NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音曲日誌「一日一曲」#90 マット・ギター・マーフィ「J.F.A.」(Lucky Chram/Roesch)

2023-06-30 05:00:00 | Weblog
2009年9月6日(日)

#90 マット・ギター・マーフィ「J.F.A.」(Lucky Chram/Roesch)




ギタリスト/シンガー、マット・ギター・マーフィ2000年のアルバムより、マーフィのオリジナル・インスト曲を。

マット・ギター・マーフィは1927年ミシシッピ州サンフラワー生まれ。

プロ・ミュージシャンとしてのキャリアは、40年代末にメンフィスにてスタート。以来、半世紀以上にわたって、ブルース/R&B/ソウル界でバッキングの達人として活躍してきた。

おもな共演相手は、メンフィス・スリム、ハウリン・ウルフ、ジュニア・パーカー、ボビー・ブランド、ジェイムズ・コットン、そしてブルース・ブラザース。

アレサ・フランクリンの亭主役となった、ブルブラ映画二作での役者ぶりを、覚えているかたも多いだろう。

ヒゲ面にキャップにTシャツ姿、見てくれはいかにも「おっちゃん」という感じだが、ギターを持たせれば、右に出る者がない。

そのプレイは正確無比でスピーディ、計算しつくされたテクニカルなものだが、けっして無味乾燥なものでなく、ブルーズィなフィーリングも十二分にもっており、いわば完全無欠のギタリストなのだ。

60才を過ぎてようやくソロ・アルバムをリリース、2000年までに三作をリリースしているが、その後は健康上の問題があり、活動停止の状態にある。実に残念である。

とまれ、きょうの一曲、聴いてほしい。ジャズィな味わいのスロー・ブルース・ナンバーで、マーフィは実に気持ちよさげに、愛器を弾きまくっている。

タイトルの「J.F.A.」とは、日本サッカー協会のこと‥‥なわけもなく、全く意味不明なのだが、まあこの際、意味を知ったところでしょうもない。(おそらく、マーフィの友人の名前から来ているんだろうな。)

とにかく、そのフレーズひとつひとつが、過去何十年かにわたる、ありとあらゆるカッコいいブルース・ナンバーを凝縮したもの、そんな感じである。

ハムバッカーの粘りある音色が、実に艶(H)っぽくて、いい。この演奏を聴けば、世間で名ギタリストともてはやされている(おもに白人のロック系)ギタリストのプレイが、まだまだ大したことがないのが、よくわかると思う。

「ギターとはこういうふうに弾くもんじゃい!」と無言で教えてくれるのが、マーフィの演奏だ。

一音一音にゆるぎないフィーリングがみなぎる、マット・ギター・マーフィのプレイ。まさに「ギター」のニックネームにふさわしい。必聴であります。

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音曲日誌「一日一曲」#89 エイモス・ミルバーン「Chicken Shack Boogie」(Chicken Shack Boogie Man/Proper)

2023-06-29 05:04:00 | Weblog
2009年8月30日(日)

#89 エイモス・ミルバーン「Chicken Shack Boogie」(Chicken Shack Boogie Man/Proper)





ピアニスト/シンガー、エイモス・ミルバーンの代表的ヒットを。ローラ・アン・カラムとミルバーンの共作。

エイモス・ミルバーンは1927年、テキサス州ヒューストン生まれ。80年、52才で同じくヒューストンにて亡くなっている。

テキサス出身ながら、おもに西海岸で活躍。10代末にアラジンにて初録音、後にはキング、モータウンほかでも録音しているが、彼の全盛期はやはり、アラジン在籍時だろう。

アラジン時代(1946~57)、20代のミルバーンの人気はホント、すごかった。ビルボードR&Bチャートにたて続けにヒットを送りこみ、ナンバーワンを、4曲もモノにしている。

今でこそ、彼の名前はマニアしか知らないものになってしまったが、当時は黒人音楽界のスーパースターだったんである。

ナンバーワン・ヒットのひとつが、この「Chicken Shack Boogie」。アルバム・タイトルが示すように、彼の代名詞とすらいえるビッグ・ヒットだった。

まずは、聴いてみよう。軽快でドライブ感にあふれたブギ・ビートに乗せて、どこかとぼけた味わいのあるミルバーンのボーカル(歌というより、ほとんど語りですな、この曲の場合)、そして玉を転がすような流麗なピアノ・プレイが楽しめる。

バック陣の演奏も、実に達者だ。ソリッドなギター、ノリノリのベース&ドラム。これぞブギウギ!といいたくなる。

いつも満面の笑みを浮かべている彼の顔写真を見るとわかるように、とにかく底抜けに陽気なのですよ、ミルバーンの楽曲は。こういう曲を、酒とともに聴けば、一日の疲れなど一瞬に吹き飛ぶこと、うけあい。

