星くず雑記

日々の出来事は煌めく星くずのように…

台湾映画「海角七号」を見た

2010年09月03日 01時12分17秒 | テレビ・映画
今年の春、タイ旅行へ行ったが、
その帰途の飛行機で、雲の合間から台湾最南端が見えた。
家に帰って調べると、それは恒春という町だそうだ。
飛行場があり、市街地から農地・森林地帯へと、
コンパクトにまとまった町の姿が、妙に印象的だった…

-----
2008年に台湾で大ヒットし、昨年日本でも公開された
「海角七号」をやっと鑑賞した。

・あらすじ
台北でのミュージシャン生活に挫折した、主人公:阿嘉(アガ)は
郷里の恒春へ戻り、郵便配達のバイトをする。
恒春のリゾートホテルでは町おこしのイベントが企画され、
その中には売れない日本人モデルの遠藤友子もいた。
結局、中孝介(※本人出演)のコンサートが開かれることになり、
その前座として地元住民によるバンドが結成された。
友子は、中国語が話せるために、モデルをクビになり
地元バンドの世話役・日本との連絡係になった。
ボーカル・作詞作曲担当の阿嘉はなかなか、新曲が書けず
郵便物も溜め込むようになり、友子とも衝突ばかりしていた。
郵便物の中に、今は無い「海角七号」宛の小包があり
阿嘉は興味本位から開封してしまう。
それは約60年前のラブレターだった…

-----
序盤は、登場人物たちの話が、バラバラに展開され、
疑問点ばかりなのですが、
徐々にそれぞれの経歴や、過疎・高齢化に悩む恒春の事情
といったものが判明し、クライマックスの中孝介コンサートの日を迎えます。

海角七号/君想う、国境の南 [DVD]

何が面白いかというと、台湾っぽさが前面に出ているからです。
最南端の田舎町:恒春のローカルな雰囲気、
それと相反するようなリゾートホテルの情景との対比。
登場人物も、台湾の縮図のように、
”台湾人”もいればルカイ族(原住民)、客家人(華僑)、日本人もいるし、
台湾語(※現在の中華民国の公用語は"北京語")を話す人もいれば
老人やホテル従業員には日本語を介す人もいるのです。

そもそも、現在の台湾島を領有しているのは「中華民国」ですが、
これは台湾人による台湾人のための台湾人の国家ではないのです。


台湾はかつて日本領であったが、日本の敗戦により中華民国に帰属した。
近代化し教育も普及していた台湾に対し、国民党政府は
中華民国は北京語を押し付け、台湾人を差別し、弾圧(白色テロ)が続いた。
そして、蒋介石は"全中国を代表する政府"との姿勢を崩さず、
中華民国は国連での代表権を失うのに前後し、国際社会から孤立した。
日本も1972年に「中華人民共和国」と国交を結び、中華民国と断交した。
1988年に台湾出身の李登輝氏が総統となり、
ようやく民主化が始まったのが1990年、
総統の直接選挙が行われたのが1996年である。
これでようやく、"台湾人の国家"づくりが始まり、
1997年に学校教育に「台湾の歴史」教科書が採用された。
(※中華民国の歴史、すなわち中国史を自国の歴史として習っていた)

日本は、台湾の近代化に少なからず寄与した。
総統府(旧総督府)は実に壮麗な建築で、
ただ一方的に搾取するためなら、
このような施設を作る必要は無かったはずだ思いました。
少なくとも現地に派遣された日本人の技術者・教師達は、
東アジアの発展に貢献しようとしたはずだと信じます。

この映画では、約60年前の日本人教師が
引き上げの際に台湾に残した恋人に宛てたラブレターが登場します。
彼は、駆け落ちを約束したにも関わらず、
恋人を残し、隠れるようにして帰国してしまった。

この様子は、敗戦という状況下とは言え、
台湾の苦境になんら手を差し伸べられなかったどころか断交した日本が、
見捨てたのではない、断腸の思いで撤退せざるを得なかったのだ
というようなメッセージに重なるようで、何とも複雑な気持ちになります。
少なくとも、文化的・経済的な交流は末永く続かせたいものです。

ちなみに台湾からの引き揚げは、お互いに手を振りながら別れますが
その頃、満州の引揚者達は悲惨なことになっていた…ことからも
台湾と日本が、そこそこ上手く行っていた一つの証かも知れません。

-----
それから、コンサートのアンコール曲「野ばら」(野玫瑰)。
戦後、日本領時代の教育は否定されますが、
「野ばら」はドイツの曲ということで、学校教育の中に残ったとのこと。
劇中ではこれなら歌える、と中孝介(※本人)も飛び入りで歌い(日本語)、
さらには映画館の客席の老人達も日本語で歌いだす、など
台湾の過去(日本統治時代)と現代を繋ぐ
大きな鍵となる歌なのでした。


「過去の植民地支配」なるものを、現在では
日本人は否定的にとらえ、台湾人は肯定的にとらえています。
普通の「植民地支配」ならば、この思いは逆のはず。
この「海角七号」は台湾の過去・現在、
そして未来へ思いを馳せることのできる映画でしょう。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Macbookが修理から帰ってきた | トップ | 漢字廃止運動の亡霊…… »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (日本と台湾をこよなく愛する男の物語)
2010-09-03 15:17:45
こんにちは。
私も見ました。
台湾人の出演者のキャラクターがとてもおもしろかったです。
いつか、
日本語吹き替え版でもう一度見ようと思っています。
返信する
Unknown (みか)
2011-01-22 16:23:38
台湾のこの映画、国外にいて見ることができなかったので、DVDをやっと頼みました。台湾、泣けますよね・・台湾、大好きです。
返信する

コメントを投稿