NBA INS 'N' OUTS

かんたん解説 NBAなんでもとーく

ひょっとすると、ひょっとしちゃう?

2008年03月09日 | '07-08 シーズン

前から言ってますが、ウェスタンがますます大変なことになってきましたねえ~
現時点での順位表です。
左から、勝敗、ゲーム差、過去10試合の成績の順になってます。

1 レイカーズ  44-18  -  9-1
2 スパーズ   43-18  ½  9-1
3 ロケッツ    42-20  2  10-0
4 ホーネッツ   42-20  2  5-5
5 ジャズ     42-22  3  7-3
6 サンズ     40-22  4  4-6
7 マブズ     40-23 4½  5-5
8 ウォリアーズ 39-23  5  7-3
9 ナゲッツ    37-25  7  5-5

実に9チームがシーズン50勝ペースで進んでるという事態は、過去にも例がないそうです。
そらそうでしょうね(笑)
フツーにありえないですもん。

しかも、1位~9位まで1ゲームとか半ゲームの差でダンゴ状態なので、今後も簡単に順位が入れ替わっていくでしょう。
「48勝したのにプレーオフ行けない!」なんていうチームも出てくるかもしれません。
イースタンなら35勝ぐらいで出れちゃうのに・・・・

そのかわいそうな“9位”のチームはどこになるのかなあ?と考えた時、やっぱヤオがシーズン絶望となったロケッツが落ちていくのかな?と思いました。(ブログ
ところがどっこい、ヤオが抜けてもロケッツの連勝は止まりませんでした。
それどころか、ますます勢いが増しているようにも見えます。

ゲームを見てて一番感じるのは、“ケミストリー”ですね。
以前はT-MACとヤオが2人でやってるという印象の強かったロケッツですが、今はT-MACを中心としながらも全員でよくパスが回るチームプレーが展開できています。
相手は的が絞れず、逆に守りづらくなっている印象を受けます。

ヤオの代わりに先発Cに入ったムチョンボおじさんは、ブロックとリバウンドで頑張っています。
41才になっても、高さを生かしてきちんと仕事ができるというのは驚きです。
先発に上がって最初の3試合のスタッツは、

23分/4点/6リバウンド/4ブロック
18分/4点/13リバウンド/4ブロック
24分/2点/5リバウンド/3ブロック

少ない出場時間の中で、効果的に働いていることがわかります。
特にブロックなんてどうなっちゃってるんでしょ??
ムチョンボおじさんから、ムトンボおじさんに格上げになる日も近いですね。(←何の話?)

それからヤオが欠場したことで、PFの新人コンビがインサイドのオフェンスで中心になって頑張っています。
ルイス・スコーラとカール・ランドリーです。
スコーラは先日取り上げたので(ブログ)、ランドリーの方の説明を。

ランドリーは今季のドラフトでギリギリ1巡目を逃し、2巡目に落ちてしまったかわいそうな選手でした。
というのも、3~4年の契約がギャランティー(保証)される1巡目から外れ、契約してもらえない可能性も十分ある2巡目になってしまったからです。

何とかキャンプロースターは生き残ったものの、開幕からほとんどベンチを温めてばかりの日々が続きました。
しかし第2PFだったスコーラが先発に上がったことで、第3PFだったランドリーが第2PFに上がるチャンスが到来しました。
そこからの貢献度は、もう「素晴らしい」の一言ですね。

サイズ的には6-7(201cm)とNBAのPFとしてはアンダーサイズであり、それがドラフト順位を落とす原因にもなりました。
ブランドン・パス(現マブズ)やポール・ミルサップ(ジャズ)が2巡目に落ちたのと同じ理由ですね。

ランドリーの特徴を簡単に言うと、「無駄なことをしない」「実は身体能力が高い」ですね。
新人とは思えないほど常に落ち着いた表情をしていて、プレーもまるでベテランのようです。
スルスルっと抜けて、いつの間にかイージーバスケットを狙える位置に動いているポジショニングが素晴らしいです。

それにジャンプ力も非常に高いんですが、それに頼った勢い任せのようなプレーは一切見せません。
あくまでチームプレーのフロー(流れ)の中で、抑えの利いたプレーをしています。
でもリバウンドやダンクでチラっと見せるジャンプ力は相当なものだと思います。

