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インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

鞭と性具の追い討ち(マミーポルノ8)

2015-04-05 18:25:36 | カルチャー(祭)・アート・本
世界で一億部突破の「フィフティ・シェイズ・オヴ・グレイ」早川書房刊行リビエラ文庫・上中下三巻の翻訳本はこちら)を二十章まで読み終わった。

余すところ六章、終わりに近づいてきたが、18連打のSM本番に追い討ち駆けるように、乗馬鞭を乳首に軽くしならせての前戯では、思ったより痛くなく、アナは絶頂に達する。

その後、グレイに養親も紹介され、気に入られる。ディナーのテーブルの下で、アナは、腿に手を差し入れる男を拒否、罰としてボートハウスで男の満足だけを追求した手早い性行為を授けられる。

後日黒い糸つきの小さなボールの性具を挿入させられ尻をはたかれながらの前戯、アナはボールを抜き出された後の性行為で、オルガスムスを覚えていた。男がなぜさわりたがるのをいとうのか、秘密を知りたがっていたアナは事後、彼の実母が売春婦で四歳のときに死去したと洩らされる。

18章から20章までの三章分は扇情的な性描写が多く、この辺はポルノグラフィーだなと思う。しかし、キスの描写がうまい。さすが西洋人ならではの巧妙なテクニック描写、日本の作家には書けないところだ。性行為も、著者本人が結婚前性経験豊富だったのか、あるいはポルノをたくさん読んだのか、もしくは夫との性行為がすごいゆえか、よくわからないけど、微に入り細に穿っての手慣れた描写。

ただポルノといっても、ヒロインの心情は恋愛小説の乗り、正常な性関係を持ちたがっている乙女がたまたま、ヴァージン喪失した相手が、外見だけ取ると白馬の王子様なのに、実は黒馬の王子だった衝撃的な現実にいやおうなく突き当たって葛藤、なぜそうなったかと男の過去を探ろうとするのだが、それも恋する乙女ゆえの恋人を理解したいとのけなげな心情である。

だから、全世界の女性にもてはやされたのだろう。
それに、性描写が刺激的となれば、スリリングで繰る手が止まらない。

実は一番最後の章だけ早々と盗み読みしてしまったのだが、SM行為はエスカレートして、ヒロインは心身ともに痛い思いをするのである。で、訣別となるわけだが、第二・三部と続くから、復活することは目に見えている。ただし、最終局面でどうなるのかは、私にもわからない。

反復表現が多いところは、語彙の貧しさを感じるが、英語が非母国語圏ではかえって難解な表現がなくて、読みやすいといえるだろう。

文学的価値は疑問だが、時折気のきいた描写もある。

グレイが光と影の交叉するライト下、心理描写に重ね合わせて、男の複雑な性格、明暗の気性を暗示させるところなど、うまい。フィフティ・シェイズ、五十の陰影を持つ男、というわけだ。グレイという名と、グレーの衣装を好んで着用するファッション、黒と白の中間のグレー、つまり、黒白はっきりせずにオブスキュア、明暗の境がおぼろげなミステリアスな男、という人物設定が生きている。

*今夜の寝台列車でカルカッタに発ちます。明朝八時到着。帰宅は8日の午後。この間、ブログが途絶えることがありましたら、ご容赦ください。戻り次第、六年ぶりのカルカッタレポートを写真とともに、お伝えしますので、お楽しみに!
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18連打!のSM本番(マミーポルノ7)

2015-03-30 17:58:30 | カルチャー(祭)・アート・本
世界で一億部突破の「フィフティ・シェイズ・オヴ・グレイ」早川書房刊行リビエラ文庫・上中下三巻の翻訳本はこちら)を300ページ以上、三分の二読み終わった。

以下、17章までのあらすじ。



ポートランドの新しいアパートに移動したアナは、引っ越し祝いにグレイから高級シャンパンを贈られ、ルームメイトのケイトと分かち合った後日、男本人の訪問を受ける。ケイトは不在だった。

ニュールームのベッドでいよいよSM本番に突入、予想外にアナは頬の平手から始まって、顔面、背、肩、尻などに次々に殴打を見舞われる。計18回もの猛打に耐えたアナ、衝撃の反面でいわくいいがたい性的興奮を覚えていた。
そしてオルガスムスに到達、男はこれで六度目の絶頂と正確に覚えていた。

しかし、グレイが去った後、赤く腫れ上がった尻が痛みだし、今頃になってショックで麻痺していた神経が蘇り、どっと涙が噴き出してきていた。連打を見舞われているさなかは思ったほど痛くなく、予想に反して性的興奮を覚えてしまったアナだったが、今はじわじわショックから来る涙を抑え切れなかった。

