大学の授業にかかわる話題

授業日誌・キャリア・学びのスキルについて

サントリーの親子逆転上場

2013年07月23日 00時55分11秒 | 学習支援・研究
サントリー“まれな”
親子逆転上場、真の狙いとは?
 
飲料業界再編への起爆剤か

2013.07.15

サントリーホールディングス本社

(「Wikipedia」より/663highland)

サントリーホールディングス(HD、佐治信忠・会長兼社長)の子会社で
清涼飲料大手のサントリー食品インターナショナル(鳥井信宏社長)が
7月3日、東京証券取引所第1部に上場した。
初値は公開価格を20円上回る3120円。
終値は3145円だった。
株式時価総額(発行済み株式総数×株価)は9718億円で、
今年最大の新規上場(IPO)となった。

100%の株式を保有していたサントリーHDは
約4割を売り出した。
株式公開に伴う資金調達額は3、900億円。
サントリー食品は2,000億円を国内外のM&A(企業の合併・買収)に投じる。
上場後もサントリーHDが
発行済み株式の約6割を保有する親会社であることに変わりはない。

サントリー食品は缶コーヒー「ボス」や緑茶飲料「伊右衛門」などの
人気ブランドを持つ。
清涼飲料の国内シェアは22%。
首位のコカ・コーラグループ(28%)に次ぐ。
海外展開も積極的で、シンガポール、ニュージーランド、
豪州などで現地飲料会社を買収。
海外事業が全体の売り上げの3割、
セグメント利益で過半を稼ぎ出している。

2013年12月期の売上高は前年比13.9%増の1兆1,300億円と、
初めて1兆円の大台に乗せる見込みだ。
営業利益は同28.3%増の750億円、
純利益は同49.7%増の350億円、1株当たり利益133.2円を予想している。
1株当たりの配当金は未定だが、
12年同期は59.7円の配当を実施した。

サントリーといえばビールや洋酒のイメージが強いが、
主力は飲料・食品である。
サントリーHDの12年12月期の連結売上高は1兆8,516億円。
このうち飲料・加工食品部門が9,844億円で53%を占める。
高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」が
看板商品のビールやウイスキーの酒類部門は5,521億円で全体の30%。
ワインや健康食品、外食などが同17%の3151億円だ。
飲料・加工食品部門のセグメント営業利益は767億円で、
連結営業利益(1,077億円)の71%を占める稼ぎ頭だ。

サントリーのように「親会社は非上場だが、子会社が上場」しているケースは
東証全体のわずか1%、24社だ。
しかも大半は時価総額が100億円未満で、
サントリーのような大企業は極めてまれだ。

04年に西武グループ創業家の資産管理会社で
非上場のコクドが、上場していた子会社・西武鉄道の保有株数を
過少申告していた証券取引法違反事件が発覚した。
親会社は非上場で子会社を上場するケースの評判は決してよくない。

影落とすキリンとの経営統合の破談

「なぜ、上場するのはサントリーHDではなく、
子会社のサントリー食品なのか?」

株式市場の関係者の間でこんな声が上がったが、
背景には創業家のお家の事情が絡んでいた。
サントリーは1899(明治32)年、
鳥井信治郎氏がぶどう酒の製造販売を目的に
「鳥井商店」を開設したのが始まり。
創業家による同族経営を貫いてきた。
本家である鳥井家と分家の佐治家の資産管理会社「寿不動産」(大阪市)が
サントリーHDの89.3%の株式を保有している。

サントリーHDの佐治信忠社長は、
2009年にキリンホールディングスとの経営統合に動いた。
両社には少子高齢化で国内市場が頭打ちになるなか、
世界を目指すという共通の目的があった。
だが10年2月に交渉は決裂した。
対立点は、統合後の寿不動産の位置付けにあった。
佐治社長は創業家が一定の影響力を残すため、
寿不動産が統合後の新会社に3分の1超
出資することを主張した。これをキリンが拒否した。

サントリーは海外に活路を求めた。
09年には仏飲料メーカー、オランジーナ・シュウェップスを3,000億円で、
ニュージーランドの清涼飲料大手、フルコア
750億円で相次ぎ買収した。

その結果、実質有利子負債は08年12月期末の1,048億円から、
12年同期末には3,687億円と3.5倍に膨れ上がった
従来の銀行借り入れや社債の発行では、
世界的なM&Aに対処できない。
株式を上場して資金を確保する必要に迫られた。

創業家の利益と資金調達を両立

しかし、サントリーHDが上場会社になれば、
必然的に寿不動産の持ち株比率は下がる。
やがて、サントリーが創業家の会社でなくなる日がやってくるかもしれない。
それだけは避けたい。
そこで子会社のサントリー食品を上場させた。

創業家の将来にわたる利益は守る。
かつ、子会社を上場して、株式市場から資金はしっかり調達する。
「親子逆転」の上場作戦の狙いは、まさにここにある。

サントリーというビッグネームが株式を公開した。
上場企業としてのガバナンス(企業統治)を
どう確保するかが、今後の大きな課題になる。

上場した7月3日、取引終了後に記者会見した
サントリー食品の鳥井信宏社長は、
「(国内飲料)トップは必達目標」と抱負を語った。
鳥井氏は創業者の曾孫に当たり本家の4代目。
3代目社長だった信一郎氏の長男だ。
サントリーHDの佐治信忠・会長兼社長は
来年中にも社長交代の意向を明らかにしており、
後継者は鳥井氏で決まりだろう。
分家から本家への大政奉還である。

鳥井氏が必達目標に掲げる国内トップを実現するためには、
M&Aがカギになる。
飲料業界は、コカ・コーラグループ、サントリー食品と続き、
以下は伊藤園、日本たばこ産業グループ、
アサヒグループホールディングス、キリンホールディングス、
ヤクルト本社、大塚ホールディングスが激しくしのぎを削る。
サントリー食品の上場が、
飲料業界再編の起爆剤になることは間違いない。
(文=編集部)

http://biz-journal.jp/2013/07/post_2495.html


最新の画像もっと見る