この「無駄なことをせず」「身体能力をうまくプレーに生かしている」という2点は、スタッツにもよく表れています。
ローテーションに入ってプレイしていたわけでもないのに、シーズンを通してのFG成功率が63.3%もあるんです!
あまり出られない選手は、目立とう精神で「俺が、俺が」となりがちなんですが、完全に自制ができているという証拠です。

これをスコーラの成績と合わせるとスゴイですよ。

スコーラ:22.5分/9.2点/5.6リバウンド/FG53.0%
ランドリー:16.5分/8.5点/5.0リバウンド/FG63.3%
2人の合計:39.0分/17.7点/10.6リバウンド/FG55.6%

2人合わせれば、一流のPF1人分の数字になると思います。

48分換算の数字はもっとスゴイですよ。
もし48分間出場したとしたら、どんな成績になるかという仮想スタッツです。

スコーラ:19.7点/11.9リバウンド
ランドリー:24.9点/14.5リバウンド

ランドリーがどれだけ効率的に活躍しているかがわかります。

ロケッツはこの2人をインサイドでうまく使うことによって、T-MAC1人に頼らないバランスの取れたオフェンススタイルを手に入れることができました。
T-MACも自分の得点よりも仲間を生かすことに力を入れ、2月の平均アシストは6.5本、3月に入っても6.7本と高い数字を残しています。

こうして、ヤオが抜けてから6連勝、トータルで18連勝、ここ30試合で27勝3敗という驚異的なペースで勝ち続けています。
プレーオフに行けるかどうかという話をしていたのに、今やウェスタン首位にわずか2ゲーム差のカンファレンス3位まで上がってきました。
いやはや、いやはや・・・・という感じです。


左から、ランドリー、T-MAC、ボビー・ジャクソン


レイカーズはガソールを獲得してから16勝2敗と突っ走ってますし、ジャズもカイル・コーバーを獲得してから25勝6敗と好調をキープしています。
ホーネッツは相変わらずクリスP君がMVP級の活躍でチームを引っ張っていますし、スパーズも11連勝をマークするなど“後半に強いスパーズ”を実証し始めました。

しかしそんな一方で、今ありえないことが起ころうとしています。
さっきの順位表を見ていただきたいのですが、サンズとマブズが不調なんです。
優勝を狙うはずの“BIG3”が、いつの間にか8位のウォリアーズと9位のナゲッツまで3ゲーム差以内の、“プレーオフ進出争い”の輪に加わってきてしまったのです。
ちょっと連敗でもしようものなら、2~3試合でプレーオフ圏外に落ちることもありえる非常事態です!

これは想像もつきませんでした・・・・
まさか、まさかの展開です。
両チームともビッグトレードをした関係で、チームの連携プレーを確認しながらの戦いになっているのは確かです。
ナッシュも、「今はトレーニングキャンプ中」と言っているように、チームのケミストリーを再構築中という理由はあります。

しかし、今季のウルトラ・コンペティティブ(もっそい激しい争い)なウェスタンの中で、いつまでも“トレーニングキャンプ”をしている余裕はありません。
早くチームを軌道に乗せないと、優勝争いどころかプレーオフすら逃しかねない本末転倒な結果が待ち構えているのです。

サンズは、シャックを獲得してからの戦績が6勝8敗、シャック出場試合は3勝6敗と結果が出ていません。
マブズも、キッドを獲得してからの戦績は5勝5敗と苦戦しています。
では、どうしてうまくいっていないんでしょうか?

まずサンズですが、僕は決してシャックの獲得がイコール大失敗だとは思っていません。
トレードが成立した直後にまとめたように(ブログブログ)、ポジティブな点もいっぱいあると考えています。

実際、常に相手に負けていたリバウンド奪取率は飛躍的に向上してプラスに転じたし、心配されたオフェンスのスローダウンも起きていません。
サンズのファストブレイク・ポイントは、シャック加入後も減ってはいないんです。
PFに戻ったアマレも生き生きとしたプレーを取り戻しています。

ただ・・・・問題はオフェンスのファストブレイクではなく、ディフェンスのファストブレイクでした。
つまり、サンズが早い展開のオフェンスをすれば、相手も早い展開のオフェンスを返してきます。
でもそれが“守れなくなってしまっている”んです。
相手のファストブレイクが守れなくなってしまったので、相手チームにも大量得点を許してしまい、ディフェンスが崩壊してるんですね。

