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(ジェローム) そんなに遠くへ行く必要はありません。単純に、田舎へ行けばよいのです。手頃な費用で生活できる場所はなくてはなりませんが。誰ももう財力はありませんから。人々は寄宿者を求めています。探せばよいのです。
(フェルナンド) まだ曖昧ですわ、あなたのご提案は。
(ジェローム) 私は、ご存じでしょう、実際的な質問をいくつかするために…
(フェルナンド) それは気づいておりますわ、じっさい。(沈黙。)
(ジェローム、遠慮しながら。) あなたが話していたその友人というのは…
(フェルナンド) え?
(ジェローム) セルジュ・フランシャールでしたか?
(フェルナンド) いいえ。(ジェローム、ほっとする。) さきほど彼も来ましたが。
(ジェローム) 彼は先だって以来、以前よりもしばしば来るように思われます。
(フェルナンド) モニクが家に引き留められて以来ですわ。
(ジェローム) 彼は電話で満足できないのかな?
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(フェルナンド) 彼らはもう電話は持っていません。管理人さんに呼んでもらわなければなりません。
(ジェローム) どうして、もう電話は持っていないと?
(フェルナンド) 経済的理由からだと、思います。
(ジェローム) 電話が法外に高いのはほんとうです。二百六フランの勘定書が届いたこともあります。
(フェルナンド) 固定使用料のためですわ、あきらかに。
(ジェローム) それでも!… 私は電話無しでも大丈夫でしょうが、アリアーヌが、私が電話を持つことに執着しているのです… 彼女は家を留守にしているときのほうが落ち着いています。
(フェルナンド) 彼女のご機嫌はいかがですか?
(ジェローム) 彼女は、山から戻ったときには、いつも素晴らしい顔色をしています。何も懸念していません。それで自分の力を濫用してしまい、軽率なことをして、一か月後には、向こうでの滞在の効果をすべて完全に失くしてしまうのです。
(フェルナンド) 彼女はもっと自愛することを学ばねばなりませんね。
(ジェローム) 頭でしか分かっていないのです、残念ながら。
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(フェルナンド) 彼女はたぶん近いうちに私に会いに来ると、思っていてください。
(ジェローム、不安そう。) 何ですって?
(フェルナンド) 私たち、私と彼女が、もう何年もつき合っていることを、ご存じですわね。
(ジェローム) 文通をしてらっしゃることは。
(フェルナンド) 私がオートヴィルに居た頃は一か月の間、毎日彼女に会っていました。
(ジェローム) でもそれが、現在彼女があなたに会いに来るどんな理由になるのですか?
(フェルナンド) 彼女が貢献した慈善団体は、患者が回復しても追跡調査をするのを、ご存じないのですか?
(ジェローム) 知っています… しかしそれでは彼女がここを訪れるのを止めない間は、私はもう来れないでしょう。
(フェルナンド) どうしてですの?
(ジェローム) 彼女が私とここで出会うのを想像してください。私が居ることをどう彼女に説明したらいいのでしょうか?
(フェルナンド) 口実をみつけるのは、いつも簡単ですわ。文章家なら…
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