“世紀末”と表現すると、何かこの世の終わりか、世界の滅亡かと言ったどちらかと言うと“退廃的”なイメージが強いかもしれません。
つい10年ほど前に世紀末がありました、西暦2000年に至る以前、つまり20世紀末ですが、今回考えたいのはそれよりもまだ1世紀以前、1900年に至る19世紀末です。
19世紀末とは、これまで概観してきましたように、産業革命が一段落した後、『アーツ&クラフツ運動(1850-1914 Arts and Crafts Movement)』、『アール・ヌーヴォー(1880-1910 Art Nouveau)』といった近代建築運動・芸術運動が全盛を迎え、建築や絵画、日用品など幅広い分野に対して、建築家、芸術家たちが理想的なライフスタイルを確立しようと活発に創作活動をしていた時期です。
『アーツ&クラフツ運動(1850-1914 Arts and Crafts Movement)』について
『アール・ヌーヴォー(1880-1910 Art Nouveau)』について
そもそもなぜ、それらの運動が起こったかというのは、実のところ、冒頭で申し上げましたように世紀末が“退廃的”だったのではないかと思います。
つまり、古来より長らく続いてきた伝統に従い物を製造し続けたところで、個人の自由の意識が拡大し、活動範囲、生活範囲、生活様式が急激に変化し始めていった社会状況に対応できるはずがなかったのではなかろうかという事です。
いわば、退廃的だった世の中を何とか改善しようという動きが起こったと言えると思います。
そして、ヨーロッパでは、当事折りよく万博博覧会が開催される機会もあったパリとバルセロナに建築家や芸術家が集まり活動を始めるようになりました。
写真はバルセロナにある『4 Gats(Quattro Gatsクアットロガッツ)』というレストラン・バーなのですが当時ピカソやダリたちが集っては、芸術だけでなく、思想や社会などいろんな分野に関しての議論をかわしていたそうです。
現在でも非常に人気のあるレストランで、夜はしょっちゅう満席になるようで、事前に予約をするのが妥当のようです。
このレストランの内装は、 『モデルニスモ(Modernismo)』 時代に、ガウディ同様に活躍した建築家ジョセップ・プッチ・カダファルク(1867-1956 Josep Puig I Cadafalch)が設計しました。
『モデルニスモ(Modernismo)』について
プッチは多数の建築物を設計しましたが、現在それらの作品を目にすると、大胆に曲線を使い華やかさを感じさせるガウディとは違い、どちらかというと直線で構成され、最終的に仕上がりが地味な作品が多く、その事が、プッチがガウディほど知名度を持つにいたらなかった理由のひとつと言えるかもしれません。