これはマリオンが抜けた最大の影響ですね。
マリオンは、無限のスタミナと軽やかな動きでディフェンスの戻りも早く、相手の早い攻めを食い止める働きをしていたんですが、それがいなくなってしまったんです。
それをベテランのヒルやベル、ましてやビッグマンのアマレに求めるのは酷な話です。(シャックは言うまでもなく・・・・)

ここの部分が、今弱点として露呈してしまっています。
以前よく「サンズのシステムはマリオンがいてこそ機能する」と言われていましたが、それはオフェンスだけでなく、ディフェンス面での影響も大きかったわけですね。
トレード後のサンズの真価は、スローダウンさせられるプレーオフでどうなるかという点を見てみないと結論づけられませんが、まずはプレーオフ前にこの弱点を修正しないことには、元も子もなくなると思います。


サンズはディフェンスの弱点を修正できるか?


そしてマブズはと言うと、こちらも問題はディフェンスにありそうです。
キッドの獲得以降、サイズのあるキッドと並べてジェイソン・テリーを先発させているのですが、これによってキッドが相手のSGをマークするマッチアップになっています。
ここが大きな穴となってますね。

例を挙げると・・・・

対ロケッツ(T-MAC):31点/9アシスト
対レイカーズ(コービー):52点/11リバウンド

といった感じです。

でもこれはキッドが悪いというよりも、チームが悪いですね。
やはり相手が並みのSGだったらいいですが、スーパースター級のエースが相手の時には、スタックハウスでもエディ・ジョーンズでもジョージでも、サイズのあるスウィングマンををぶつけるべきだと思います。
で、テリーはベンチスタートですね。
サンズと同様に、オフェンスの問題というよりも、ディフェンスの修正が必要だということになると思います。


キッド自身でなくチームの問題


それにしても、ますます混沌としてきましたね。
プレーオフ進出争いも、プレーオフシード順争いも、どんどんヒートアップしてきそうで、目が離せない展開になってきました。
ひょっとするとサンズやマブズがプレーオフを逃す!?なんてことも起こりかねません。
こんなにおもしろいレギュラーシーズンはなかなかないと思いますので、是非“歴史の証人”となって注目してみてください。


【おまけ】

2月の月間成績なんですが、モンテッテ・エリス君がスゴイことになってるんですよ。
月間平均が26.0点/FG60.2%だったんです。
ガードの選手で、月間のFG成功率が60%を越えるというのは、ものすごく難しいことなんです。
NBAの歴史上でも10人ぐらいしかいないそうです。

しかも、それがモンテッテ君1人じゃなかった。。
そんな珍しい記録が先月2人もいたんです。
もう1人は、今イチ押しのカルデロンです。
月間平均14.1点/FG60.9%/3P51.4%/FT94.4%という素晴らしい確率でした。

NBAはスーパースターだけの世界じゃありません。
こういう人たちにもスポットを当て、きちんと評価し、賞賛してあげないと、一元的な見方しかできなくなると思います。
いろんな人に注目して、いろんな魅力を見つけると、世界が広がって楽しいですよ。


なーんで注目してくれないんだぁ~?


『Let Her Cry』 by Hootie & The Blowfish
from the album 「Cracked Rear View」



「グスッ・・・・今に見てろよ~」


最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
西高東低 (せいこ)
2008-03-10 04:17:15
二度目ましてです。
いやぁ~ウエスタンおかし過ぎて笑ってしまいます。
選手やフロントたちは笑ってる場合じゃないんでしょうが(笑)
恐ろしいことになっちゃってますね。

それにしてもロケッツ負けないですね。
久しぶりに試合を見ましたが、チーム全員で勝利に向かってる感じがしました。
こちらでスコーラ、スコーラ言われてるので、注目して見ていたのですが
暑苦…ゴホンゴホン…ナイスプレイヤーですね(笑)
フィジカルにも強いし、顔の濃さではどの相手にも負けない気がしました(笑)

スパーズはデンバーにやられてしまいましたが
相変わらず地道に11連勝ですし…サンズ、マブスの大型トレード組の今後など
目が離せないシーズンですね。
あー毎日寝不足になりながら試合を見てる生活が後何日続くかな(笑)
返信する
カルデロン☆ (ryu)
2008-03-10 18:24:40
スゴイですよね♪
パスもうまいしww
スコーラに負けない顔してるし☆
3P率 50%以上ってあり得ないです!