ケイトが戻ってきて、ルームメイトが泣いている理由を、グレイのせいとすぐに嗅ぎ付ける。アナは何も洩らさず、ベッドで泣き続ける。
しばらくして、戸口に佇んだのは、舞い戻ってきたグレイだった。ケイトが電話して毒づいたらしい。

男はアナが、契約で取り決めたセイフワード、イエロー(黄信号)、レッド(赤信号)を発さなかったことをとがめ、アナの尻にバスルームから持ってきたオイルを擦り付ける。
アナは、男が殴打したりすることのない正常な性交を求めていたし、男の体にも触りたかったが、男はぼくの肉体は垢にまみれていると退け、異常なセックスに耽溺するようになった暗い過去をほのめかす(この辺は五歳のとき飢餓を体験したことから、浮浪児だったのではと想像させる。一種アンタッチャブル、インドでいうところのカーストの穢れに通ずるものを覚える。この私の想像が正しいかどうかは、後半を読んでみないとなんともいえないが)。

すでにSM主従契約書に同意してしまった手前、アナは後戻りできず、最初のSM洗礼を受けたわけで、事後の衝撃は大きかった。

*それにしても、いきなり18回の連打とは、ほとんど暴力の域、アビューズ以外の何物でもなく驚きだ。この間処女喪失したばかりのおぼこ女子大生がよく耐えたもんだ。そのくせ、しっかり性的興奮も味わってしまうところ、マゾの素質充分。

私だったら、絶対大声あげて、男を殴り返していたところだ。ついこの間ヴァージン喪失したばかりの女子大卒業生には、ハードな洗礼とはいえまいか。
読者も場面急転回で、ショックを受けるところ。

しかしいくら超リッチでハンサムでも、こんな変態男は私ならごめんこうむる。まずその前に、自分だったら、絶対契約書なんか結ばないが。

とはいえ、小説の演出効果抜群、こりゃあはまるよなあ。トリロジー、三部作構成なので、全部読み通そうかと思ったほど。

いよいよ面白くなってきた!


ネクタイで手首捕縛の後はバニラセックス卒業、いきなり本番、
顔と体に連打の嵐を見舞われるヒロイン。オー・マイ・ガッド!






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ついにSM契約書に同意(マミーポルノ6)

2015-03-29 19:15:28 | カルチャー(祭)・アート・本
世界で一億部突破の「フィフティ・シェイズ・オヴ・グレイ」早川書房刊行リビエラ文庫・上中下三巻の翻訳本はこちら)を半分以上、15章まで読み終わった。

おさげで下唇を噛む癖のある可憐な女子大生アナはいよいよ、卒業式を迎える。ルームメイトのケイトは総代としてよどみない演説、拍手大喝采を浴びる。賓客として、後援者のグレイが招かれ、総長の社会的成功への惜しみない賞賛のあと、演壇に立って挨拶する。流暢な口舌、卒業生の祝賀演説の中でグレイは幼児期飢えを身をもって体験したことを明かし、全世界の飢餓民への食糧救援のチャリティ支援を提唱する。

アナは、グレイ家に引き取られる前、たぶん五歳ごろの男が飢えを体験したことを知って驚く(ここで、読者はグレイがアナに再三食べろ、食べなくてはだめだと執拗に強要していたわけに思い当たる)。父兄席には継父のレイも来ており、式後、アナはいやおうなく、グレイを義父に紹介する羽目に陥らされる。釣りの趣味を持つ父に、釣りの話題でグレイはうまく取り入り、交際許可のお墨付きをもらってしまう。
大天幕の下でにぎやかに催される卒業パーティー、グレイはアナをロッカー室へと導き、半ば強要的に主従契約の応諾を勝ち取る。

ポートランドに引っ越し直前のアナの元に、高級ロゼシャンパンを手土産にグレイが訪れる。グラスをパッキングしてしまったアナは、ティーカップにピンクのシャンパンを注ぎ、男の祝杯を受ける。ほろ酔い加減で、男は契約のプレー項目をひとつひとつチェックしていき、アナに諾否を確かめる。アナがアナルセックスを拒否すると、男はとてもいいから、試してみる価値はあると勧める。アナが誰と体験したのか問い詰めると、想像していた男ではなく、性虐待された母の女友達、アナが通称ミセス・ロビンソン(映画卒業<1967年、原作はチャールズ・ウェッブによる同名小説>の主人公の男子学生<ダスティン・ホフマン>が性的誘惑に負けたロビンソン夫人をもじっている)があがり、アナは嫉妬する。Butt Plugs、肛門詰め、性具の卵やビーズも埋め込まれたと知って、嫌悪を催す。

