モダンデザイン・デザイナーズ家具・名作家具を考える。

世の中のすべての製品には歴史があり、現在に至ります。
製品の歴史、変遷、デザインを辿りたいと思います。

アート(芸術)とクラフト(工芸)の歴史

2013年08月02日 | 建築・芸術

古代エジプト、ギリシャ、ローマ時代には、“クラフトマン”、つまり、手工芸技術を持ち、手作業で製品を製作する人たちが存在しました。
一方、“アーティスト”、つまり自身の手を動かして製作行為はせず、デザインや意匠に特化する立場の人たちは明確には存在しませんでした。
クラフトマンが何らかの物を製作するには、その為の下絵や構想図が必要になりますが、今日で言うところの設計図や意匠図のような明確なものではなかったと考えられています。

中世になると宗教色が強まりました。
ゴシックの大聖堂のように大規模な建築物が各地に次々に建てられた事から分かるように、クラフトマンが活発に活躍していた時代といえます。
そして、クラフトマンは、親方、職人、従弟という形でチームワークが育成され、そして、親方が、自身の頭の中で製作物を計画し、同時に下位の者を監督し、製作にあたっていました。
さらには、“ギルド”と呼ばれる職人組合の設立で、組織立った製作活動がされていました。
このように、中世ヨーロッパ時代もアーティストの存在は明確ではありません。

近世はルネッサンスにより、ブルジョアの大頭、人文科学、思想、哲学の発達と共に、知識人が出てきます。
その結果、クラフトマンは、それまでの単なる製作、つまり肉体労働に携わるのではなく、自身で綿密な立案や計画を始めます。

つまり“アーティスト”が誕生しました。

しかし、“アーティスト”“クラフトマン”の明確な分離ではなく、クラフトマンの延長で、知的なアート作業をしている状況でした。

近代になると、クラフトマンの“ギルド”に対して、アーティストの“アカデミー”と呼ばれる組織ができ、アーティストは自身の身分を保護されるようになります、
そして、産業革命後、機械の発達で、クラフトマンの立場にかげりが出てきます。
手工業の衰退と、モチベーションの低下がそれに拍車をかけます。

そして、いよいよ知識作業主体のアーティスト、肉体労働主体のクラフトマンの職能分離が明確になり、現代に至ります。