「Dear My Hero」
(第四回)
目が覚めると,夕陽が沈もうとしていた。
どうやら泣き疲れて眠ってしまったらしい。
教室に一人きり……彼は行ってしまったみたい。
私はそっと胸の上で両手を重ねた。
目を閉じる――。
再び開いた時,何かが変わっていた――なんてことはない。
それでも時は流れていく。
私のヒーローは行ってしまったけれど,魔法使いは消えてしまったけれど,彼はここにいないけれど,私は今,ここにいる。
人に話しても,到底信じてもらえないだろうけど私は知っている。確かにこの三年間が現実だったことを。
「……また,言えなかった」
次に会う時には,ちゃんと彼に伝えられるように私は向き合って生きていこうと思う。
私は彼の代わりになることなんてできないけれど,彼の思いを誰かにつなげることはできる。
私が誰かのヒーローに,誰かの魔法使いに,私が私にとっての彼になれるように――。
すぐには変わることなんてできないかもしれない。だから一歩ずつ踏みしめて歩いていこう。後悔しないように,彼が後悔しなくていいように。
「……よしっ」
扉を開けて私は新しい一歩を踏み出した。
「りょうくん……ありがとう」
(fin)
(第四回)
目が覚めると,夕陽が沈もうとしていた。
どうやら泣き疲れて眠ってしまったらしい。
教室に一人きり……彼は行ってしまったみたい。
私はそっと胸の上で両手を重ねた。
目を閉じる――。
再び開いた時,何かが変わっていた――なんてことはない。
それでも時は流れていく。
私のヒーローは行ってしまったけれど,魔法使いは消えてしまったけれど,彼はここにいないけれど,私は今,ここにいる。
人に話しても,到底信じてもらえないだろうけど私は知っている。確かにこの三年間が現実だったことを。
「……また,言えなかった」
次に会う時には,ちゃんと彼に伝えられるように私は向き合って生きていこうと思う。
私は彼の代わりになることなんてできないけれど,彼の思いを誰かにつなげることはできる。
私が誰かのヒーローに,誰かの魔法使いに,私が私にとっての彼になれるように――。
すぐには変わることなんてできないかもしれない。だから一歩ずつ踏みしめて歩いていこう。後悔しないように,彼が後悔しなくていいように。
「……よしっ」
扉を開けて私は新しい一歩を踏み出した。
「りょうくん……ありがとう」
(fin)