ボンデージはサスペンション、つるしを除いてオーケー、しかし痛みに対して恐怖感を抱いていたアナは、鞭や竹刀の項目に来ると、拒絶する。幼児期に体罰を受けたことがないアナにとって、男から痛いお仕置きを受けるのは恐怖だった。男は少しずつ慣らしていこうと答え、卒業祝いにアナに真紅のアウディを贈る。先にトーマス・ハーディの「ダーバヴィル家のテス」の1891年刊高級初版本をプレゼントされたときも、困惑したアナだけに、高価すぎるプレゼントには内心屈辱と怒りを覚える。しかし、グレイはアナのがたの来たビートル中古車が事故を起こさないか心配だとのたまい、継父の許可ももらったと言いつくろって、アナを渋々承諾させる。

シャンパンの後で、アナは自室で卒業祝いと称する性交のごほうびをもらう。今回は、奴隷のはずのアナに主導権を握らせてくれ、フェラチオから始まって女性上位でつながり、アナは初めての体験に極上の悦びを覚える。

*あますところ12章なったが、半分以上読了した時点で、ハードなSM描写はなく、どちらかというと、恋愛小説の乗り、男のほうに少し変態嗜好があるものの、お互い好き合っており、その心情が(とくにヒロインの。アナの目線で書かれていることもある)細かく綴られており、そういう意味では純愛路線も含んでいて、全世界の女性を熱狂させた理由がわかる。男のほうもこれまでになくおぼこ女子大生に執着しており、それが正常なセックスを初めて体験したことにも顕われている。

つまり五十の陰影を持つ複雑な性格の男性で、過去のトラウマから正常な性交で満足しなくなってしまったという、女性の母性本能をくすぐる人物造型。今回で四度目の交わりだが、サドめいた所作といえば、ネクタイで縛ったことくらいである。アイス程度は、場数を踏んだ人なら、正常者でもやっているのでは。というわけで、ここまではハードコアでもなんでもない、性描写の多い恋愛小説といえる。でも、故渡辺淳一の「愛の流刑地」より濡れ場は少ないし、ソフトSMタッチの恋愛小説、ということになろうか。

一億部売れたということだが、男性読者の比率はどれくらいなのだろうか、気になるところだ。興味のある殿方は、後学のためぜひ読んでみてください。英語に強い人は洋書で、そうでなければ早川書房から邦訳文庫版が上中下三巻で出ています。英語は平易で読みやすく、英語の勉強にももってこい。ぜひチャレンジしてみてください!


15章では、ティーカップでシャンパン後、女性上位でセックスと、SM気はまったくなし


514ページの半分以上、268ページまで読破!
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大ベストセラーの構造(マミーポルノ3)

2015-03-24 14:50:33 | カルチャー(祭)・アート・本
昨夜、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を九章まで読んで、なぜこの作品が世界で一億部突破の驚異的ベストセラーになったのかと、獏とわかったような気がした。

以下、まだ四分の一しか読んでないが、小説家の端くれである私の解析。

1.英語が平易で読みやすく、会話文が多い。ブロークンイングリッシュ国にも受け入れられた大きな要因だ。

2.美人女子大生(21歳)と巨大企業を取り仕切るハンサムな実業家(27歳)の主人公コンビが、魅惑的。ハーレクインロマンスではありきたりの美男美女の典型といえるが、ヒロインはお下げの清楚なヴァージン、男性主人公のほうには秘密めかした陰影、実はSM嗜好だったと従来の型にひとひねりしたところが受けた。つまり女性の中にある潜在マゾ願望を刺激したということ。翳リある美男というのは、恋愛小説の男性主人公の定型で、この場合は変態なのだから少し目を剥くが、そうなるに至った過去があるらしいことを暗示させ、男の孤独と悲愁も効果的に描写されている。
しかも、超リッチとなれば、読者は焦がれ、作中の人物にヴァーチャルラブをせずにはいられない。

3.背景が豪奢、ヘリコプターデートや、シアトルのゴージャスなペントハウスの描写など、女の憧憬を煽り立てる。巧妙に女心をくすぐる要素が一杯のファンタジー。

4.性描写もそれなりに読ませる(私はまだSMシーンに入っておらず、女子大生のアナが処女だったと知って、グレイが特例で正常な初体験を提供する場面までだが、簡潔な短文描写で畳み掛けるように展開していき、なかなか)。

5.同じ単語が頻発するが、ときたま洒落た表現、気の利いた描写があり、この部分はうまいなと、小説家の私にも思わせる玄人はだしの手腕もある。元BBC放送局員でマスコミと無縁でなかったこともあるのだろう。

