日々想うこと

毎日の生活の中のちょっとした出来事や感じたことを気ままに書いています。

大切な本

2005-10-13 | 本棚
大阪からの帰り、新幹線の通路向かいの座席に、
明らかにインド帰りと分かる若い男の子が坐った。
旅でくたびれた布バックの模様とゴム草履からの推察―。
髭を伸ばして伸びた前髪をヘアバンド(っていうのかな?)で上げて、無骨な手には一冊の本。
何を読んでいるんだろう、と思ってチラリと見ると、そこには「ランボー詩集」。
「おおっ」と思わず心の中で声を上げた。
いるんだ、今でも、こういう男の子。

また別のあるとき、やはり新幹線の隣の席のまだ若いスーツ姿の男性が取り出した文庫本―それはアンナ・カレーニナだった。

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私にとってなくてはならなかった、とても大切な一冊。
リルケの「マルテの手記」
高校2年生の時に出会った本だ。
私が持っていたのは新潮文庫の大山定一訳。
下の写真を入れたのは、「マルテ」の中に出てくるゴブラン織りが表紙になっていたから。

後にパリに行った時に、クリュニー美術館にこのゴブラン織りに会いに行った。
マルテが、リルケがその前に立っていたであろう、そこに私も立っていた。

それから何度この本を読み返したことだろう。
なんとリルケは事象の深くを見つめなければならなかったことだろう。

そして己が無力さを噛みしめなければならないような時、
どれほどの慰めをマルテから与えられたことだろう。


マルテ・ラウリス・ブリッゲの手記

未知谷

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