ひとり井戸端会議

主に政治・社会・法に関する話題を自分の視点から考察していきます。

名古屋高裁判決から「イラク派兵は違憲」という結論を導き出せるのか?

2008年04月21日 | 憲法9条
 かの判決から数日が過ぎ、この判決が「自衛隊のイラク派兵は違憲」という結論を示したものだという解釈がまかり通ろうとしているので、その解釈に待ったをかけたい。



 何度も繰り返すが、そもそも今回の判決は、「イラク派兵は憲法9条に反する」と、主文で宣言したものではなく、蛇足部分でそう「判断」したにすぎず、法的拘束力は生じていない。よって、本判決は、政府にイラクから自衛隊を撤退させる何よう請求したものでもなく、ましてや自衛隊の海外活動を禁じたものでもない。そこはしっかりと押さえておきたい。

 本判決の「違憲判断」の位置づけは、あくまでも「一裁判官である青山はこう考える」という程度のものであり、今回の判決を受けて政府が改めて対応を迫られることは、自衛隊のイラク派遣の大前提となる「非戦闘地域」の概念と定義を、今一度明確にかつ詳細に国民に説明することぐらいだ。しかもそれも「必要性が出てきた」という程度のものである(義務ではない。なのでこの判決に従う必要もない)。その理由はこれまで述べてきたとおりである。



 ただ、確かに今までの政府の「戦闘地域」に関する答弁は、あまりにお粗末であったことは否定できない。小泉元首相の「自衛隊の活動している地域が非戦闘地域だ」という答弁では、せっかく現場で自衛隊が頑張っているのに、これでは国民の間に疑心暗鬼が広まるだけである。今回の判決を受けて、もう一度、今度は丁寧に国民にイラク派遣の必要性と、その活動地域の安全性を説く必要はあると思う。



 しかし、本判決を受けて自衛隊がイラクから撤退する必要は全くないということは、再度強調したい。判決でも、違憲判断をする前に、「イラク特措法を合憲としても」と述べていることでも、これは分かりそうなものだ。当然のことながら、自衛隊のイラク派遣は、イラク特措法に基づいて行われている。

 本判決は、「空自の活動は、武装した兵員を輸送を輸送するものであり、それは戦闘行為と一体化したものであり、イラク特措法に反し、かつ憲法9条に抵触するものも含んでいる」と判断したものであって、これは、イラク特措法を違憲と判断したものではないし、せいぜいイラクに派遣するならもっと穏便にせよ、と訴えたにすぎない。だが、この訴えも、以前のエントリーで述べたように、憲法9条制定者の考えに照らし、不適切であることは明白だ(この裁判官の判断からは、日本が戦争になっても、自衛隊の行使は憲法9条に反するから、座して死を待つべしという結論しか出てこない)。



 今回の判決は、裁判所の考えに合うように解釈しても、自衛隊のイラク派遣によりイラクの安定に寄与し、ひいては国際平和に貢献するという「目的」は否定しておらず、その目的に向けた「手段」の違法性を指摘したにとどまり、サヨクがはしゃいで言っているような「自衛隊は今すぐイラクから撤退しろ!」という結論とは、必ずしも結びつかないことは明らかである。活動内容の見直しが必要ではないかという程度のものだ。ちなみに、私はそれすらも不要だと思うのだが。

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