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音曲日誌「一日一曲」#461 ニック・ギルダー「Hot Child in the City」(Chrysalis)

2024-07-10 07:39:00 | Weblog
2024年7月10日(水)

#461 ニック・ギルダー「Hot Child in the City」(Chrysalis)



ニック・ギルダー、1978年6月リリースのシングル・ヒット曲。ギルダー本人、ジェイムズ・マカロックの作品。マイク・チャップマンによるプロデュース。

本欄の原稿が、ここのところずっと長文化する傾向が続いている。これは読むひともしんどいだろうし、これからはもっと短め、軽めのスタイルに切り替えていこうかなと思う。そんな第一弾。

70年代、英国から生まれたグラム・ロックのブームは、たちまち海を越えてアメリカ大陸にも押し寄せた。

ハード・ロックやらプログレやらロックンロールやら、音楽的な指向性は必ずしも同じとはいえなくても、とにかくド派手なメイク、ギラギラした衣装という煌びやかな演出は、質実剛健なロックへのアンチテーゼとして、多くのロック・バンドに影響を与えたのである。

75年、カナダのバンクーバーにて結成された5人組ロック・バンド、スウィーニー・トッドも、まさにそのひとつだった。

彼らは同年、デビュー・アルバム「Sweeny Todd」をロンドンレーベルよりリリース。そこから76年4月に「Roxy Roller」をシングルカットしたところ、カナダ国内で大ヒット、3週連続で1位となった。その勢いで米国でも6月にリリースするも、こちらは火が付かず。

この曲、聴いていただくと分かると思うが、リード・ボーカルの声が「これって男?女?」のレベルで、完全に性別不詳なのである。グラムなメイクや衣装も相まって、聴き手を混乱させる。これってもちろん、狙ってやっているよな。サウンドはいかにも、Tレックスあたりを意識して作られている感じだ。

アルバムを1枚出したところで、そのリード・ボーカリストはバンドを脱退してしまう。それが、今日の主役、ニック・ギルダー(1951年ロンドン生まれ)である。

彼はバンドのギタリスト、ジェイムズ・マカロックと共に米国を目指したのである。

レーベルもクリサリスに移籍、ソロ・アーティストとして再出発したのが77年。ファースト・アルバム「You Know Who You Are」をリリース。その中に「Roxy Roller」の再録バージョンも含まれていた。

このアルバムでは火が付かなかったものの、翌78年、ついに大ブレイクを果たす。それが、本日取り上げた一曲「Hot Child in the City」である。

ギルダーとマカロックのコンビが作った本曲は、ロサンゼルスの街中で児童売春の現場を目撃したギルダーの体験に基づいている。現在の日本で言えば、トー横キッズのような少女達の生態を、無邪気なポップ・ソングのふりをして描いたのである。

この少々毒のある背徳的な内容と、ギルダーの中性的な妖しげなムードのボーカルが見事にマッチした。本曲は少しずつチャートを上昇して、実に約5か月、21週をかけて全米1位に上りつめたのだった。そして、カナダでも、もちろん1位となる。

ギルダーはその後、大きなヒットは出すことはなかったが、80年代半ばまではコンスタントにアルバムリリースを続けた。事実上一発屋となったわけだが、それでもこの「Hot Child in the City」という曲の素晴らしさには変わりがない。

ギルダーはスウィーニー・トッド時代は「女に見えるけど、実は男でしたぁ!」みたいな出オチ芸のレベルだったが、ソロとなってからは歌声にも強さが加わって、多面的な表現力をもつボーカリストに成長した。

また、バックでギルダーを支えるマカロックの曲作りのセンス、ギタープレイもいい。本曲の中間部のソロは、70年代のポップ・ロックあまたある中でも、ベスト・プレイのひとつに入れていいんじゃないかな。

イーグルスあたりが人気を博していた時代に、一方ではこういうグラムの流れをひくポップなサウンドも、米国でしっかりと支持されていたのだ。70年代ってホント、懐が深いと思うね。






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