サブプライムローン問題に苦悩する欧米の金融機関が巨額損失を出したと聞くと、いけないと思いつつ、つい顔がゆるむ。
今年1~3月だけでスイスのUBSが1兆9500億円、英HSBCが6000億円。米シティグループは昨年から積もり積もって4兆6000億円、米メリルリンチが計3兆3000億円。損失は今後もっと膨らむだろう。
わが三菱UFJ、みずほ、三井住友の3大銀行はどうか。無傷ではないが、傷の程度は浅い。そこで思う。今こそ、国際金融の世界で、かつての存在感を取り戻すために奮起する時なのだ、と。
シティは従業員約9000人を削減し、約41兆円相当の事業や投資案件を切り売りする。他も軒並みスリム化に走るはずだ。優れた人材を引き受け、引き抜き、売りに出てきたものは手に入れ、あるいは買いたたく。ライバルが後始末に追われているうちに、有望な事業や地域への投資・融資を進めればいい。
バブル経済を背景に「邦銀脅威論」が起きたのは約20年前。老け込むには早い。3大銀行に総額6兆円を超える公的資金を投入して助けてあげたのも、「日はまた昇る」という期待と「国民のため、もっと頑張れ」との激励を込めたものだった。
苦境の欧米組に代わって存在感を増すことは、世界の金融安定にもつながる。海外でがっぽり稼いで、消費税1%分の2・5兆円くらいの法人税を毎年納めてくれたら、国の財政は助かる。そして、国内顧客のサービス向上にも本気で取り組んでほしい。
やってくれますよね?(編集局)
毎日新聞 2008年5月16日 東京朝刊