徒然なるままに。

徒然に小話を載せたり載せなかったり。

get the better of (~に勝つ)

2006年01月28日 | スレイヤーズ
 夢の中で、昏い大きな闇が目の前に立ちはだかっていた。


 
 夢から覚めると、目の前には見知らぬ天井。しかしそれはいつものこと。
 夜も早い時間に眠りについたにもかかわらず、体はまだ重く休息を必要としている。
 うーんと唸って、リナはそのまま寝返りを打った。

 ふと、薄く開けた目に銀色が映った。

「………あー」

 色素の抜け落ちた髪の毛。それは他の誰のものでもない、リナ自身のもので。
 自慢の栗色は、今はまだ影も形も見えない。
 生体エネルギーを根こそぎ使うような真似をしたのだから、当然とも言えたが。

 それにしても、髪がこんな状態であるということは。
 先程までの夢は、夢であって夢ではなかったのだと実感する。


 誰が信じるだろうか、数日前確かに、世界は滅亡の危機を迎えていたのだということを。
 ……誰が信じるだろうか、赤眼の魔王シャブラニグドゥを、他の誰でもないリナが斃したのだということを。

 今でも信じられない、とは言わない。あれは確かに現実に起こったことだ。
 確かに、リナはレゾ=シャブラニグドゥを斃したのだ。

 けれども、それを誰かに言ったところで信じるものはいないだろう。
 それでいいのだということにして、リナは再び目蓋を閉じた。



No one believed they when they told how they had gotten the better of Shabranigudo.