NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#97 yozuca*「S.S.D!」

2009-10-31 00:47:53 | Weblog
#97 yozuca*「S.S.D!」(Lantis)

ヒットチャートの上位にいる曲だけが、いい曲ではない。今週は音楽通でも知るものの少ない、正真正銘の隠れた名曲を紹介しよう。

女性シンガーソングライター、yozuca*(ヨズカ)、といってもピンとくる人はきわめて少ないだろうな。

はっきりいってゲーム好きな人しか、その名前を知る者はいないかもしれない。チャートでは2曲ほど10位台に食い込んだことがあるものの、おおむね50位以降が大半だ。

だが、ゲーマーの中では、非常に重要な位置を占めるアーティストといっていい。

なにしろあの人気恋愛ゲームシリーズ「D.C.~ダ・カーポ~」の、一連のオープニング、エンディングテーマ、イメージソングでファンに強い印象を残しているのだから。

「D.C.~ダ・カーポ~」において、彼女の歌い上げるしっとりとしたバラードが、その作品世界のイメージ作りに大いに貢献してきたのは間違いない。

で、この「S.S.D!」は、長らく「D.C.~ダ・カーポ~」シリーズ中心に曲作りをおこなってきたyozuca*としては、従来にないイメージを打ち出した一曲だ。

アコースティック・ギターの響きを基調としながらも、ヘビメタの味付けでメリハリを出した、そんなサウンド。

彼女のシングルとしては、初めて詞・曲ともに本人の自作なのだとか。

yozuca*といえばスローバラード、あるいはアップテンポでもどちらかといえばマイナー系のメロディの曲が多いという感じだったのだが、この曲は見事にポジティブでキャッチー。

太過ぎず、でも繊細過ぎず、どこかゆらめきを感じさせつつも、一方で力強さを合わせもったyozuca*の声は、不思議と耳に残るのだ。

タイトルの「S.S.D!」は「Sun Shiny Day!」の略だそうだが、そのきらめくようなメロディは、彼女のほど遠からぬブレイクを予感させる。

今回はTVアニメ「プリンセスラバー!」のエンディングとして、アニメファンを中心にアピールしたが、次はさらに彼女自身の「顔」を前面に出したシングル曲を期待したい。

アニメやゲームの世界でも、確かな音楽性をもったアーティストはけっこう大勢いる。

そんな中でも、yozuca*は注目株だ。ぜひ一度チェックしてみてくれ。

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#96 ルーファス・トーマス「Did You Ever Love a Woman」

2009-10-24 10:48:24 | Weblog
#96 ルーファス・トーマス「Did You Ever Love a Woman」(Atlantic Blues/Atlantic)

ルーファス・トーマス、アトランティック在籍時代のレコーディングから。B・B・キングの作品。

ルーファス・トーマスといえば、「ウォーキン・ザ・ドッグ」。これはもう万人の認識だろう。永遠のティーンネージャー、偉大なオヤジロッカー&ダンサー&コメディアン、そんなイメージの人だが、実は違う横顔もある。

1917年ミシシッピ州ケイス生まれ。戦前はメディスン・ショーの一座で活躍、レコードデビューは戦後で、サンレコード時代、以前にも取り上げた「ハウンド・ドッグ」のアンサー・ソング「ベア・キャット」で注目される。

全盛期はもちろん、「ウォーキン・ザ・ドッグ」をヒットさせたスタックス在籍時代。ダンサブルかつちょっとコミカルな曲調のナンバーで、一世を風靡した。

その後も、ステージ、映画等で広く活躍して、2001年メンフィスにて84才で亡くなる。生涯現役、実に堂々としたショーマン人生だった。

そんな彼も、意外とシブい味わいのブルースマンでもあったという証明がこの一曲。BBだけでなく、ゲイトマウス・ムーアも十八番としていたスロー・ブルースだ。

ルーファス・トーマスの歌声は、その二人とはまた違った味わいがある。まずはソフト&マイルドに、囁きかけるように歌い出したかと思うと、感情の高ぶりとともにいきなり激しいシャウトに変化する。なんともエモーショナル。

コミカルばかりが彼の売りではない。ブルーズィできめ細かい感情表現もまた、トーマスの得意とするところなのだ。

このナンバー、ライブでも10分にわたって歌いまくり、延々とディープな世界を展開していたとか。

エネルギッシュ、でもダンス・ナンバーとはまた違っためいっぱいブルースな歌声に、ノックアウトされてちょ。

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#95 レバランド・ゲイリー・デイヴィス「Candy Man」

2009-10-17 15:21:16 | Weblog
#95 レバランド・ゲイリー・デイヴィス「Candy Man」(Heroes of the Blues: The Very Best of Rev. Gary Davis/Shout!)