このアルバムでいえば、「Roomin' House Boogie」も、やはり超ノリノリのブギでおすすめ。

また、彼は「酒飲みブルース」というジャンルの第一人者でもある。「Bad Bad Whisky」に代表される酒飲みブルースは、この1枚には2曲程度とあまり収録されていないが、上戸なひとにはこたえられない味わいがある。

強力無比のブギ・マン、エイモス・ミルバーンのビートは、永久に不滅であります。

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音曲日誌「一日一曲」#88 ミシシッピ・フレッド・マクダウェル「All the Way from East St. Louis」(Mississippi Fred McDowell/Rounder)

2023-06-28 05:09:00 | Weblog
2009年8月23日(日)

#88 ミシシッピ・フレッド・マクダウェル「All the Way from East St. Louis」(Mississippi Fred McDowell/Rounder)





ミシシッピ・フレッド・マクダウェル、62年録音、71年リリースのアルバムより、彼のオリジナルを。

ミシシッピ・フレッド・マクダウェルは1904年テネシー州ロスヴィル生まれ。72年に同州メンフィスにて68才で亡くなっている。

この人もまた、遅咲きブルースマンの典型だ。長年農夫としての生活を続けたのち、アラン・ロマックスにより見出され、50代半ばにしてようやくレコーディングのチャンスを得て、亡くなるまで10年あまりメジャー・シーンにて活躍したという、文字通りの老春派ミュージシャン。

基本は生ギター、スライドによる単身の弾き語りで、バックがついてもせいぜい一人。ごくごくシンプルな編成なのだが、そこから生み出されるグルーヴが、ハンパなくすごい。

まずは一曲聴いていただきたい。この「All the Way from East St. Louis」、最初から最後まで、延々とワンコード、ワンリフ、ワングルーヴで展開されるのである。

この曲によらず、ストーンズによるカバーで一躍知られるようになった「You Gotta Move」にせよ、「Highway 61」にせよ、彼のレパートリーの大半はワンコード、あるいはそのバリエーションといえる。

このスタイルは戦前のブッカ・ホワイトあたりの、カントリ-・ブルースの流れを引き継いだものだが、こんなブルースマン、60年代にもまだ生息していたんだから、ブルースの奥は深いねぇ。

このスタイルをさらに継承し電気化をほどこして世に広めたのが、以前取り上げたことのあるR・L・バーンサイドやジュニア・キンブロウらの、ファット・ポッサム系アーティストということになる。いわばヒル・カントリーの教祖的存在なのである、マクダウェル翁は。

見た目はいかにも田舎のおじいさんなのだが、その音楽は強力無比きわまりない。

その特徴的な塩辛声と、パーカッシヴなギター・プレイは、まさにリスナーの聴覚を幻惑させてやまないマジックに満ちている。

音の魔術師=ミシシッピ・フレッド・マクダウェルの生み出す、蟲惑的なビートに酔い痴れてくれ。

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音曲日誌「一日一曲」#87 リトル・ミルトン「A Juke Joint in My House」(Feel It/Malaco)

2023-06-27 06:28:00 | Weblog
2009年8月16日(日)

#87 リトル・ミルトン「A Juke Joint in My House」(Feel It/Malaco)




リトル・ミルトン、2001年のアルバムより、ラリー・アディスン、ジョージ・ジャクスンの作品を。

リトル・ミルトンというシンガー/ギタリスト、日本ではあまりファンが多くないようだが、聴かないというには実にもったいない、そんな魅力にあふれたひとだ。

60年代はチェッカーに在籍、71年から75年にはスタックスにて精力的な活動をしていた。約5年間で実に10枚のアルバムがある。

リトル・ミルトンことミルトン・キャンベルは、34年ミシシッピ州インバネス生まれ。2005年テネシー州メンフィスにて70才で亡くなっている。

このマラコでの録音は、晩年にさしかかってのものだが、全然衰えを感じさせぬ、まことにファンキーな歌声を聴くことが出来る。

歌に加え、ギターでも健在ぶりを示している。やはり、彼は自分がシンガーであると同時に、ギタリストであるという意識を強く持っていたようで、2005年のテラークにおける遺作「Think of Me」でも、ギターを抱えたジャケ写を撮らせている。

ミルトンにとっても、やっぱり、ギターこそは生涯の伴侶なんだなぁ。

その昔は、発売されて間もないギブソン・フライングVを愛用していて、その写真は以前に「一日一枚」で取り上げたサン・レーベルのコンピ盤「Blue Flames」にも載っていた。

