My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

肥満税導入@ニューヨーク州

2008-12-22 17:48:24 | 7. その他ビジネス・社会

先週のFinancial Timesの記事の話。
ニューヨーク州で"Obesity Tax"(肥満税)とか"Fat Taxと言われる税金の導入が検討されているらしい。
カロリーの高いソフトドリンクにだけ15%程度のの税金を課す、ということで論議を呼んでいる。
例えばDiet Cokeは免税されるが、普通のコーラは課税されて、2割程度値段が高くなってしまう。

相当議論になってるみたいで、この記事だけでなく、翌日の社説や意見欄でもこの話が扱われていた。

特に議論の焦点なのが、どこで課税の線引きをするのか、ということ。
さっきも書いたように、Diet CokeやPepsiは課税されないが、Diet飲料じゃないコーラは課税される。
一方で、牛乳やフルーツジュースはカロリーが高いにもかかわらず、免税されるらしい。
この辺の課税の線引きが不透明なのである。

そもそも、この税金がどれだけ意味のあるものか、ということも、当然議論の対象。
課税の根拠は、国民の肥満率が高くなってるため、成人病への医療支出が増えている。
だからその原因となっているところに課税する、という、良くある理由。
反論は、ソフトドリンクだけに課税することで、肥満がどれだけ解消するというのか、というやつである。

全くごもっとも。
この税金が、いったいどのような調査に基づくものなのかは知らないが、アメリカに住んで、特に低所得者層の食生活を観察していると、ソフトドリンクが高い肥満率の原因とは全く思えない。
もっと社会構造と食生活の根本的な問題に思える。

おかしな話だが、アメリカって、カロリーの高い食事の方が安く手に入り、カロリーの低い健康的な食事を採るのには金がかかる国だ。
カロリーと価格が全く比例しない。むしろ反比例する。
肉やチーズなどの乳製品はとても安く、野菜や魚はバカ高い。
外食も、安くて低所得の労働者でも簡単に手に入るのは、カロリーの高いマクドナルドのハンバーガーだ。
少しでも野菜の入ったりした、低カロリーの健康的な食事を求めると、とても低所得者には手が届かない値段になる。

結果として、この国の低中所得者層の肥満率は高い。
それが高所得者のそれより圧倒的に高いことは、統計を調べずとも、ちょっと労働者人口が多い地域に行ってみるだけでわかる。
ちょっと歩いてみるだけで、特に子供の肥満率が高いのに驚く。
白人ばかりの富裕者層が住む地域では見ない現象だ。

(ちなみに統計を見ると、所得と肥満率が反比例しているのでそれも驚く。
またChildren, Income, ObesityというキーワードでGoogleると、それに関する記事が出てくる。)

こうした低中所得者層の肥満率の高さが、(高齢ではなく)労働年齢での成人病に伴う、医療支出の増加に繋がっているんじゃないか、と私は見ている。
と考えると、日々のドリンクをコーラからダイエットコーラに変えたくらいで、国民総肥満が解決するとは思えないのだ。
かといって、マクドナルドなど低所得者層を支える食生活全体に課税したとしても、解決するどころか別の問題を巻き起こすだろう。
そもそも、課税によって解決しようってのが間違ってるんじゃないのか。

それに、私はダイエットコークが嫌いだ。
あの変に舌に残る、人口甘味料の甘みが嫌い。
レギュラーコークが高くなって、ミーティングとかに出されるコーラがみんなダイエットコークになってしまったら、泣いてしまうに違いない。
だから、個人的にも課税は反対。
まあ、どうでもいい理由ですけど。

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3 Comments

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コメントありがとうございます (Lilac)
2008-12-24 10:53:11
>ふらうと様
なるほど、勉強になります。
そうすると、医療費問題はむしろ高齢化問題というべきなんでしょうね。
中流階級以下では労働年齢層の肥満が問題になっていますが、医療費が出る中流以上では、肥満率が問題になっているのは高齢者層ですからね。
いずれにせよ、今回のソフトドリンク課税は医療費削減にはあまり効果は無い、ということですね。

>玉響様
ですよねー。どうしてこういうやり方になっちゃうのか…

私もあの人口甘味料(アステルパームとかいう化学物質らしいです)、何かリスクあるんじゃないかと疑ってます。
第一、カロリーが無いってことは、体内でエネルギーにならないってことですものね。
それって、体内に吸収されないか(食物繊維のよーに)、吸収されても燃やされずそのままの形で体内に残っているか(ビタミンやミネラルのように)どちらかってことですものね。
前者ならまだしも、後者だったら危険なんじゃ?とか思ってしまいます。
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Unknown (玉響)
2008-12-23 18:44:33
ダイエットコーラやカロリーゼロコーラの甘味料は人体に悪影響、という噂もあるくらいですからね。
甘いのにカロリーがないっていうのはどうもおかしい気がします。化学臭いというかなんというか…リスクがありそう?
あくまで推測の域を出ませんが。

にしても、安易な課税な気がしますよねぇ…
根本的な問題が複雑すぎるのでなんとも言えませんが、弥縫策にしてももう少しうまいやり方が無いものかと思ってしまいます。
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貧困と肥満 (ふらうと)
2008-12-23 13:53:44
医療費の問題と、低所得者層の肥満率との関係は、意外と複雑だと思います。低所得者の肥満率が下がっても、医療費はすぐには減りません。

アメリカの低所得者層は、少ない金額で高いカロリーを確保するために、ジャンクフードや非健康的な食材への依存率が高くなります。
そして低所得者層の子供の子供の肥満は、特に学校給食が大きく影響しています。アメリカは階層と居住地がほぼ一致し(なので市場調査に郵便番号を使う)、その居住地ごとに学区があり予算を持っているため、貧しい地域は休職予算が低くなります。するとマクドナルド等ファーストフードチェーンに給食をアウトソースし、子供が好きで高カロリーで安価な、フライドポテトやチョコレートドリンクたっぷりの給食になります。こうして子供を中心に、低所得者層で高い肥満率となっています。

ただ逆選好などアメリカの保険制度の歪みのせいで、低所得者層における慢性疾患の罹患率と医療費は必ずしもリンクしていません。むしろ保険に入れず高額の医療費を払えない低所得者層に医療サービスがいきわたらないことが問題です。(だから大統領選でも、医療保険を国民皆保険にするかどうかが大きな問題となりました)

そのため、大雑把に言えば医療費が発生しているのは中流階層以上で、ここの肥満率をどう下げるかがこの施策の目的です。実際は高齢化や車以外の交通インフラが未発達であることの方が医療費を押し上げる意味で問題なのですが、まあダイエットに向けた多少のインセンティブ付けにはなるかもしれませんね。

ちなみに、肥満はアメリカの公衆衛生で非常にホットなトピックで、肥満は疫学的に伝染病であるという研究もあるそうですよ。
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