今週は、ひさしぶりに趣きを変えて、カントリー・ブルース系でいってみる。ゲイリー・デイヴィス師による弾き語りナンバーを。彼自身のオリジナル(といっても、トラッドをベースにした改作といった方が正しいだろうが)。

ゲイリー・デイヴィスは96年、サウスキャロライナ州ローレンス生まれ。72年にニュージャージー州ハモントンにて亡くなっている。

その呼び名通り、牧師がデイヴィスの肩書きのひとつだが、もうひとつがギタリスト/シンガーとなる。

10代からそのミュージシャンとしてのキャリアは始まっており、フィンガーピッキングの名手としてさまざまな後進のギタリストに影響を与えている。たとえば、ブラインド・ボーイ・フラー、ステファン・グロスマン、ボブ・ディラン、タジ・マハール、それにライ・クーダーなどなど。

まさに20世紀アメリカ音楽の礎を築いた人なのだが、意外とその音楽自体は聴かれることが稀である。

今日は、そんな彼の代表的ナンバーを、2003年リリースのベスト盤より、聴いていただこう。

軽快にして清涼感あふれるフィンガーピッキング・ギターにのせて、彼の素朴なことこの上ないボーカルを味わうことが出来る一曲だ。

歌のほうはともかくとして、ギター・プレイは実に正確無比だ。ギター教材にもうってつけの演奏といえる。

フォーク、ブルース、ラグタイム、ゴスペル等々。ジャンルにとらわれず、さまざまなタイプの音楽を吸収し、ギター・ミュージックとして構築した、音の達人。それがデイヴィス師なんである。

すべてのアコギ・プレイヤーは、一度は彼の演奏を聴くといい。

そのリズム感覚の巧みさを体感し、ぜひ自分のものにもしてほしい。

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#94 ピー・ウィー・クレイトン「Blues in the Ghetto」

2009-10-10 12:37:04 | Weblog
#94 ピー・ウィー・クレイトン「Blues in the Ghetto」(Essential Recordings/Cleopatra)

今回も、インストでいくじょ。シンガー/ギタリスト、ピー・ウィー・クレイトンのオリジナル。彼個人のアルバムでは、2001年リリースの編集盤で初お目見えのナンバーであります。

録音は少なくとも40年以上前かと思われますが、これがまた時代をまったく感じさせない、クールでヒップな出来映えなんよ、お客さん。

ピー・ウィーは1914年、テキサス州ロックデイル生まれ。本名はコニー・C・クレイトン。85年、LAにて没。

ジャズ・ギターの開祖チャーリー・クリスチャン、エレクトリック・ブルース・ギターの開祖T・ボーン・ウォーカー。こういった先達の影響を強く受けながらも、独自の演奏スタイルを作りあげていったのが、ピー・ウィー・クレイトン。

とにかく、早いパッセージをガンガン弾きまくり、トレモロ・ピッキングも多用。ワイルドでアグレッシブなことでは、右に出るものがなかった。

フツー、ブルース・ギタリストとゆーと、「タメ」とか「間」とかで勝負するタイプの奏者が多いが、彼の場合は問答無用のハッスル・プレイが身上。

この「Blues in the Ghetto」も、割りとゆったりしたミディアム・テンポだが、ギター・プレイはいかにも彼らしく、スピード感があふれている。

バックの重く、力強いリフとは対照的に、華麗に舞い、切り込んでくる、剣のような鋭さ。ええですな~。

ジョニー・オーティス・ショウの一員として活躍していた頃にも、同グループでこの曲をよく演奏していたらしいのですが、ホント、「Blues After Hours」とまさるとも劣らぬ、カッコいい曲であります。

口ひげをたくわえたダンディなルックス。そしてソリッドでクールなギター。歌はまあご愛嬌レベルではありましたが、ピー・ウィーはもっと評価されていいアーティストだと筆者は思ってます。

ぜひ、あなたも ピー・ウィー・ワールドを味わってみてください。

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