6.一章分が短い。26章立てだが、各章が20ページ前後なので、長編でも疲れない。次にどうなるのかと、はらはらしながらページを繰る手が止まらなくなる要素も確かに盛り込んでいる。


*著者のE.L.ジェイムズは肥満した主婦で、イメージ的にはいまいちだが、映画化(以下予告編動画)にあたっても細かく口出しし、全面的に携わったらしい。

以下、九章までのあらすじも付記しておく。

アナは、グレイの操縦するヘリコプターで、シアトル本社ビルの屋上に着陸、ゴージャスなペントハウスに招待される。高級白ワインとチーズを振舞われながら、グレイはほろ酔い加減のアナを中世の装飾バロック調の拷問室、暗い赤の色調で統一されたSMプレーの部屋へと手招く。壁に取り付けられた巨大なクロス型の十字架や、手錠つきの革張りの椅子、革張り寝台、鞭や竹刀をはじめとするさまざまな拷問道具、処女のアナには意味不明で単なる趣味かと勘違いし、秘密めいた部屋の匂いに圧倒される。しかし、グレイは自分にSM嗜好があることを明かし、ヴァージン女子大生を愕然とさせる。

呆然となっているアナにSM主従契約を取り交わすにあたっての、書類をグレイは見せる。

男が限界を超えないSMプレーに関して、アナの肉体行為上の好悪を細かく問いただすのに、性体験がないためアナは定かに答えられず、おのずと処女であることを明かす羽目に陥らされる。グレイは驚天動地し、SM云々の前に、まずアナに正常な初体験を提供する必要があることを痛感する。グレイのたまうところのバニラセックスで、アナに異論はなく、その夜広大な天蓋付ベッドでアナは女としては最高の初体験を賜れる(いきなり最初から、オルガスムスを味わうというのが信じられないが、グレイは君は感度抜群だ、すばらしいと応じている)。

グレイ自身にとっても、女性と普通に結ばれるのは初めての体験で、また女と同じベッドで眠らない鉄則の彼にとって、アナが泥酔したとき同衾した経緯もあったことから、ルールを二度も破らせた奇特な女子大生ということになる。

すばらしい初体験を味わった後、目覚めると、広大なフロアのリビングでグレイがグランドピアノを弾いていた。バッハの変奏曲で、悲哀のこもったメロディ、グレイは悲しい曲のように少し悲しそうだった。長く繊細な指が鍵盤を叩き、六歳からの見事な腕前を披露する男にアナはうっとりする(この場面では、美男の陰影が濃く顕われ、女心をくすぐる。秘められた過去を持つグレイを暗示させる伏線だ)。



日本では早川書房から、上中下の文庫三巻で翻訳版が刊行されている。
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春を祝うお祭りホーリー、終わる

2015-03-07 14:51:29 | カルチャー(祭)・アート・本
春の収穫祭ホーリー(祭りの起源や写真はこちらのウイキをどうぞ)が昨日終わった。
しかし、私は自転車との衝突事故に遭遇して、表に出れなかったので、いつもの赤鬼、青鬼群は見られず仕舞い。当地では午後一時までの浮かれ騒ぎだが、今年も、ケミカルより自然染料、植物からとったオーガニックな染色パウダー、赤、青、黄、緑、紫、ゴールドなどとりどりの原色が飛ぶように売れたようだ。

近年、化学染料の皮膚への弊害が取りざたされている折でもあり、植物からとった色粉ならかけ合っても安心。
インド人はとかく、祭りになるとエスカレートしがちなので、どぎつい原色の粉を目一杯かけ合ったりするだけでなく、バケツの水に溶かしてざんぶと降り掛けるのである。子供たちには水鉄砲も人気。
この時期移動にあたっている外人旅行者も、バックパックもろともまっかっかになって到着する。

タイにも水掛け祭りというのがあるようだが、インドのは色つきだからやっかい、シャワーを浴びても数日は赤みや青みがとれないのである。

私はいつも、家にこもっての自衛戦。社交辞令で、額に赤いパウダーをちょこっと受けるくらいだ。映画で観ると、乙女が春を祝って天女のように舞う空中に赤や青、緑のパウダーが七彩に流れ漂って嘆息が漏れるほど美しいのに、現実は壮絶だ。
無理に頭を引きつかまれ掌一杯の色粉をなすりつけられたり、色水を容赦なくぶっかかけられる。毎年、けが人も続出する危ないお祭りだ。酒やバング(大麻)ジュースが入っているから、どうしてもエスカレートしがちなのだ。