それを見るに、筆者にも劣らぬ、相当なギター偏愛者ではなかったかと思う(笑)。

まあそれはともかく、彼の個性とは、ブルースという旧世代の黒人音楽と、ソウル、さらにはファンクという新世代のそれとを、見事に混ぜ合わせたブレンダーぶりにあると思うね。

ノリはソウル。でもフレージングなど表現にはかなりブルース的な要素が含まれており、彼の本来の出自を感じさせる。その骨組みはコンテンポラリーなものでありながら、ガチなブルース・ファンにもすっと入っていける。いわば、現在のブルース・ミュージックの基礎を築いた先駆者だ。

21世紀初頭のこの曲でも、その姿勢は一貫して変わっていないと思う。

粘りのあるボーカル、アルバート・キングにも通じるところのある、ファンキーなギター・フレーズ。これぞ、ミルトン節である。

老いてなお情熱を忘れぬ、ブルース・マスターの好演。聴くべし!

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音曲日誌「一日一曲」#86 リロイ・カー「How Long-How Long Blues」(The Best of Leroy Carr /Columbia-Legacy)

2023-06-26 05:00:00 | Weblog
2009年8月9日(日)

#86 リロイ・カー「How Long-How Long Blues」(Whiskey Is My Habit, Women Is All I Crave: The Best of Leroy Carr/Columbia-Legacy)





第二次大戦前のブルース・シンガー/ピアニスト、リロイ・カーの代表的ナンバー。彼自身の作品。

リロイ・カーは1905年、テネシー州ナッシュビル生まれ。35年にインディアナ州インディアナポリスで、30才の若さで亡くなっている。

非常に古い時代のシンガーであるにもかかわらず、彼の名前がいまだに残っているのは、「Blues Before Sunrise」や、この「How Long-How Long Blues」といった、何人ものシンガーたちによって歌い継がれてきた佳曲をものしていたことによるのだろう。

とはいえ、クラプトンによるその2曲のカバー・バージョンを聴くことはあっても、原曲に触れる機会はめったにないと思う。

このアルバムは上記2曲はもちろん「Mean Mistreater Blues」「Muddy Water」といった代表曲を40曲も収録しており、リロイの歌・ピアノの魅力を存分に満喫できるのでおススメである。

リロイの歌声は、どちらかといえば線が細く、迫力というよりは、きめこまやかな情感表現で聴かせるタイプ。

自身の達者なピアノに乗せて、訥々と歌い聴かせる。ギタリスト系のブルースマンにはない、もうひとつのブルースの世界がある。

ブルースの電気化が始まる前(1928年~35年)の録音なので、すべてアコースティック楽器での演奏。オールド・タイミーな雰囲気がぷんぷんとしとります。

もともと、ブルースはこういう感触の音楽だったんですけどね。戦前と戦後では、ホント、別物になってしまったといえます。

ゆったりとしたテンポにのせて演奏される、癒し系ともいえるブルース。なんとも、粋であります。

名手、スクラッパー・ブラックウェルの好サポートも印象的な一曲。ぜひ、何度も聴いて、独自の世界を堪能してほしいです。

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音曲日誌「一日一曲」#85 ココ・テイラー「I Cried Like a Baby」(Queen of the Blues/Alligator)

2023-06-25 05:50:00 | Weblog
2009年8月2日(日)

#85 ココ・テイラー「I Cried Like a Baby」(Queen of the Blues/Alligator)





今年の6月3日、73才で亡くなった女性ブルース・シンガー、ココ・テイラーの75年のアルバムより。ナッピー・ブラウン、ポール・デイヴィッドの作品。

ココ・テイラーといえば、とにかくその男勝りの豪快な歌唱で知られる人。「女傑」という呼び名が、彼女ほどハマる人はいないね。

60年代~70年代前半はおもにチェスにて活躍。ブルース界のボス、ウィリー・ディクスンの肝煎りによりデビューし、女性版ハウリン・ウルフのような強烈なキャラクターで、他のブルース・ウーマンたちを圧倒した。

代表曲はディクスン作の「Wang Dang Doodle」。これは60年代を通しての、チェス・レーベルの最大級ヒットとなった。

一度聴くと忘れられないワイルドなシャウト。およそ力のセーブなんてありえない、120%直球勝負の歌声だった。

75年からはアリゲーターに移籍。32年に渡って、地道にアルバムを発表し続けた。遺作は2007年の「Old School」。70代になるまで、ずっと第一線で歌い続けたのは、見事というほかない。

