最大手かつ現存最古の宝塚以外の女性歌劇、
特に松竹歌劇が題材になっていたので、観に行きました。
(以下ネタバレを含みます)
【あらすじ】
松竹楽劇部の少女スター水の江瀧子は、ふとしたきっかけで歌劇史上初の短髪の男役「タアキイ」に転ずると、大人気となる。
歌舞伎座と新橋演舞場で、宝塚少女歌劇との熾烈な歌劇対決となり、休むことなく公演を打つ。劣悪な労働環境に、瀧子はリーダーとして立ち上がるが、後輩の津阪オリエは劇団に残り、スターに祭り上げられる。しかし瀧子らは待遇改善を勝ち取り、オリエとも和解した。
やがて日中戦争となり、瀧子らも大陸に慰問に向かう。帰国後、感想を問われると、当たり障り無く答えたが、戦地で祖国の娯楽を求める兵士らの疲れ果てた姿に、強い衝撃を受けていた。瀧子は松竹少女歌劇を退団し自分の劇団を立ち上げ、各地で巡業を行う。
戦争が終わると、松竹歌劇の後輩:並木路子が、彼女自身も戦争で家族を失った悲しみを背負いつつ、歌で人々を勇気づける。再び明るい娯楽が必要とされる時代がやって来たのだった。
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まず、これを歴史に忠実な物語として捉えてはいけません(重要)。
恐らくは意図的に、笠置シヅ子の諸々の設定は変えられており、あくまでもOSSK全体を象徴する役所。
他、歴史的な正確性は検証する気が起きないほどです。
「大槻冴子」は、当然SKDの小月冴子のオマージュと期待していただけに、宝塚側の架空のスターで残念です。
(松竹側は実在人物名なので、ちょっと脚色のズルさを感じます
監修の植田先生は、ご子息の友五郎先生ともども、OSKにも参与したことがあるこですが)
あとは男性陣の、特に髪形が昭和前期的ではなく、時代感が出し切れていません。彼らは彼らで、当時の価値観・世相で戦争を推すキャラクターとして描く方が、慰問で現地の様子を見て疑問や衝撃を抱く瀧子との対比になったのではないでしょうか。
(実際には、瀧子は慰問誌『戦線文庫』の軍服グラビア等、協力的な姿勢も見せています)
歌劇ファン(OSK寄り)として、歴史物語として観ると辛口になりますが、レビューや歌謡ショーとしては、とても見応えがありました。
また宝塚出身者同士が、それぞれ宝塚と松竹の歌劇スターとしてディスり合うのも、出演者の背景を知ってるとブラックユーモアとして面白かったです。
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タアキイ役の鳳稀かなめさんは、スターとしては初めて観ました。
華があって素敵でした。
オリエ役の彩凪翔さん・大槻冴子役の天華えまさんは、惜しくも宝塚トップに届かなかった方。宝塚時代以上のスター役(衣装とか)で、見事なスターぶりでした。
笠置シヅ子役の妃海風さんを拝見するのは、たぶん宝塚以来。娘役キーではなく少し低声のパワフルなシンガーとして、(ネイティブの)関西弁と相まって、とても似合ってました。
最後に、ストーリーテラー(物語全体が、若い俳優が芸能記者からタアキイの一代記を聴く、と言う構成)である三枝乃里江役の未沙のえるさん!
お元気そうで何よりです。
軽妙なおばさん記者で、煌びやかなレビュー主体の作品の中で、素晴らしいアクセントでした。
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宝塚出身者の皆様のパワフルな姿に元気をもらいました。
が、いつものことながら、SKDやOSKのOG役を、両劇団出身者・縁の方が取れないのは誠に寂しい限り。
(それだけ宝塚が頑張った、と言うことでもありますが、やはり複雑な心境です)
ロビーには所狭しとのぼり旗が飾られていました。