モダンデザイン・デザイナーズ家具・名作家具を考える。

世の中のすべての製品には歴史があり、現在に至ります。
製品の歴史、変遷、デザインを辿りたいと思います。

アール・ヌーヴォー(近代建築運動・芸術運動-2)

2013年08月05日 | 歴史

産業革命後、19世紀初頭に至る間、ヨーロッパでは、古代のモチーフを使う『リバイバル様式』、あるいはそれらを組み合わせる『折衷様式』により各地に建物が建てられましたが、社会は、大衆が平等を求め、個人の生活の質の向上が追及され始めました。
『リバイバル様式』、『折衷様式』 について

運動の先駆けとし、イギリスで『アーツ&クラフツ運動(1850-1914 Arts and Crafts Movement)』が始まり、運動は海を越え、ヨーロッパ大陸に影響を与えました。
そして、大陸の各地では、“新しい時代に合った新しいスタイルの創造”をモットーとする『アール・ヌーヴォー(1880-1910 Art Nouveau 新しい芸術)』が誕生しました。
『アーツ&クラフツ運動(1850-1914 Arts and Crafts Movement)』 について

チューリップ アール・ヌーヴォー『アーツ&クラフツ運動』が、機械生産を否定し、中世ゴシック時代の手工芸を理想としたのに対し、『アール・ヌーヴォー』は、機械を否定せず、機械生産に適合した上で新しい美の創造を目指した事、そして過去の歴史的様式から脱却し、時代にあった新しい造形、新しい様式の創造を目指しました。

運動は、建築、室内装飾、家具、絵画、版画、広告、ポスター、雑誌、日用品など広範囲に渡って行われ、芸術家はそれぞれ自身の専門は元より、専門外の分野においても幅広く活動をしました。

そして、そのように各人が広範囲に活動を行う事が出来た事自体が、当時の社会において大衆の自由、平等が尊重し始められていた実証にもなります。

 

エミール・ガレ アール・ヌーヴォー『アール・ヌーヴォー』は、まずベルギーで始まり、フランスに影響を与えます。
その後、ヨーロッパの各国が互いに影響を与え合い、その風土や風習に応じた各国独自のスタイルを確立していきます。

しかし、『アール・ヌーヴォー』にはそもそも装飾性が多分に備わっている事、そして、とりわけ『後期アール・ヌーヴォー』では構造を無視し個人の趣向で限りなく自由にデザインされた事などが原因で、機械による大量生産には向かなくなりました。
しかも、その結果、低価格で製造できず、最終的には富裕層が手にする高価な製品を作る事にもなり、1900年を頂点に、急激に衰退していきました。

まさにそれは世紀末、ヨーロッパ各地でほんの一瞬開花した可憐な花のように感じます。


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