武蔵関駅の坂の途中にある如何にも昔からありそうなひなびた鰻屋さんを毎回通るたびに一度入ってみようと思って眺めていた。うな重梅1800円は入ってまずかったら悔やんでしまいそうでなかなか決心が付かないのだ。今日は消費税8%のせいで1900円になっていた。
一度いつものように横を通り過ぎ青梅街道の交差点で迷っていた。ちゃんと値上げしていると言うことは常連さんが着いているのだろうと考えた。青梅街道を渡る前に引き返して思い切って入ってみることにした。坂の途中で明らかに駅前ではない。相変わらず店の前は人が入っていないような静けさで汚れた窓ガラス越しに全く中は見えない。入る前に様子がわかれば最後の判断も出来るのだが決心を貫くことにした。
ガラガラ。地元の爺さんばあさんが酒を飲んで大声で騒いでいる最中で店主の奥さんらしきおばあさんがこちらをきょとんと見ている。当然客は話が止まって飛び込みの営業が来たかのような反応だ。中は外から見るよりも狭い。カウンターだけの数人で席がうまるようだ。少し間があって「あ!お客さん?」私も「うっうなぎ食べられます!!」
なぜか客なのに緊張してしまう。カウンターの端の一つだけ空いていた席に座った。
じいさんたちは消化器を買うかで盛り上がっていた。じいさんが自ら消化器の置く場所に赤く塗った設置箱を作ってあげることになるような話題だ。実にローカルな話でうれしくなる。
良く見るとうなぎを焼いているのは70代ぐらいのおじいさんで老夫婦だけで店をやっているようだ。「うな重の梅ください」それでも1900円なので思い切った昼食だ。これでまずかったら一ヶ月ぐらいは悔やむだろと思った。
しかし幸運な事に梅が終わっていたので同じ値段で竹を出してくれた。ひょっとしたら古くからある老舗なのかもしれないと思った。確かに高齢の人が焼いていると言うことは長くここで店を開いているようにも思えた。客も多いので梅が無くなっているのかもしれない。入ったとき1時半を過ぎていた。残念ながら常連なのか客がお喋りをしていて話す間もなかった。
暫くして出てきたうな重はけっこう美味しかった。たれは甘すぎず、鰻も柔らかく1900円なら充分なお味でした。一気にかっ込んで頂いてしまった。高齢なのでいつまで店が開いているか解らないが、町から鰻屋さんがどんどん無くなっていくのが寂しい。
そこから吉祥寺に出て井の頭公園で写真を撮った。