ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

ミネルヴィニ三部作

2021-12-31 18:00:00 | トレンド・フォロー






去年買ったまま積読になっていたミネルヴィニの「Mindset Secrets for Winning」をようやく読み終えることが出来た。そのうち翻訳も出るだろうが、本人もtrilogyと言っているので三部作が完成したということになるようであるが、これで彼の投資に関する考えの総てとは言えないにしても、基本的な概要のアウトラインが明確になったとは言えるだろう。ようやくにして、これで彼の投資システムというものの全体像が明確になった訳である。

これまで多くの投資本を読んできた経験から言うと、世に傑出した投資家は数多く存在しているが、傑出した投資家でありながらも投資について言語化する能力においても傑出した人間というのは稀有のように思われる。例えば、バフェットなどもいずれ投資本を書きたいと再三発言していたが、この期に及んでも果たされずにいるところを見ると、この事実はむしろ彼の賢明さを表すものと言えよう。つまり、バフェットは自らの投資法について、自身言語化する能力がないことをよく知っているのである。私見ではミネルヴィニはその稀有な人間のうちの一人である。

そのことは、例えば”新高値”系の手法について書かれた日本人の手になる著作が幾つかあるが、それらとこれらのミネルヴィニの翻訳された二冊(なお「成長株投資の神」はお勧めしない。はっきり言って、これは名声に寄り掛かっただけの売らんかな本。)を読み比べてみれば、その内容の質と量、強度と精度の違いは一”読”瞭然で、まあ格が違うといった塩梅である。

これまでにも述べてきたが、投資と言うのはビジネスであるので、結局最後には総合的なマネージメント能力がものを言うことになる。手法というのは投資というビジネスの一要素でしかない。従って、世に氾濫しているほとんどの投資本の手法至上主義的な内容、という言い方が拙ければ手法一辺倒の内容は実にミスリーディングであるとも言える。というより、むしろ害を及ぼしているとさえ言った方が良いのかも知れないとも思う。尤も、出版もまたビジネスな訳で、需要と供給の法則に支配されることは言うまでもない。勢い売れ筋の本ばかりが量産されることにもなるので、当たり前の話であるが、出版社にとって良い本とは売れる本のことで、必ずしも内容の良い本のことを指すとは限らない。それほど手法本の需要が旺盛とも言えるが、これはその背後に膨大なノービスと”手法ジプシー”の群れの存在を示してもいるとも言えよう。この事実から考えると、ミネルヴィニのこの三部作最後の本は題名が示す如く、マインドマネージメントに関する内容なので、恐らく需要はさほどあるまいとも思われる。そう考えると、或いは翻訳が見送られる可能性も大いに考えられるが、パンローリングには英断(?)を期待したいところである。

結局、繰り返しになるが、投資本に求むべきは手法云々よりも、それが大事でないとは言わないが、むしろマネージメントに関するノウハウの方が遥かに重要で、私見ではこのミネルヴィニの三部作は、それが包括的明晰に書かれている稀有な著作であることはいくら強調してもし過ぎることはないと思う。ネットでの評判を見ると、その圧倒的な成績もあって、ミネルヴィ二はその手法ばかりが注目されているようだが、その精髄はむしろマネージメント・ノウハウの方にあると、ここで声を大にして言っておきたい。従って、この意味合いが判っている人、或いは”聖杯”とは実は手法以外の別のところにあるのではないかと薄々感付き出している人には強くお勧めしたいと思う次第である。


なお、ミネルヴィ二はツイッターでも頻繁につぶやいているが、かなり重要な時局的なつぶやきもあって、参考になることが多いことも申し添えてこう。

Mark Minervini@markminervini

翻訳版

ミネルヴィニ先生の米国株

また、2021年はコンペにも参加していて、+334.8%とのことである。いやはや相も変わらず見事なパフォーマンス!

2021 U.S. Investing Championship.