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Maeda Niina BLOG

日本のバレエ

2020年05月22日 02時04分24秒 | niina
自粛生活に入ってまもなく2ヶ月。

この2ヶ月は、政府への意見や不満など、様々なことがネットで語られ、署名活動もさらに盛んになったように感じます。
(私の目がそこに向くようになっただけということなのかもしれません)

そして一昨日、バレエダンサー救済のための署名を集めるサイトを読みました。
とても賛同できる内容ではありませんでした。
昨日までにSNS上で炎上していたのでご存知の方も多いかもしれませんが。。。

それは、この新型コロナ渦で仕事がなくなってしまったダンサーを救って欲しいというものでしたが、その文章はなぜか「男性」ダンサーに限定されており、「踊りたい!」という気持ちを勢いでぶつけ、上演に伴う三密など危機への配慮が足りないような印象の内容でした。

現在は文章が修正され、発起人のお名前も絞られているようですがこの事実が私の中で修正されることはなく、ずっとモヤモヤしています。

どうしてこんな文章になってしまったのか、、
今回のことは、おそらく日本のバレエ界の仕組みや歴史の中のよくない部分(男尊女卑的なこと)が今もまだ日本バレエ界に残っており、現在のような有事だからこそ感情的な部分が先走り表面化してしまったと言うことなのだろうと思います。

私がプロとして踊り始めた10代の頃は、女性に比べて男性ダンサーはとても少なく、いわゆるバレエ体型の人も男女ともに少なかったのです。
美しく爪先が伸びる男性は稀でしたし、子供の頃からバレエを始めている男性は少なかったので身体も硬い方が多かった。
もちろん、それだけが全てではなく、個性や味のある素敵なダンサーは、分母からしたらむしろその頃が多かったかもしれません。
そんな状況ですから、踊れてサポートができる男性ダンサーは引く手数多。
「自分のバレエ団で踊って欲しい」とか、「この作品に絶対出て欲しい」、と思ったダンサーを獲得するため、ダンサーを雇う側の立場の方は、色々な工夫をされたのだと思います。
ご本人が望んでいるかどうかとは別の話です。

結果、チケットノルマの数は男性の方が少ないことが多くなり、リハーサルや稽古を休んでも男性は何も言われないことが多かった。
女性はよくその愚痴を言っていました。
愚痴は言うけれども上の立場の方に意見を言うようなこともなかなか簡単ではないと言うか、そこまで考えられないような時代です。
もちろん、本気で意見しようと決めればできたとは思いますが。
そんなことが日常でずっと続くのですから、そのうちそれに慣れてしまい、おかしいと思いつつも流してしまうような状況でした。
また、男性は生徒さんのサポートで発表会に出演する機会も多いので、様々なお教室に呼ばれ、若いうちからその度に「先生」と慕われます。
そしてその呼び名が身体に浸透すると本当に先生的な心理状態になってしまうわけで、徐々に男尊女卑的世界に繋がって行ったのだと思います。

もちろん、全くそんなことは感じさせない男性ダンサーも多くいらっしゃるし、逆に女性がみんな虐げられていると言うわけではありません。
あくまでも、全体の風潮として、です。
本当によくないことですが、そうならざるを得ない現実もあったと言うことです。
今回の署名活動の文章の背景には、そう言った根深い日本バレエ界の現実があると感じました。
一般的なイメージとは少し違う、バレエ界独特の男尊女卑です。

先人の方々が日本のバレエに心身を捧げてくださり、今があります。
私たち世代はいわば御膳立てされたところに運よく居場所を見つけることができた幸運な世代です。
前述した時代も、そして男性が女性ほどに多くなって平等化してきた現代も見ている、ちょうど間の世代でもあります。
ですから、今日、こんなことをわざわざ書くのも、ただ中傷されるのを見ているだけなのももどかしい気持ちからです。
発起人の方々はバレエ界では大御所というべき立場の方々であり、私の古巣のバレエ団の大先輩もいらっしゃいました。

ここ10年くらいは、バレエ界は本当に変わったと思います。
だから今回、署名活動の文章に対し、多くのダンサーがおかしいと感じ、炎上したのだと思います。

自戒も多いに含めてですが、日本のバレエダンサーはもっともっと色々なことを考えなければいけないと感じます。
少し話は逸れますが。
少なくとも日本のバレエの歴史を知ろうとして欲しい。
海外とは違うのです。 近づきたいし近づくべきだけれども、海外と比べて日本のバレエを語るのであれば、日本の背景をもっと知るべきです。
そう言う私もまだまだ知らないことばかりではありますが。

バレエダンサーになるには、世間知らずにならないとできないくらい、子供の頃から心身をバレエに捧げる必要があるし、それではじめて上りつめることができる世界だと思っています。
実際自分もそうでした。
プロになってからも頭ではなく感覚で生きてきました。
でもやはり、それだけではダメだと言う自覚と勉強は怠ってはいけないと思っています。
それは言い聞かせています。


と、言うことで、、
私などが語れることではないと思いつつ、ひとり悶々としてしまい、今日はどうしても書き留めておきたかったので少々思い切って書いてしまいました。
「バレエダンサー」とか「男性」とか「女性」とか、一括りにするのは意に反しますが、今日は敢えてそんなことも書きました。

長々お付き合いをありがとうございました。

おやすみなさい。

ーー
ここから5/22朝、追記です。
あらためて署名のページを見てみると、個人的には、三密の削除を求める項目が男尊女卑的部分よりもインパクトがあったなと思います。
三密の削除を求めるのであれば、それに対しての提案があって欲しかったです。
ワクチンも薬もない今、三密を避けるに変わる妙案があるなら、すぐにでも知りたい。。。


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