NBA INS 'N' OUTS

かんたん解説 NBAなんでもとーく

世代交代

2007年06月03日 | '06-07 プレーオフ

ここ数年のイースタン勢力図は、ピストンズとヒートを中心に回っていました。
しかし昨年をピークに、ピストンズもヒートもその力にかげりが見え始めました。
ピストンズはチームの魂ベン・ウォーレスが去り、強固なディフェンスチームとしてのかつての姿はなくなりました。
ヒートもシャックに故障が目立ち、ウェイド頼みの層の薄いチームに成り下がっていました。

次代を担うキャブズやブルズといった若手チームは、その後ろで順調に力をつけ、僕の試算では来年あたりにどちらかがファイナルに進むのではないか?そんな予感を抱いていました。
ただ今年はまだ過渡期、ルブロンも初のカンファレンスファイナルを経験して、来年のファイナル進出に向けての布石を作れれば十分ではないか、そう思っていました。
しかし、その予想はいい意味で裏切られました。
キャブズは、僕の予想よりも1年早くファイナル進出を実現してしまったわけです。

このシリーズは、2-2のタイで迎えた天王山のGAME5に勝った方がそのままいくだろうという予測はできていました。
なので、あのルブロンの超人的なパフォーマンスが出て勝利を飾った時点で、キャブズのファイナル進出はほぼ決まった感がありました。(僕の中では、ですが)
ただ最後のGAME6の主役はキング・ルブロンではなく、2巡目指名のルーキーでした。

ダニエル・ギブソンは、67-66の1点リードで迎えた勝負の第4Q、開始早々からスリーを連発。
その後も勢いは止まらず、このクウォーターだけで19点をマークし、合計でもゲームハイの31点を叩き出しました。
結局最終Qは、「ギブソン1人で19点>ピストンズ全体で16点」と完全に一人舞台。
ノーマークのルーキーが、1970年のチーム創設以来初の快挙となる、キャブズのファイナル進出を決めたのです。

ギブソンは、2006年ドラフト2巡目42位という下位指名でキャブズに入った、188cmの小さなコンボガード。
テキサス大1年生の頃から「将来全米屈指のPGになる」と呼ばれた高い能力の持ち主でしたが、2年生のシーズンでは思ったよりも伸び悩み、NBA入りにはまだ成長が必要と見られていました。
しかしタレント揃いのテキサス大はNCAAトーナメントを勝ち進み、見事にエリート8進出を果たしました。

そしてこの結果を受け、当時チームメイトだった2年生のラマーカス・オルドリッチ(ドラフト1巡目2位⇒ブレイザーズ)と3年生のPJ・タッカー(ドラフト2巡目35位⇒ラプターズ)がアーリーエントリーし、チーム力が保てなくなることが確実となり、ギブソンもやむなく早めのドラフトエントリーとなってしまいました。(しかし実際にはスーパー1年生ケビン・デュラントが入ってきたので、もう1年やってもおもしろかったのですが・・・)
なので2巡目42位という低評価は、タレントレベルが低いからということではなく、まだ準備ができていないという評価だったわけです。
キャブズがこの指名順位で将来のPG候補を獲得できたのは、とてもラッキーなことでした。

逆に敗れたピストンズは、一時代に終わりを告げることになるかもしれません。
ここ5年連続でカンファレンスファイナル以上に進出していたピストンズは、抜群の安定感で東の雄としての地位を不動のものとしていました。
しかし、昨年のベンの離脱に続き、今夏はチームリーダーのビラップスがFAとなります。
ビラップスは今やリーグ屈指のPGとなりましたが、当初契約を結んだ時点では平均的な評価でしかなかったため、年600万ドルと中の上程度のサラリーしかもらっていません。
年齢的にも最後の長期契約となるビラップスは、昨年のベンと同じような状況にあります。
つまり、最も良い条件を提示したチームに行ってしまうことが十分考えられるわけです。

もしビラップスが他のチームに行ってしまうとしたら、ピストンズは完全に崩壊するでしょう。
守りの要に続いて、攻めの要も失ってしまうことになるからです。
ピストンズオフェンスのビラップスへの依存度は、傍目で見るよりも大きいものがあります。
ベン、ビラップスという2人の求心力を失えば、暴れ馬ラシードをコントロールできる存在もいなくなります。
ハミルトンとプリンスだけでは、チームの形は保てません。
特に1on1ではなく、パスをもらってこそ生きるタイプのハミルトンは、ビラップスの影響を大きく受けることになるでしょう。
名GMジョー・デュマースがどうチームを維持していくのかが注目されます。

それにしても、思ったよりも早くイースタンの世代交代が訪れたようです。
前述のキャブズやブルズに加え、今季ディビジョン優勝を果たしたラプターズ、フロリダ大を連覇に導いた新進気鋭の若手HC、ビリー・ドノバンがやってきたマジックも注目です。
若手チームがますます躍進を遂げる、イースタン新時代がやってくるでしょう。


「えい! スリーだ!」


「へへへ、決めちゃったもんね」


「やるじゃねーか、ルーキー」


「よし、イイ子だ、イイ子だ」


「オイ、俺たちファイナル出れるんだよ!」


「イースタン優勝だっー!」


「やんや、やんや」(アリーナ内)


「やんや、やんや」(アリーナ外)


「俺も応援してたぜ」
(キャブズの小口オーナー、アッシャー)


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