Wanderers

試行錯誤のリターンズ はじめよう、ここから 日々のあれこれ・思うことなど 

運命だというなら手を離したくない

2016-06-05 15:30:34 | 本より
岸惠子 : わりなき恋

何となく岸惠子さんが好きで、手に取ってみたものの途中で放置していたので読み進めてみました。


「わりなき」は「理無い」の連体形で、「理無い」とは

・理屈で割り切れない関係
・道理に合わない
・どうしようもなくやりきれない
・格別

等の意味があるそうです。
こちらは恋愛モノの作品なので、理屈では割り切れないほどの深い関係、になるのでしょう。

ざっくり乱暴に言うと不倫のお話し。
だけどお酒の勢いでもその場の雰囲気に流されたのでもなく、69歳と58歳の大人な、けれど恋心が散りばめられた作品だと思います。
登場人物が裕福すぎて、待ち合わせがパリとか素敵すぎるシチュエーションだったりするのですが、それも嫌味なく読めます。
また世界史に明るくない私には、くみ取りにくい社会背景が描かれたりもするのですが、それも作品の一部としてすんなり読み進められました。

話の中心となる恋愛の話なのですが、年齢関係なく想いを通わせあえる人に巡り合えて羨ましいところ。
大人だから達観できる部分と、大人でも許せない部分。
恋って大人も子供も関係ないんだなぁと思うところでした。
もちろん引き出しの多さからいって大人の方が余裕や先見はあるのでしょうけれど、嫉妬や歯がゆさというものはまた別なのでしょう。

私はまだまだ自分本位なので、誰かの為に身を引くとか、相手の為に去るとかはできないと思います、たぶん。
でも、彼女は想いのたけをぶつけながらもサヨナラと言う、ありがとうと言うのです。
ラブレターといいつつ渡された手紙の内容は別離の言葉で、彼はそれを読み現のなかで彼女の夢を見る。
そして、何年後も彼女を忘れず思い出をたどる。

最後の10頁でこんなに苦しくなるなんて思いませんでした。

苦しいのは「私なら」という気持ちがこみあげてくるからなのかもしれませんが、私なら手を離したくない。
作中に映画「マディソン郡の橋」のラストシーンが出てくるのですが、私なら彼のもとに駆け寄りたい。
それが、後悔からくるやりきれなさだとしても、今の私はそうしたいと思ってしまう・・・

って、別な話になっちゃいましたけど、今回も心揺さぶられる作品でした。