My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

今、アメリカン航空と同じ不安な気持ちでJALを見守る

2009-10-26 15:47:03 | 7. その他ビジネス・社会

今、MITの名物経済学教授、Pindyck先生の教える「産業経済学」の予習をやっているところ。
明日は、昨年デルタ航空がノースウエスト航空を買収したケースをやるので、その準備でデルタのことを色々調べてた。

デルタは、昨年ノースウエストを買収してから、アメリカン航空を抜いて、世界最大の旅客数を誇る航空会社となった。
この買収で、特にデルタがそれまで持っていなかった、NY路線や、太平洋路線(主に成田路線)を手に入れることが出来た。
特に太平洋路線の強化を優先的に進めていて、ニューヨーク-成田線やアトランタ-成田線の運行を増やした。
何でそんなものが欲しいかというと、太平洋線はアメリカ国内線や大西洋線より価格競争が小さいので、オペレーションをちゃんとやれば儲かる余地が大きい、と踏んでるのだろう。

先月JALの経営危機がニュースになってから、提携先として最初に名乗りをあげたのもデルタ。
見てる方は、あれだけノースウエストの太平洋路線を手に入れて、まだ足りないのか?って感じなのだが、どうしても欲しいらしい。
特にノースウエストの買収では手に入らなかった、JALが持ってる、西海岸-成田線などの路線が欲しいのであろう。

これを受けて、太平洋路線をJALとコードシェアしてるアメリカン航空が負けじと名乗りを上げた。
JALとアメリカンは同じワンワールド仲間。
関係ないデルタなんかに取られたらたまったもんじゃない。
米国では、一番赤字を垂れ流してるにも関わらず、参戦。

一方のJALは、国の監視下に入ってしまい、デルタとアメリカンがどうこうできる余地がなくなってきた。
マスコミでは、「国際線はANAへ」なんて記事も流れた。
国内線と違って、政治家とのしがらみの少ない国際線は、手放すターゲットに一番なりやすい。

これを受けて、今日、デルタ航空がPR会社を雇って、デルタ-JAL提携のメリットのアピールを始めたらしい。
何てアメリカ的なことをするんだろう・・・日本人にはそんなの通じないだろうに。

ここでいま、一番あせってるのはアメリカン航空だろう。

「JALが国際線を手放す」なんてことになったら、かなりの確率でANAに行ってしまう。
そうしたら、今アメリカン航空がコードシェアしている太平洋線は、敵のユナイテッド航空がいる、スターアライアンスに行ってしまう。
万が一オークションになっても、JALの国際線全体を引き受ける体力はアメリカン航空にはない。
そうすると、やはり敵のデルタ航空に行ってしまう。

アメリカン航空としては、ぜひとも再生タスクフォースに頑張って守旧派と戦ってもらって年金削減や赤字国内線の削減、コスト減などで効果を挙げてもらい、JALが国際線を手放すなんてことが絶対に無いように、祈るしかないわけだ。

一方、JALのマイレージをたくさん持っていて、北米やヨーロッパに行くのにマイルを使っていた人たちも、アメリカンと同じ気持ちで見守ってることだろう。
JALが国際線を手放してしまったら、これだけ貯めたマイレージをどこで使えばよいのかと。
まあ、そんな人一部だろうし(多くの人はANAに移行してるだろう)、そんな金持ちはどうでもいいって話もあるが。

あ、でもね。
デルタかANAに太平洋線あげちゃったら、普通の人がアメリカ行くのも徐々に高くなると思うよ。
プレーヤーの数が減って、競争が和らぐからね。
まあ、それで困る人も一部かもしれないが・・。

少なくとも、アメリカに住んでる私は困るので、アメリカン航空と同じ不安な気持ちで、JALの再生の行く末を見守っているのでした。
そんな不純な気持ちでJALのまともな再生(年金と赤字国内線の削減、天下り仕入先の削減によるコスト減)を願うんでいいのか、とも思うけど。

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4 Comments

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JAL再生を願う (nak)
2009-10-26 17:52:21
nakも不純な動機でJALの再生を願っています。マイレージに加えて、株主優待目当てで3,000株持っているので(笑)。
ANAも3,000株持っていますが、なんとなくJALが好きで国内線でもできるだけJALを使っているnakです。
たぶん、幼少の頃の燦然と輝く「鶴のマークの航空バッグ」による刷り込みのせいに違いありません。あれ欲しかったな~。
再生タスクフォースとか政治家たちにシッチャカメッチャカにされないよう願うばかりです。
返信する
私は実はANAに憧れが・・・ (Lilac)
2009-10-27 01:24:31
>nakさま

nakさんはJAL派なのですね。
たまに鶴マークの古い飛行機が走ってるとちょっと興奮しますよね。
株は-株主優待の測定が9月末時点なので、今回は売り損ねた人がたくさんいると聞きました・・・

私は小さい頃、ANAの青い制服を着たきれいなスチュワーデスさんにあこがれていたので、実はANAが好きだったりします。
私にもスチュワーデスさんになりたい、と思っていた時期があったんです!
機内食も美味しいし。

でも、国際線を仕事で使う身になってから、ANAは便がなかったりとかして、だいぶJALを使うようになりました・・・
マイレージはANAもどちらもあるんですが、JALは「国際線は必ずアップグレードしてもらえる」人になってるので、それを失いたくないなーと。

再生して欲しい理由はそれだけじゃないですが、

・国内の赤字の線を切る
・官僚の天下り先から高いサービス・商品を買うのをやめる
・年金を大幅に削減する

などの「やるべきこと」は、国が債務負担する以上ちゃんとやってほしい。
それでも国際線を売らないと行けないなら仕方がないです・・
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日本にとって大事な話題ですね (TOKU)
2009-10-31 01:30:26
Lilacさま

成田で航空機関連に従事している TOKU です。

日本の2大航空会社と接する機会も多いこともあり、昨今のメディアでの航空業界の露出の多さは国民の良い刺激になってとても良いと思ってます。

成田の夜でお酒を飲みつつ、両社の航空会社の若手整備員の頑張ってる話や、空港勤務の元ガングロさんの「成田こうあるべき論、前田国交相許せない論」などを聞きながら、意識の高さに関心させられる機会が増えてます。

「デルタ航空のノースウエスト航空買収」のケースを扱っているなんて、(自分もビジネススクールに通ってたので、、)ケースで取り扱うネタの速さの驚きましたし、どんなレポートを提出されたのか非常に興味がありますし、
あり得ないですが、そのケースをメディアでも取り上げられたら良いのにな~と感じてます。

雑感ですみません。是非、お勉強頑張ってください!!
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MITでは最新のケースをやります (Lilac)
2009-10-31 22:41:53
>TOKUさま

応援有難うございます!

ビジネススクールのケーススタディと言えば、ハーバードのケースを使うのが常套手段と思いますが、古いのが難点なんですよね。
と言うわけで、MITの先生は、テクノロジーを相手にしてることもあり、よく自分で資料を集めて、最新のケースを自身で作られることが多いんですよ。

このデルタのノースウエストのケースもまさにそれ。
ハーバードのケースも使いますが、それだけでは最新情勢は把握できないので、必ずニュース記事とか、アナリストレポートなんかを使って授業します。
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