星くず雑記

日々の出来事は煌めく星くずのように…

藤子不二雄『ノスタル爺』

2006年04月10日 23時07分51秒 | 藤子不二雄
この前買った、SF全短編集「みどりの守り神」&「カンビュセスの籤」
いやー、これだけ短編がたくさんあると、気になるものもいっぱい出てきます。。
その一方で、時代を感じさせるものも結構あったり。
人口45億人突破で…大きな危機にはならなかった。結局。
まぁいいや。やっぱり圧倒的に藤子作品は素晴らしいと思えるもん

さて70年代は、まだ戦後30年余りと、第2次世界大戦のなごりが残っているんですね。
「TPぼん」もそういう話がありました。。(これは79年が舞台)
「ノスタル爺」はそんなお話。

藤子不二雄異色短編集〈4〉ノスタル爺 (ゴールデン・コミックス)

<あらすじ>
浦島太吉は戦後30年あまりジャングルで戦い続け、
やっと故郷に帰ってきたが、その村はすでにダムの底となっていた。
妻の里子の墓にも手を合わせる。
太吉は里子を不幸にしたことを悔やむ。
あの時ガンと断れば…

浦島家の跡取りだった太吉は、父や親戚の強い勧めで
学徒動員で出征直前、幼なじみで許嫁の里子と結婚する。
しかし生きて帰れないと思い、また自分の死後の里子の幸福を願い
彼女を抱こうとしなかった…
庭に出てなおも、泣く里子を拒むが
そのとき浦島家の倉に閉じ込められている
気ぶりの爺さんが「抱けえっ!」と絶叫する…

再び戦後、太吉はおじから離れひとり水際へ。
不思議なことに、水没したと思った辺りには、まだ里子との思い出の場所が残っていた。
太吉にはある予感があった。それは遂に確信となり、彼をせき立てる…
以下ネタばれ



角を曲がるとそこには失われたはずの村があった。
太吉は郷愁に果てしなく溺れる。
と、そこに一人の少女が…それは幼き日の里子だった。
太吉は思わず抱きついてしまい、里子は怯えて泣き出してしまった。
太吉は捕まり、縁者らしいと浦島家に連行される。
事情を話すがもちろん理解されず、追い出されそうになるが
「一度失ったものを二度と失いたくない」と
倉に閉じ込められてでも、村に残ることを願いでる。
倉には太吉と里子の仲の良い声が聞こえてくる…


本当に、太吉と里子は幸せにはなれなかったのだろうか。
唯一の謎は「気ぶりの爺さん」が、いつ狂ったか。
でも、彼の数十年にも及ぶ戦場の日々を思うと…
村に残ることを願い出る辺りまでは、精神状態のちゃんとしていたようだし。
気ぶりって言われるのは、事情を理解してもらえなかったからなら、
もしかしたら狂っていなかったのかも知れない…

でも、せっかくなら太吉&里子にも説明して
説得すれば良かったのに…

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(11/3/15 追記)
箱舟はいっぱい (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)
にも収録。

現在刊行中のシリーズ:藤子・F・不二雄大全集の
「少年SF短編1」には収録されていません。
今後に期待です。
コメント
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