私にとって今年のホーリーはひざは痛いし、手足は青あざだらけでちょっと冴えないが、まあこういうことでもなければ、貧乏性の自分は人生をゆっくり振り返られないので、いいチャンスを賜ったと思うしかない。

ところで、鎮痛剤と思って飲んでいた錠剤が制酸剤であることが判明、服用してすぐに眠ってしまったので、効果が定かでなかったのだが、昨夜飲んだ後しばらく起きていると、いっこうに効き目がない。おかしいと思って夫にただしたら、アンティエイシッドといわれ、唖然。二種の薬を処方されたのだが、インドの鎮痛剤は強くて副作用があるので、一種だけ飲んでいたら、そちらが鎮痛剤の副作用を減じる制酸剤だったわけ。

しかし、プラシーボ効果というのか、二日間効いてる効いてると眠りながら思い込んでいたせいか、ひざの痛みもだいぶ楽になり、このまま飲まずにすませるほうがいいかなと、鎮痛剤でかえって気持ち悪くなってしまう私は思ったりしている。

気候は暑くも寒くもなく、風があって気持ちいい。
昨夜、ベランダから仰いだ夜空には、煌々と大きな満月が瞬き、その壮麗さに感激した。
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故渡辺淳一のポルノ小説

2014-12-30 14:11:15 | カルチャー(祭)・アート・本
昨夜、本年四月に他界した渡辺淳一「愛の流(る)刑地」(幻冬舎、以下はウイキのあらすじ)を読み終えた。
最初読み始めたとき、なんだ、これはまったくのポルノじゃないかと、これまでの文芸作品とあまりに違って低俗なことに愕然とさせられたが(1997年刊の300万部突破の大ベストセラー「失楽園」は純粋な文芸ものだった)、読み進めていくうちに風景描写も出てきて、渡辺淳一らしい手腕も窺えた。

ただし、以下に一部引用したアマゾンレビューでは、かなり酷評されている。

心の動きがない。
投稿者 チョビ 投稿日 2006/7/27
形式: 単行本 Amazonで購入
性的描写はお手の物で、すごいなと思いましたが、どうしてそんなに恋におぼれるのか?(この本の場合はそうでしょう)確かに、人は恋をする生き物だし、もちろん性欲もあるでしょう、ただ、それをあまりにも前面に出し過ぎて、どうなのだろうな?と思いました。たとえば、この本を友達にプレゼントをする、自分の子供達に読ませたいか?と言われればノーだし、まあ暇つぶしに読む渡辺淳一さんのハーレクイン的なエンタテインメントと思えば、楽しく読めます。というところで下巻に突入する私はやはり暇な人なのでしょうか?

がっかりしました
投稿者 じぜる 投稿日 2006/7/26
形式: 単行本
話題作なので久しぶりに氏の作品を読んでみました。
昔の作品は登場人物の心情や背景などが美しい文体で細やかに表現されていましたが、もうそのような作品は書けなくなってしまったのですね。
美しい日本語が消え去って俗っぽい文章になってしまっていることが残念です。

一応最後まで読みましたが、内容はなんだか非常に古臭い感じがしました。
男女の性愛の違いというテーマは既に他の作家さんが10年以上も前から取り上げられており、
文学作品として満足できる作品が沢山出ています。
それらに比べてこの作品は「こんな女性がいたらいいな」という中高年男性向けのポルノ小説という印象です。
性的描写だけで心情的な面が全く書かれていないのですから。
昔、氏のファンだっただけにがっかりしました。

読む価値があるとは...
投稿者 ファビアン 投稿日 2006/6/15
形式: 単行本
日経新聞連載時に読んでいました。何ともひどい作品だと毎日苦笑していました。
ホントは☆一つもあげたくないんですけど。
設定がお粗末、描写がお粗末、登場人物の造形も氏の他作品とさほど変わらない。
何故このような不倫に陥ったのか心情の移り変わりが唐突で、感情移入が全くできない。

どう見ても取材不足だと思われる箇所が多かったことと、読み進めていくたびに矛盾点が次から次へと出てくること、伏線全て無視...などとにかく不満です。
訳の分からない造語を使う前に、きちんと取材をし、文章表現をもう少し磨いていただきたいものです。

昔はファンでしたが、、、
投稿者 不良主婦 投稿日 2006/8/31
形式: 単行本
8年程前のこと、私はファンだった渡辺先生の講演会に出かけました。
なんとその夜、私の友人は、出版関係の知人に誘われ京都ロイヤルホテルのラウンジで渡辺先生と一緒に3人で飲んだと言うではありませんか!
「どうして私も誘ってくれなかったのよー?!」と悔しがる私に、彼女は「どこがエエのん?最低。全くただのエロ親爺やったえ!

