/prologue
(これまでの三回)
『――ミーン,ミンミンミン,ミーン』
肌を焼くような強い日差しの中。蝉の声がこだまする。壊れたラジカセから流れているかのように,ひどくうるさいBGM。聞いているだけで,体感温度が上昇していく気さえする。それでなくとも今日は暑い。サウナの中に厚着でじっとしているような。あるいは赤道直下の砂漠で延々と走り続けているような。事実,ただ歩いているだけだというのに全身から滝のように汗が流れ出ている。それが体中にまとわりつき,粘つくような感触を残す。自分の中で不快指数が増加するのを感じる。
七月下旬。月の入れ替わりが近づくこの日。記録的な猛暑が町を襲っていた。
「――なぁ,あれって陽炎?」
隣から聞こえる声。前方に目をやると確かに湯気が立ち上っているように見える。この猛暑はアスファルトをも焦がし,犠牲者に変えているのだろうか?
そんなことを思う俺の耳に再び響く声。
「珍しいよな。……なんか鉄板の上で焼かれる肉にでもなった気がしないか? なぁ,渉?」
あぁ,確かにそれはうまい表現だ。俺――葛西 渉(カサイ ワタル)はそう感じた。
隣を歩く人物に目を向ける。中肉中背で髪を茶系に染め上げたその男――瀧上 昇(タキガミ ノボル)は俺の視線に気づくと,人がよさそうな笑みを浮かべた。
「けどさ,どうせ見えるなら陽炎なんかよりも可愛い女の子とかの蜃気楼のほうがいいよな」
俺に笑みをむけながら,本気とも冗談ともつかないことを言う。けれどそれは前の台詞よりも昇に適しているように聞こえた。普段からこういった発言が多いせいだろうか? それとも俺がこの昔からの友人に対して,そういう偏見を抱いているからだろうか?
……まぁ,どうでもいいか。考えてみたところで所詮は一時の感情。次に同じことを聞けばまた別な思いを抱くことだろう。
俺は思考に没入していきそうな頭を切り替えるかのように,昇に言った。
「お前って本当にそういうことばかり考えてるんだな。今年は受験だっていうのに……。そんなんでいいのか?」
「いいの,いいの。高校最後の夏だぜ? どうせなら目一杯楽しみたいだろ?」
「……まあ,な」
確かにその意見には賛同できる。だがこいつはいささか楽しみすぎているのではなかろうか?
俺がそれを言ってやろうとした時。昇は急に真面目ぶった顔つきになった。そしていかにも重大な話をするといった様子で,こう言うのだった。
「――それで。お前,本当にこれから澪に告白するのか?」
「あぁ。告白するよ」
俺は頷き,はっきりとそれを口にした。すると昇は再び表情を緩め,あの笑みを浮かべた。
「そうか。――それにしても。ホント,ようやくって感じだよな」
「何がだよ?」
「何が? ってそりゃあ言うまでもなく分かってるだろ? お前が告白することだよ」
「確かにようやくって感じだな」
それは俺も感じていたことだった。今まで告白していなかったということが,自分でも不思議なくらいだ――。(続く)
――これまでの三回が,一回辺りが短くて読みにくい!という話があったのでまとめてみました。これぐらいでちょうどいいのかな? その辺りについてコメントもらえるとありがたいです。それによって今後,どれくらいの長さで一回辺りを公開していくか決めたいと思いますので。どうかよろしく。では。
(これまでの三回)
『――ミーン,ミンミンミン,ミーン』
肌を焼くような強い日差しの中。蝉の声がこだまする。壊れたラジカセから流れているかのように,ひどくうるさいBGM。聞いているだけで,体感温度が上昇していく気さえする。それでなくとも今日は暑い。サウナの中に厚着でじっとしているような。あるいは赤道直下の砂漠で延々と走り続けているような。事実,ただ歩いているだけだというのに全身から滝のように汗が流れ出ている。それが体中にまとわりつき,粘つくような感触を残す。自分の中で不快指数が増加するのを感じる。
七月下旬。月の入れ替わりが近づくこの日。記録的な猛暑が町を襲っていた。
「――なぁ,あれって陽炎?」
隣から聞こえる声。前方に目をやると確かに湯気が立ち上っているように見える。この猛暑はアスファルトをも焦がし,犠牲者に変えているのだろうか?
そんなことを思う俺の耳に再び響く声。
「珍しいよな。……なんか鉄板の上で焼かれる肉にでもなった気がしないか? なぁ,渉?」
あぁ,確かにそれはうまい表現だ。俺――葛西 渉(カサイ ワタル)はそう感じた。
隣を歩く人物に目を向ける。中肉中背で髪を茶系に染め上げたその男――瀧上 昇(タキガミ ノボル)は俺の視線に気づくと,人がよさそうな笑みを浮かべた。
「けどさ,どうせ見えるなら陽炎なんかよりも可愛い女の子とかの蜃気楼のほうがいいよな」
俺に笑みをむけながら,本気とも冗談ともつかないことを言う。けれどそれは前の台詞よりも昇に適しているように聞こえた。普段からこういった発言が多いせいだろうか? それとも俺がこの昔からの友人に対して,そういう偏見を抱いているからだろうか?
……まぁ,どうでもいいか。考えてみたところで所詮は一時の感情。次に同じことを聞けばまた別な思いを抱くことだろう。
俺は思考に没入していきそうな頭を切り替えるかのように,昇に言った。
「お前って本当にそういうことばかり考えてるんだな。今年は受験だっていうのに……。そんなんでいいのか?」
「いいの,いいの。高校最後の夏だぜ? どうせなら目一杯楽しみたいだろ?」
「……まあ,な」
確かにその意見には賛同できる。だがこいつはいささか楽しみすぎているのではなかろうか?
俺がそれを言ってやろうとした時。昇は急に真面目ぶった顔つきになった。そしていかにも重大な話をするといった様子で,こう言うのだった。
「――それで。お前,本当にこれから澪に告白するのか?」
「あぁ。告白するよ」
俺は頷き,はっきりとそれを口にした。すると昇は再び表情を緩め,あの笑みを浮かべた。
「そうか。――それにしても。ホント,ようやくって感じだよな」
「何がだよ?」
「何が? ってそりゃあ言うまでもなく分かってるだろ? お前が告白することだよ」
「確かにようやくって感じだな」
それは俺も感じていたことだった。今まで告白していなかったということが,自分でも不思議なくらいだ――。(続く)
――これまでの三回が,一回辺りが短くて読みにくい!という話があったのでまとめてみました。これぐらいでちょうどいいのかな? その辺りについてコメントもらえるとありがたいです。それによって今後,どれくらいの長さで一回辺りを公開していくか決めたいと思いますので。どうかよろしく。では。
あるいはわざといいところで切る(笑)
↑
いま、おれん中で流行ってんのさ。w
幾つか、読ませて頂きました。御馳走様。笑。
文章の使い方が、俺的には物凄く好きです。
続き待ってます。
其れと、ブクマ入させて頂きます。
ではでは。
文章の使い方が好きかぁ,ありがとです。続き……。シナリオは少し停滞中。近日中に公開します。はい。
今は『テーマ小説』仕上げにかかってるのです。そちらもよろしくねん♪
私の方でも,ブクマ後で入れさせてもらいます。今後もよろしくです。