goo blog サービス終了のお知らせ 

ケニチのブログ

ケニチが日々のことを綴っています

井上道義+群響=伊福部「日本狂詩曲」他

2021-11-20 | 音楽 - 伊福部昭
 夕方,高崎芸術劇場にて行なわれた,井上道義指揮+群馬交響楽団の定期演奏会を聴いた.どのナンバーも,井上の不規則な指揮に起因するアンサンブルのラフさはあるが,各ソロパートののびのびとした振舞いと,力強いトゥッテイの音響とに,ともに事欠かない充実の演奏.初めて接する矢代・石井の二題は,それぞれ厳しく尖鋭な音遣いが支配するいっぽうで,多数の打楽器が耳を圧倒する動的な作風.ただし,両者とも楽想の変化や面白さに乏しく,再び聴きたいというほどではない.

 このような珍しいプログラムに,ともかくも満場の観衆が熱心に耳を傾け,親しんだことは,それだけでじゅうぶん値打ちがあるように思った.ただでさえ,今般の世相を口実にして,ますます安易なマンネリズムに陥っていく,クラシック界隈である.


群馬交響楽団 第573回 定期演奏会
【出演者】林英哲&英哲風雲の会 (太鼓),井上道義 (指揮),群馬交響楽団
【日時】2021.11.20 16:00-
【場所】高崎芸術劇場 大劇場
【曲目】
■伊福部昭: 日本狂詩曲
■矢代秋雄: 交響曲
■石井眞木: モノプリズム

下野竜也+広響「日本音楽奇譚 伊福部昭」

2021-10-03 | 音楽 - 伊福部昭
 昼すぎ,三原市芸術文化センターにて行なわれた,下野竜也+広島交響楽団による,『日本音楽奇譚「伊福部昭」の段』を聴いた.オール伊福部プログラムは,立ち上がりこそブラスセクションに平凡なミスが出たものの,全体としては,下野率いる広響の正確かつ明るい音色のアンサンブルに安定した演奏.ただし,どのナンバーも遅めのテンポを採りながら,かと言って,じっくりとした歌があるわけでも,細部への念入りなニュアンスやアクセントが聴かれるのでもなく,ただ無表情に流れていったのは残念.

 曲間のインタビューでは,企画者の片山はともかく,指揮者やプレイヤーたちが,伊福部の音楽,もしくはこのコンサートに,大して共感していないことが,ありありと伝わってきたのにも,興醒めした.また,豊嶋が唐突に触れた,現代曲の譜面のコンディションの悪さについては,確かにそういう事実はあるだろうけれども,あくまで彼らの業界内での些末な不満にすぎないのであり,それをお客に向かって訴えたところで,どんな意味があるというのか,疑問だ.


日本音楽奇譚 北の大地の詩篇~「伊福部昭」の段
【出演者】片山杜秀 (司会),豊嶋泰嗣 (ヴァイオリン),下野竜也 (指揮),広島交響楽団
【日時】2021.10.3 15:00-
【会場】三原市芸術文化センター ポポロ
【曲目】
■伊福部昭: 交響譚詩
■ 〃 : ヴァイオリンと管絃楽のための協奏風狂詩曲
■ 〃 : アリオーソ
■ 〃 : シンフォニア・タプカーラ

名古屋シンフォニア管=伊福部「シンフォニア・タプカーラ」他

2021-07-25 | 音楽 - 伊福部昭
 昼すぎ,芸文コンサートホールにて行なわれた,中村暢宏指揮+名古屋シンフォニア管弦楽団による,定期演奏会の一部を聴いた.めあてのタプカーラは,各ソロパートなどに平凡なミスは出るが,全体としてはよく整理された譜読みとアンサンブルの演奏.アクセントの効いたパーカッション群が支えて,伊福部の音楽に欠かせない力強いリズムもある.いっぽう,テンポの遅いシーンはいくぶん淡々と流れていき,もう少しじっくりとしたところがあると,なお良かった.


名古屋シンフォニア管弦楽団 第79回定期演奏会
【演奏者】中村暢宏 (指揮),名古屋シンフォニア管弦楽団
【日時】2021.7.25 13:45-
【会場】愛知県芸術劇場 コンサートホール
【曲目】
■ブラームス: 悲劇的序曲
■伊福部昭: シンフォニア・タプカーラ
■ベートーヴェン: 交響曲第5番

伊福部昭の純音楽

2021-01-31 | 音楽 - 伊福部昭
 先日買ったCDを聴き終えた.発掘音源集『伊福部昭の純音楽』.

 NHKに保管された伊福部のオーケストラ曲の録音をいくつか掘り起こしてきて,初めて商品化するアルバム.僕の目当てはおもに,山岡重信率いる東京フィルによる「タプカーラ」で,整然とした演奏であるが,この曲ならではの力強さや,生き生きとした踊りのリズムに乏しく,とかく無表情の印象.キャストの異なる他ナンバーにもおおむね共通して,伊福部の音楽への不慣れ・好奇・反発を隠さないスリリングな趣きを残しながらも,どこか譜面を再現するのに手いっぱいであり,消極的に響くのが残念.録音は,ナンバーによって多少のばらつきはあるが,放送用音源として良好の部類.また,年代が古いために,現行のスコアと異なった珍しい場面や楽器法が聴かれるのは収穫であり,興味を引く.

 なお,ディスク企画者がブックレットに寄せた解説は,自身と作曲者の親交の深さだとか,今般の世相でなくては実現しなかった発掘だとかいう,制作サイドの勝手な述懐に終始する,無内容なもの.


伊福部昭の純音楽 (3CD)
山岡重信 (指揮),
東京フィルハーモニー交響楽団 ほか,
Salida,DESL-014~16

井上道義+N響=伊福部「日本狂詩曲」他

2020-12-06 | 音楽 - 伊福部昭
 昼過ぎ,NHKホールにて行なわれた,井上道義指揮+NHK交響楽団による,代替公演を聴いた.どのナンバーも,概ね遅めのテンポを採り,曲の細部まで念入りに描き出した演奏.ミッキー率いるN響は,ライヴゆえの単純なミスも出るが,全体には低音群の力強いサウンドに,ソロイスティックな独特の抑揚が入り混じる,充実の曲作り.また,伊福部二題では,各セクションが互いに「合わせに行く」のではなく,「結果として合うのを聴く」というような,東洋人が考えるアンサンブルのあり方に徹していたのが,とりわけ印象的.

 このコンサートの元となる企画を指揮する予定だった,アレクサンドル・ヴェデルニコフ氏の安眠をお祈り申し上げる.


【演奏者】松田華音 (ピアノ),井上道義 (指揮),NHK交響楽団
【日時】2020.12.6 15:00-
【場所】NHKホール
【曲目】
■ショスタコーヴィチ: 交響曲第1番 ヘ短調 作品10
■伊福部昭: ピアノと管弦楽のための「リトミカ・オスティナータ」
■チャイコフスキー: 18の小品より (ソロ・アンコール)
■伊福部昭: 日本狂詩曲