そして数年後、私は「失楽園」にガッカリして以来、友人の言葉は正しかったと思うようになりました。
にも関らず、今回また本屋さんに山積みされてるのを見て本書を衝動買いしてしまいました。
結果はやっぱり没。
ひどい駄作。プロの作品とは思えません。
渡辺先生、色ボケ老人状態では?
「お爺さん、お爺さん、冬香さんみたいに都合の良い人妻、降って湧いたりしませんよ〜。」と口に出して言いたくなります。

本書は読めば読むほど、現実味に欠ける稚拙な自慢話を、ダラダラ延々と聞かされているがごとく、ゲンナ〜リしてきます。
フラットで実につまらない。
官能小説としても価値は著しく低いと思います。

いやだあ・・・。
投稿者 マリー・テレーズ 投稿日 2009/7/16
形式: 単行本
美味しいものも食べられず、旅行も箱根の一回きりで、落ちぶれ作家にひたすら奉仕させられ挙句の果てに首絞められて殺されて、こんな恋愛、いやだあ・・・。



下巻のほうが、読み物としては面白そうで、ネットで調べたところによると、五十代後半の売れない作家主人公が深い関係になった人妻のヒロインを、烈しい性愛中誤って殺してしまうという設定らしい。
上巻で、エクスタシーのさなか女主人公が殺してと叫び、首に手をかけるシーンが出てくるが、それがエスカレートして扼殺にいたってしまうということらしい。
もっとも、殺意はなかったのだから、裁判でどう裁かれるかだ。

男と女の会話と、濃厚な性愛シーンがほとんどの上巻より、意外な展開で小説としてはスリリングになりそうで、次回帰国時ぜひとも買い求めたいと思っている。

同作は、2004年11月から2006年1月までから日本経済新聞に連載され、濃密な性描写が話題を呼んだ長編で(略称は「愛ルケ(あいるけ)」、お堅い経済新聞にこんなポルノが連載されたこと事態が驚きだが、1995年の失楽園大ヒットの前例があったこともあろう)、映画化やテレビ化もされているから、すでにお読みの方、映画やドラマをご覧になった方も多いだろう。

とにかく、故人が73歳のときに書いた小説であることを思えば、感服する部分もなきにしもあらず。

熟年男女の純愛不倫、エロスの極致を極めた作品で一世を風靡した大御所作家は、晩年不能になったことも告白しているが、それでも、恋多き作家の名にたがわず死ぬまで恋愛をし、性愛抜きでも女性をやさしく抱擁し手練手管で行かせることは可能と豪語、実体験派として性遍歴を作品に活かしたリアリティ作家だった。
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ベストセラー小説の書評

2014-12-27 19:30:03 | カルチャー(祭)・アート・本
昨夜、2009年小学館文庫大賞をとって単行本化、翌年本屋大賞二位に輝いたという「神様のカルテ」(夏川草介、以下ウイキの筋書き)を読み終えた。
地域医療に携わる現役の三十代の医師が書いたとかで、身内に医者の少なくない私は興味を持って先の帰国時購入したのだ。

その前に、インドでベストセラー書のチェックをして、五十万部突破したことや映画化されたことなどのこの小説についての情報はある程度得ていた。

感想は、三十代という若さにしては古語のボキャブラリーが豊富で、それもそのはず著者は夏目漱石や島崎藤村の愛読者であるらしい。
作中にも、著者自身をモデルにしたと思われる医師が登場、こむずかしい御託を述べる、古臭い変わり者の男として描かれる。

読後感は面白かったというのが正直な感想だが、鼻につく作為も目立った。
ユーモラスなタッチもやりすぎると、逆効果だ。
それと、テレビでいえば、やらせになるのか、いかにも作為ったらしい演出が興ざめだ。
こうすれば、読者が感動してという、計算が見えすぎるのだ。

しかし、それらの欠点を差し引けば、わりによくできた物語だと思う。

大学の医局で勤務する医者と、地域医療に携わる医者の違いとか、現場医療の実態とか、学ばされることが多かった。
人の生き死にに対面している医者でないと書けない目線だ。
そういう意味からも、書く必要があった物語だろう。

メッセージは確実に伝わってくる。
作為的でなく、もう少しナチュラルに流れのままにもっていったほうがなおよかったが、三十代の作者としては上出来だ。
言葉遣いも確かだ。

