NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#414 BBM(ブルース、ベイカー、ムーア)「City Of Gold」(Virgin)

2024-05-24 07:39:00 | Weblog
2024年5月24日(金)

#414 BBM(ブルース、ベイカー、ムーア)「City Of Gold」(Virgin)




BBM(ブルース、ベイカー、ムーア)、1994年5月リリース、彼らの唯一のアルバムからの一曲。ゲイリー・ムーア、ジャック・ブルース、キップ・ハンラハンの作品。イアン・テイラー、BBMによるプロデュース。

BBMとは上記のようにジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカー、ゲイリー・ムーアによって結成された英国のロック・バンドだ。

説明するまでもなく、クリーム、シン・リジィといった人気バンドを皮切りに長年にわたり活躍して、ロック・レジェンドと呼ばれた3人が1993年末に組んだ、いわゆるスーパー・グループである。

なぜ彼らが1990年代に合流することになったのかを説明すると、1943年5月生まれのブルースが50歳の誕生日を迎えて、それを祝うコンサート(「Cities Of The Heart〜Live 1993」というアルバムとなった)を11月にドイツのケルンで開催し、それにブルース本人、ゲスト・ミュージシャンとしてムーア、ベイカーも出演したことがきっかけなのである。

その時は、3人がクリームの過去ナンバーを演奏してオーディエンスの熱狂をさらったのだが、それが一回こっきりのイベントで終わるのでは惜しいと考えたのだろう、ブルースがムーアの次のアルバム制作に参加することを決め、かつそれにベイカーも加わるようブルースが誘ったのだという。

結局、そのアルバムはムーアのソロ・アルバムというよりは、BBMという新バンドのアルバムにまで発展することになる。

レコーディングは93年末から94年初頭に行われた。曲の多くはムーア、ブルースにより書かれた新作で、一部の曲でベイカーやパーカッショニストのキップ・ハンラハンもそれに加わっている。

アルバムは94年5月にリリースされ「クリームの再来」的な扱いで、世界的に話題となる。全英9位にチャートインしている。

本日取り上げた一曲「City Of Gold」は、その2曲目に収録されたブルースロック・ナンバー。

聴いていただくと、どなたもそう思うだろうが、明らかにこれはBBM版「Crossroads」である。

BB&Aの「Black Cat Moan」などと共通するリフで始まるこの曲は、ビート、スピードがほぼライブ盤の「Crossroads」と同じであり、ムーアのギター・プレイも、わざとと言っていいくらい、クラプトンに寄せている。

つまり、60年代のECのようなハードなギター・プレイを聴きたいというリスナーの期待に応えたということだ。

リードボーカルは、クリームの「Crossroads」ではクラプトンのポジションだったが、この「City Of Gold」ではブルースが担当している。

大変興味深く感じるのは、クリーム時代にはクラプトンよりもギラギラとしたイメージがあってフロントマンっぽかったブルースのボーカルが、年齢もあってか枯れた感じになっており、彼よりはだいぶん若いムーア(1952年生まれ)にその役割を譲っていることだ。

ムーアは92年に「After Hours」、93年に「Blues Alive」を93年にリリースして、ブルース回帰路線を鮮明に打ち出していた頃だ。ギターのみならず、そのパワフルなボーカルにも磨きがかかり、このアルバムでもブルース以上に前面に出て、ボーカルとギターの両方で目立っている。

ところでBBMはその後、アルバムのプロモーションを兼ねたヨーロッパ・ツアーを5月からスタートしたものの、コンサートのいくつかはキャンセルとなり、7月までの予定を消化しきれずに活動終了となってしまう。

以後、この3人が共演することは二度となかった(ブルースとベイカーの2人は2005年にクリームのリユニオン・コンサートで共演している)。

原因は、皆さんも容易に推測出来ると思うが、バンドメンバーの人間関係のもつれである。

ブルースとベイカーのふたりはもともと仲が良くなかったことで有名だ。クリームで組む以前に一緒だったグレアム・ボンド・オーガニゼーション時代からそれは始まっていたらしく、クリームでもそれは続く。

ふたりはことあるごとにお互いのエゴをぶつけ合っており、それがクリーム解散の主たる原因ともなったと言われている。

ふたりはもともと、パーマネント・バンドとして継続していくには無理のあるコンビだったのだと思う。BBMにおいても結局、同じ結末となってしまった。まことに残念である。

しかし、「BBM」という一枚のアルバムは残った。ブルース、ベイカー、ムーアというトップ・ミュージシャンでなくては作れない曲、出せない音がそこにはある。

クリームが「Wheels Of Fire」という意欲作で作り出そうとしていたサウンドを、このアルバムが引き継ぎ、90年代ならではのアレンジで聴かせてくれているのではないだろうか。

30年前に、ほんの短期間だけ活躍したBBM。その後を追ってみると、ムーアが2011年2月に58歳で、ブルースが2014年10月に71歳で、ベイカーが2019年10月に80歳でこの世を去っている。

つまり、BBMのメンバーは全員、鬼籍に入ってしまったのである。つくづく、時の流れは冷酷だなと感じざるをえない。

それでも、このアルバムを聴けば、ありし日の彼らの勇姿がまざまざと眼前に浮かんでくる。彼ら無くしては、今日のブリティッシュ・ロックの隆盛はなかった。

ともあれ、ビッグな3人が組んだ最強のパワー・トリオが叩き出すロック・ビートに、身も心も委ねてみてくれ。




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