更新楽しみにしています。
留学生の減少 (yumemakura)
2010-04-21 07:47:54
このテーマは最近、日本で言われてることですね。日本からのアメリカへの留学生の減少ということでNHKで報道されたと思います。韓国からは逆にすごい増え方だそうで、そのための高校もあるそうで、そのために子供のために大きな投資をするそうです。

MBAはビジネス手法ですから、日本に帰って日本の企業体でどれほど生かせるかが問題になるでしょうね。そのためか、米国企業に就職される方とか、自分で起業する人が多いみたいです。

医者とかサイエンスの部門では日本に帰ってからも即戦力になるようです。
Unknown (Y子)
2010-04-21 08:23:13
最近の記事で、他国留学生と比べた日本人留学生の少数化が若者の草食化や海外への無関心で説明されてますよね。もちろん論旨は全く違いますが、あの記事とlilacさんの今回の記事が繋がります。
lilacさんが以前書かれていたように「チーム日本」としての留学生よりも「個人」としての留学生としての生き方が重要になっている、というのも私は日本人留学生の少数精鋭化として受け止めています。
私はまだ学部生ですが、将来絶対にマスターを取りたいと思っています。入るまでが大変な挑戦になりそうですが、そこで出会う人達や見る世界観が自分の人生にとても必要な物である気がするからです。
それも私の留学生活だけではなく、ブログなどを通して見る多くのカッコイイ留学生の先輩たちの生き様が影響しています。
要するにここまで書いた事を一言で纏めると、いつも面白い記事をありがとうございます、という事です。
数年後に私が院生として見る物は今とは違っているのでしょうがそれも変わり続けるアメリカの醍醐味だろうと、楽しみにしています。
それにしても近年、日本側と留学生側の意見の相違が激しいようでなんだかですね。
ブログ拝読しました (emi_star)
2010-04-22 00:32:41
初めまして。ツイッターからブログを拝読しました。興味ぶかい記事が多く、何度もクリックを押しました(^-^)

私は外資系企業に勤務しておりまして、海外の同僚、上司と会議や通常業務でコミュニケーションを取る機会が多いので、記事を共感しながら拝読しました。

同じ国際ビジネスに携わる者として、更なるご活躍を心より応援させて頂きます(^‐^)
Unknown (kuall)
2010-04-22 22:55:04
はじめまして。
現在外資系企業に勤め日常的に英語を業務で使用しています。
また帰国子女で海外経験もあるのですが、これでもMBAにいって完全に英語のみの環境でチャレンジするメリットはあるのでしょうか?
日系企業、あるいは外資でも英語中心でない場合は理解できるのですがそうでない場合はどうなんだろうと思い質問させて頂きました。
コメント有難うございます (Lilac)
2010-04-23 09:15:30
@Yoshiさん
いいですね。まずは世界が広いことを理解するのは大切ですよね。
それを自覚したら、その世界で自分はどういうポジションでありたいのか思い描いて、研鑽する。
MBAで何を自分がしたいのか、はっきりと目標を持っているのは大切と思います。
Yoshiさんもあと一年強、素敵な日々を過ごしてください

@Yumemakuraさん
NHKでもそういう特集ありましたか。「ハーバードに日本人が一人」が波紋を呼んでるみたいですね。

MBAで学べることは、ビジネス上のこともですが、もっと人としての生き方とか、人間力みたいなものが大きかったなあ、と思います。
やはり全く違う文化で育った人たちと、一緒に協力したり、競争しながらやっていくわけですから。

@Y子さん
>そこで出会う人達や見る世界観が自分の人生にとても必要な物である気がする

全くそうだと思います。
学部生ということですが、可能な環境なら、出来るだけ早くに留学するのをオススメします。
世界を広げるのは出来るだけ若いうちの方がいいです。
頑張ってくださいね!

@emi_starさん
コメント有難うございます。これからも記事よろしくお願いしますね~。
5月中旬くらいから、更新頻度を高める予定です。

@Kuallさん
ここに書かれてる情報だけだと、MBAに行って価値あるかどうか、は判断できないですが、
そもそも、将来の自分はどういうものでありたいか、
それに比べて今の自分は何なのか。
そのギャップを埋めるのがMBA的手段なのか、他のものなのか、で判断するのが良いと思います。

例えば将来、国際的にビジネスやNGO/NPOなどの分野で活躍したいと思ってるか、起業したいと思ってるか、などによりますし。

現状も良く把握して、MBAとの差分を理解することをお勧めします。
外資で英語を使う環境っていいますが、文化的にもアングロサクソン環境で、それに違和感なくついていけるのか。
英語でも(日本語でもですが)経営だのファイナンスだのを語れるほどの実力が自分にあるのか、など。

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