シリーズ編が出ているらしいけど、なにがなんでもというのではないけど、気が向いたら続編にも手を伸ばしてみてもいいかとの思いもある。

読んでも損はない小説、それなりの感動は与えてくれるというのが、醒めた作家としての私の見解だ。

*最後に、同業者によるアマゾン評を掲げておこう。

現実の医療現場から
投稿者 messer-g 投稿日 2009/11/23
形式: 単行本
なかなか良かった。
読後に爽やかさが残った。
私自身、主人公と同様の境遇にあって、この小説を客観視できない。
むしろ、あっと言う間に主人公に成り代わってしまった。

しかも本書は、現実の医療現場から、医師の目線で書かれた小説として、色々な問題が散りばめられている。
地方の地域医療問題。
救急医療問題。
研修医問題。
終末期医療問題。
癌告知の問題。
大学病院・高度医療とは何なのか。
医療現場の内実を知っているほどに、主人公の葛藤はひしひしと伝わってくる。

その葛藤と闘いながら、それでも真面目に生きていこうとする主人公にそれこそ人生のヒントを得たような感慨である。

著者は主人公そのものだと思うが、文語調の言い回しや文体が見事にキャラクターに融合している辺りは、大変な読書家と洞察する。
小説に何を求めるのかで、本作品の評価は変わってくるのかも知れないが、
医療現場のリアリティを理解している読者であるほど、主人公の立ち居振る舞いに敬服せざるを得ないだろう。

次回作を期待せずにはいられない。
でも、著者が本当の臨床家であれば、次回作を期待してはいけないかも知れない(笑)。
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一時帰国中読んだ本の寸評

2014-12-23 15:47:16 | カルチャー(祭)・アート・本
先月末から今月中旬過ぎまで日本に滞在し、忙事を縫って読んだ本の寸評を以下に掲げておきたい。

「回想 開高健」(谷沢永一、新潮社)
友人から借りた1992年発行の古い本。作家開高健の原点、共に同人誌・えんぴつに携わった時代からの熱い交友を綴った回想記。才能の塊の青年に著者は惚れ込み、言いなりに尽くし、母親のような包容力で支える(自宅に招くときは妻が美食家の開高の口に合わせるため、前日から材料を仕込み、腕を振るった。大盤振る舞いのご馳走に食客である開高の豪快な食べっぷりの描写が光る)。弱冠二十歳のとき、開高は同人仲間の一人だった七歳年上の詩人牧羊子とできちゃった婚、悪妻と娘から逃げるために旅を繰り返し、それが比類なきノンフィクション文学へと昇華された。不如意の環境が天才作家を作ったといえなくもない。

「ナラタージュ」(島本理生、角川文庫)
著者が22歳のとき書いた、23万部のベストセラーになった恋愛小説(2005年)。綿矢りさ、金原ひとみよりずっと達者で読ませる筆力(2004年の芥川賞では同時ノミネートされていたが、前者二人に明け渡し落選)、天才少女作家ともてはやされたのもうなずける(野間文芸新人賞も最年少で受賞)。女子高生と教師の恋がテーマだが、風景描写と心理描写のオーバーラップが巧みで、叙情豊かで繊細なタッチ、胸を打つ。小娘と侮れない、本格恋愛もの。

「乳と卵」(文春文庫、川上未映子)
芥川賞作品。関西弁告白体スタイルで斬新、内容はそれなりに読ませ、面白い。まさしく小説は何でもあり。

「悪い男に愛されたい」(山口洋子、集英社文庫)
さすが、銀座の有名クラブ「姫」のマダムという前歴だけあって、男と女に関しては一家言持っている。ジュリーの回想も出てきて、サンドイッチを食べるとき、動物的にならず、ロボットがエネルギーを補給するようにすっと胃に降りた、とあるのが興味深かった。

「八朔の雪ーみをつくし料理帖」(高田郁、ハルキ文庫)
我が宿の元常連さんで博覧強記、図書館の本は読みつくしたというYさんにプレゼントされた。拙著が少し難解で文章が古臭いのをいましめてのことで、売れる本とはかくもわかりやすく面白いとの警鐘を発する意図があったようだ。それはさておき、文句なしに面白かった。時代小説なのにやたらと体言止めが多いのが気になったが、筆力は確か、最後がぴたりと決まって、さすがにうまい。伊達のベストセラーではない。

「野心と美貌」(林真理子、講談社文庫)
他愛ない美容エッセイ、時間つぶしに読めるのがよい。面白くて退屈しない。肩のこらない女流エッセイでは林真理子の右に出る者なし。

