ヴィクトール・オルタ(1861-1947 Victor Horta)は、1861年にベルギーで生まれました。 学生時代は芸術学校でデザインや建築を学びました。
その後、一時パリに住みますが、父の死を機にベルギーに帰郷しました。
左はユーロ加盟前のベルギーの紙幣ですが、当時の紙幣にオルタの肖像画が描かれていました。
古典主義建築家のアルフォンス・バラの設計事務所で助手として採用され、産業革命後の新建築材料、鉄とガラスで構成される 『ラーケン王室温室(1880 Palais de Laeken)』 設計に携わった経験は、その後のオルタの建築設計の方向性を明確にします。
左はラーケン王室温室のドーム上部の写真ですが、王室の冠が最高部に取り付けられているのが象徴的です。
30代の頃、アール・ヌーヴォーのデザインに触れる機会があり、衝撃を受けます。
後に手がける住宅設計は各部にアール・ヌーヴォーの特徴である曲線によるデザインを多用します。
又、オルタの住宅作品の多くで演出される鉄の柱や梁で曲線部材を構成し、大きなガラス窓で光を取り入れる空間は、ラーケン温室設計に携わった経験が土台になっています。
写真は、 『タッセル邸(1892 L Hotel Tassel)』 の内装です。
オルタの建築作品の最大の特徴の一つとも言える細い鉄材による架構、又、緻密な装飾は、近代に入り鉄が構造材として使用された恩恵を大いに享受した結果とも言えると思います。
オルタはベルギーの首都ブリュッセルにアール・ヌーヴォー様式の住宅を沢山設計しましたが、写真の中央は、上の内装写真と同様に 『タッセル邸』 です。
さらに近辺に建つ 『オルタ自邸(1898 Maison de Victor Horta)』 を含め、ブリュッセルにあるオルタ設計の住宅は、 『ヴィクトール・オルタの都市型住宅群』 として、世界遺産に登録されています。
『都市型住宅』 とは、都市に立地する特性から、敷地面積は大きくはなく、又、間口に対して奥行きが深く、建物は3階建て程度の規模で、日本の長屋に似た形式の住宅を示します。
オルタがその後のベルギー建築界に与えた影響は絶大で、その事は、ベルギーフランに肖像画が使われた事からも容易に想像がつくかと思います。
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