幸喜幸齢 生きがい 日記!       

八十路の青春賦 人生の黄金期を自分らしく あるがままに生きる幸喜幸齢者 感謝と幸せの生きがい日記 頑爺/肇&K

夏目漱石と箕面の森

2020年08月16日 | 夏・喜寿の青春賦 日記!

8月16日(日)27/37℃ 

今日もmy別ブログ「箕面の森の小さなできごと」からの再掲とし森に浸る。

夏目漱石と箕面の森!

 みつけた!  ここだ・・!

  おおよその目星をつけて探し回り、やっと見つけたので思わず叫んでしまいました。  回りにはイチイ、イロハモミジ、ヤマザクラ、アラカシ、スギなどの大木が林立していて天を覆い、空の青さがかすかに見えるぐらいです。  少し先には箕面山・瀧安寺の本道(弁財天)と観音堂が見えますから、その北側山手にあたります。  いつも歩いている山道もすぐ上にあり、何気なく通っていた所なので少し驚きました。

 先日、知人から「読んでいた小説の中に箕面の事が記載されている所があったよ」と聞かされ、私も読んで見ました。

夏目漱石の <彼岸過迄>(新潮文庫) ですが、これは明治45年1月1日から4月29日まで、朝日新聞に連載されたものとのことです。  そこには・・・

「・・・僕は昨日、京都から大阪にきました。 今日は、朝日新聞にいる友人を尋ねたら、その友人が箕面という紅葉の名所へ案内して呉れました。  時節が時節ですから、紅葉は無論見られませんでしたが、渓流があって、 山があって、山の行き当たりに滝があって大変好い所でした。 

友人は僕を休ませる為に社の倶楽部とかいう二階建ての建物へ案内しました。 其の所へ這って入って見ると、幅の広い長い土間が竪に家に間口を貫いていました。 そうしてこれがことごとく敷瓦で敷きつめられている模様が何だか支那の御寺へでも行ったような沈んだ心持を僕に与えました。  この家は何でも誰かが始めて別荘にこしらえたのを朝日新聞で買い取って倶楽部用にしたのだと聞きましたが、よし別荘にせよ瓦を畳んで出来ているこの広々とした土間は何の為でしょう。  僕はあまり妙だから友人に尋ねてみました。  ところが友人は知らんと云いました。  もっともこれはどうでも構わない事です・・」 と。

  これは小説の一部ですが、その書評によると・・ 「・・主人公に自分自身を重ね合わせた漱石の自己との血みどろの闘いはこれから始まる・・」 とあり、どうやら箕面訪問も漱石自身の事のようですね。

  そんな訳で、今日はその 「朝日倶楽部」 があったと言う場所を知りたくて、箕面駅前の 「箕面市立郷土資料館」を訪ねました。

 係りの方に趣旨をお話すると3人がかりで調べてくださいましたが・・ 分かりませんね?  知りません・・ どこかな?  そのうち・・  聞いてみますから・・ と、電話で何処かへ聞いてくれましたがそれでも分からない?   どの辺だろうか?

  その内、係りのお一人から一枚の資料を出していただきました。  そこには次のような表題が書かれていました。 「大阪府・昭和7年・大阪府史跡、名勝、天然記念物調査報告(2) 箕面山、山内 茶店変遷図」 なるものでした。 今から80年前の調査資料です。そして、その中にやっとその名称を見つけました・・ 「明治34年4月許可・・」と、個人名があり、その後 「朝日新聞社使用地、旧名・秋錦楼、現・朝日倶楽部・・・」 とありました。

 私は喜び勇んでその場所を聞きましたが、それがどこの? ここの? と さっぱり分からず、そこを特定できるような詳細な地図でなく、係りの方も首をひねるばかりです??

 そこで私はそれをコピーしていただき、その資料をもとにその内ゆっくりと自分で探してみようと思い、御礼を言って森へ向かいました。

  今日の予定は、瀧安寺の手前にある紅葉橋から化石谷を登り、望海の森を経、才が原林道へ抜けるつもりで滝道に入りました。  先月と違って森の緑が少し濃くなり、真緑と言うそうですが・・  実に爽やかな風の流れと新緑の薫りを楽しみながら歩が進みます。

 横を流れる箕面渓流にはカワムツが沢山泳いでいます・・ 見ると、それを狙って川面をじっとにらんで置物のように動かないアオサギの姿が見えます。  上空の木々の間を鳥たちがさえずりまわっています。  昆虫館の前には子供たちがいつになく沢山います。  どうやら先生も一緒のようで課外活動のようです。

  私は紅葉橋の袂にあるベンチで一休みをしながら、先程の資料を取り出して眺めていました・・  その時、ふっと何かを感じるものがあり・・ 直感のような・・ あの辺ではないかな・・?  資料には橋本亭、梅屋敷、加古川・・の文字・・

  私は予定を変更して、すぐ前の瀧安寺霊園から細い一本の小道を見つけて上って行きました。  勿論初めての道ですが荒れていて歩きにくい・・ 少しして広い台地に出ましたが、ここではなさそうです?

 更に上に下にあちこち歩き回り・・ 森中を歩き回っていると、やがて見慣れたいつもの山沿い道にでました・・ そして、その下に開けた跡地らしき所が目に入ったのです。

  資料を見ながら周りの環境と位置、それに下方に楓橋がある・・ いつも何気なく見ていたのにここが探していた所とは・・?   早速下りて見ると建物の土台があり、いかにもかつての別荘風です・・  ここだ!

  手入れをされなくなった鬱蒼とした森の中に、かつての面影をほうふつさせるものを感じました。  今は誰一人として分からないような、忘れられたかつての「朝日倶楽部」 明治時代の100年以上前に、この地でかの夏目漱石が一時を過ごした事を思いながら・・ 私は目を閉じてタイムスリップしながら思いを馳せ、しばし森浸りを楽しみました。

  やがてそこから石段を下り、小川にかかる小橋を渡り、更に枯葉で埋まったかつての小道を歩くと滝道にでてきました・・ こちらが入り口で正門だったようです。

 振り返って見上げるとそんなに距離はなく、昔に建物があった頃は、滝道からよく見えたのではないかと思われます。

  道下の楓橋の袂には、森の中の山本珈琲館と旧料亭・加古川が見え、資料とも完全に符合しましたよ。 今日は、箕面の森のなかの小さな発見をして、一人心がウキウキした一日でした。 

「若葉して手のひらほどの山の寺」(夏目漱石) ワガハイはマンゾクである? 

しかし吾輩は疲れたでござる・・トホホ!

コメント
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