「晴美と寂聴のすべて2」(瀬戸内寂聴、集英社文庫)
著者のエッセイなどからの引用文がすでに読んだものが多かったが、でなければ、興味深い書。瀬戸内文学は主なものは目を通しているので、重複することが多い。化け物と恐れられる旺盛な筆力、宗教家としての行動力、並みのものは太刀打ちできない鬼才、老いてなお精力的に使命を果たし続ける怪物作家の面目躍如たるところ。

「妖しい風景」(高樹のぶ子、講談社文庫)
高樹のぶ子はやはり、小説に限る。創作のヒントを探れるかと手を伸ばしたが、外れ、あまり面白くなかった。文章は天下一品なのだが、内容がいまいち退屈。中盤からのヨーロッパの旅行記なんて、いまさらという感じで読みたくない代物。

「女系の総督」(藤田宜永、講談社)
恋愛小説の大家が切り開いた新境地の、家族小説。いまどきの核家族化した日本で、濃密なつながりを持った女系の大家族を描くファミリーファンタジー。どちらかといえば、インドのジョイントファミリーに通ずるような濃い因縁、親族同士の血筋、一筋縄ではいかない女たちに囲まれてひょうひょうとアマゾネスを渡る総督、その名も崇徳(むねのり、音読みのそうとくも通称)、ともすれば深刻になりがちな題材を、ユーモアとウイットあふれた筆が救っている。

「涅槃ホテル」(李耶シャンカール、ブイツーソリューション)
自著を改めて読み返してみた。三十台のとき書いた作品で稚拙さは否めないが、作品に正直に向かい合った体当たりの恋愛自伝で胸を打つ。感性のきらめき、青春を凝結した珠玉の私小説(自画自賛で恐縮!)。
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爆竹祭

2014-10-23 18:03:41 | カルチャー(祭)・アート・本
本日は、旧正月祭ディワリー。
軒下や門に、ろうそくや素焼き小皿の灯油ランプをともす光のお祭りだが、花火を打ち上げるのはまだしも、何連発もの爆竹を破裂させることでも悪名高い過激なお祭りだ。

そろそろ随所でかんしゃく玉が散発的に破裂している。

今夜は怖くて浜に出れそうにない。

耳をつんざく爆竹音、目の前に飛んできたりするので、危なくて歩けない。

動物、病人の心臓にはよくないお祭りだ。

エコ志向でサイレントを提唱する声もあるが、市街戦まがいの町中にパンパン破裂する威嚇音はそう簡単に一掃されそうもない。

夜は大人しく、うちにこもっていよう。

ところで、帰国が一週間ほど延びた。

編集作業が意図した期日に終わりそうにもないので、延期したのだ。

来月がいよいよ山場だが、妥協したくないので、大事をとってぎりぎりまで延ばすことにした。

もちろん早めに終われば、それに越したことはないが。

すでに友人との間で飲み会のプランが進められている折でもあり、早く終わらせて、久々の日本で知人友人と旧交を温め、忘年会としゃれ込みたい。
本の宣伝にも忙しく飛び回ることになるだろう。

もう今から、いろいろデートの約束、取り付けているところです。
十二月半ばまでの三週間余の滞在中、ほぼ毎日のごとく人と会う手はず。
京都にも紅葉を愛でに立ち寄る。
奈良在住のわが安宿の元常連さんとは今回は紅葉観光がてら、奈良でお会いするのもいいな。
京都に比べ、こじんまりとした町で落ち着く。

年に一度の帰国なので、好機を利用してなるたけたくさんの方にお会いしたい。


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旧正月祭ディワリー前

2014-10-22 16:08:35 | カルチャー(祭)・アート・本
明日は、花火を打ち上げたり、かんしゃく玉を破裂させて祝う過激な光のお祭り、ディワリー。
それにしても、もうインド暦ではお正月なんて、月日の流れの速さを感じる。

今年は私にとって、達成の年になりそうだ。

まだ十ヶ月だが、よく書いた。

12月迎える還暦前に小説家として立つ志のようなものもできた。

背水の陣、後ろの船を焼き払ったので、もう戻れない。

険しい道のりになることはいうまでもない。

でも、死ぬ前後悔しなくてすむように、一番なりたかった職業である小説家になると決めたわけである。

その私の心構えの証である第一弾として、来月初の小説集が刊行される。
真骨頂でもある恋愛小説だ。
若い頃書いた作品だが、手を入れて完成作へと昇華させた。

インドを舞台にした世紀のラブストーリー、著者のインド移住の直接の動機となった恋愛自伝小説をお見逃しなく!

息もつかせぬドラマの連続で、読み甲斐のある自信作です。
発刊の折には、ぜひご購読くださいますように!

「涅槃ホテル」(NIRVANA HOTEL)
(李耶シャンカール、ブイツーソリューション、1200円+税)
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