僕はマイナーといわれてる選手が結構好きなので取り上げて下さるとすごくうれしいです。
NBAにいるって時点で地味じゃないと思うんですが
どうして区別されてるのかよくわかりません・・・。

自分もバスケやってますがGAME見てるとすごいPLAYがたくさんあるのでどのPLAYERもすごいなとホントに思ってます☆
返信する
Unknown (3P)
2008-03-10 19:27:33
出ましたね、西高東低!
ロケッツはヤオの欠場後も勝っちゃってますね。運の問題もありますが、選手ひとりひとりのやる気が違いますね、他のチームとは。
んで、前にも出た西高東低の話、重傷ですね~東は。どこでもプレーオフの可能性がある分、東の方もある意味注目ですね。シクサーズがなんか調子いいし。
でもやはり西!
たまりませんね~、サンズやマブスが下位のシード辺りをふらふらさまよってる姿なんて去年は想像もしませんでしたよ。
落ちるのはやはりウォーリアーズ、ナゲッツ、ロケッツのどこかでしょうが、僕はナゲッツがアウトになる気がします。有力なのはレイカーズ、スパーズ、ホーネッツでディビジョン関係でジャズってとこでしょうか?

モンテッテ君のことは見てましたがとんでもない数字たたき出してますね。カルデロンもこうして見るとどう考えても素晴らしい選手なんですが世間の注目度は低いもんですねぇ。言い過ぎかもしれないんですが、次世代のナッシュみたいに見えます。
返信する
せいこさんへ (manu)
2008-03-12 01:06:10
二度目まして(笑)
イケるくちですねえ~
どういたまして。

ロケッツは学生チームみたいに団結してますね。
連携プレーとディフェンスで勝ってますから。

スコーラのことは勝手に盛り上げてますが、注目してもらえてたら嬉しいです。
暑苦しさを、ロンゲ真ん中分け・・・・いやおすそ分けしたいと思いまして、あんな写真集を作って強制的に見せてます(笑)
返信する
ryuさんへ (manu)
2008-03-12 01:26:15
ラテン系はみんな濃ぃ~ですよね。
3P50%ももちろんスゴイし、ジャンプシュート中心のガード系でFG60%はありえないっすよ。

あ、そうそう、僕も同じ考えで、NBAにいる時点でとんでもないという意識で選手を見ています。
ジョーダンは神と言われますが、僕にはNBA選手はみんな神に思えますね。
それぐらいスゴイと思ってます。

だから、ロールプレイヤーを「たいしたことない」とか、調子の悪い選手を「下手くそだ」と呼ぶような自称“NBAファン”を見ると腹が立ちますね。
僕らが絶対に手の届かない世界で戦っている選手たちをつかまえて、どうこう言う権利なんてないんです。
それが最大限の敬意ってもんだと思います。

あれ?何の話だ(笑)
返信する
3Pさんへ (manu)
2008-03-12 01:36:20
ほーんと、西は大変ですよね。
まっさかサンズやマブズが危なくなるとは思いませんでした。

落ちるのはどこでしょうね?
やっぱウォリかナゲッツですかね?
あのDの悪さを見てしまうとナゲッツかなと思いますが。。

東でシクサーズが好調っていうのは、全然チェックしてなかったので、こないだ順位表見てビックリしました。
プレーオフ行けちゃいそうですね。

カルデロンは、数字的にはナッシュに匹敵しますよ。
アシストもそうですが、あのシュート成功率の高さはなかなかマネできるものではありません。
それとTOの少なさは、すでにナッシュを超えてますし。
返信する
Unknown (すーさん)
2008-03-16 13:51:05
 いやー、昨日のスパーズVSピストンズ面白かったですね。
 いつまでもサンズ、ピストンズなんて言ってられないですね。西のプレーオフはまったくどうなってしまうんでしょ。
返信する
すーさんへ (manu)
2008-03-17 09:07:48
あ、そんないいカードやってたんですね。スカパーしか見てないんでわかりませんでした・・・

ほんと、ウェスタンはどうなってくんでしょうねえ~
返信する