「I Cried Like a Baby」は、彼女が一番脂が乗っていた頃、40才になった年の録音。

アルバム・タイトルの「Queen of the Blues」を名乗っても恥ずかしくないくらい、確たる地位を築いた彼女の、会心の一曲といえる。

とにかく、聴いてみて欲しい。バックの堂々たるサウンドを全て圧倒して余りある、文句なしの咆哮(うたごえ)を。

そして、野獣のような歌声の中にもしっかりと感じられる、きめ細やかな感情表現を。

まさに赤ん坊のように泣き叫ぶココには、ブルースという最もプリミティヴな音楽がふさわしい。

さようならブルース・クイーン、ココ。僕らは、あんたの全身ブルースな生きざまを決して忘れない。その歌声とともに。

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音曲日誌「一日一曲」#84 中島愛「天使の絵の具」(ノスタルジア/flying DOG)

2023-06-24 05:26:00 | Weblog
2009年7月26日(日)

#84 中島愛「天使の絵の具」(ノスタルジア/flying DOG)





若手女性声優・歌手の中島愛(めぐみ)のセカンド・シングル所収のナンバー。

このタイトルを聞いてピン!と来た方、あなたは決して若くありませんね(ニヤリ)。

そう、この曲はアニメ映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」のエンディング・ナンバー。実に25年前の曲なんである。

個人的なことをちょっと書いてしまうと、筆者は当時、少年漫画誌の編集者。担当している作品の仕事がなかなかうまくいかず、プライベートでも失恋続き、八方ふさがりの状態だった。

そんなある日、仕事の空き時間に吉祥寺の映画館にふらりと入って観たのが、この劇場版「マクロス」。で、その中で一番印象に残ったのが、ヒロインの一人、アイドル歌手のリン・ミンメイ役の声優もつとめた女性歌手、飯島真理の歌声だった。

テーマソング「愛・おぼえていますか」は、当時大ヒットとなったが、実はその曲以上に気に入ったのが、この「天使の絵の具」。飯島自身のオリジナルで彼女のセカンド・アルバムにも既に収録されていたが、それを清水信之がアップテンポの曲調にリ・アレンジ、非常にポップでキャッチーな感じにリニューアルしたのが映画版バージョンだった。

この、彼女の甘~い歌声に、筆者は一発でノックアウトされてしまったのだ。

けっして、ミンメイのキャラクターに(いまふうにいえば)「萌えた」わけではない。また、「中の人」である飯島のルックスが好みだったわけでもない。むしろ、苦手なタイプだった。

ただただ、純粋に飯島の「声」に萌えてしまったのである。

こんな「声萌え」は、めったにあることじゃない。筆者自身でいえば、これまでの人生でも、松田聖子と飯島真理ぐらいしかないのだ。

ある女性歌手に惚れ込むときは、自分の場合、たいていは歌声だけでなくそのルックスやキャラも含めて総体的に気に入るケースがほとんど(具体的には、小林麻美、中森明菜、中山美穂、工藤静香などがそのパターン)だが、ルックス的に格別好みでないこのふたりを好きになったということは、やはり、声そのものにとてつもない魅力があった、そういうことなんだろう。

さて、前フリがやたら長くなってしまったが、きょうの一曲は、昨年放映して大人気だったTVアニメ「マクロスF」のヒロイン、ランカ・リーをつとめた中島愛による、マクロス・スタンダードのカバーというわけだ。

聞くところでは、現在のマクロス・ファンに「ランカ・リーに歌ってほしい過去のマクロス・ソング」の人気投票をしてもらって、見事一位となったのが、この「天使の絵の具」だとか。「ああ、みんなもこの曲が一番好きだったんだ!」とわが意を得たりで、実にうれしい。

さて、中島自身は「マクロスF」のオープニング・ナンバー「星間飛行」を既にヒットさせて、歌手としても好調なスタートをきっている。日比のハーフということで、エキゾチックな濃い顔立ちをしており、スターの素質も十分だ。

とはいえ、この「天使の絵の具」を聴くに、声の高音部の伸びとかツヤとかいったキメどころで、残念ながら飯島真理版より聴き劣りしてしまうのも事実だ。

25年以上前のオリジナル・マクロスこそ最高!と信じて疑わない原理主義者たちには、まず受け入れられそうにないなぁ。ちょっと残念。

でも、当時を知らない若いファンたちにしてみれば、それがどうした!?という感じだろうね。

オリジナルとはいえ、昔のマクロスはいまのマクロスとは別物。時代の流れに応じて、キャラの絵柄も変化しているし、人物造型、ストーリー展開も変わってきている。

新しい時代には、やはり、新しいヒーロー、ヒロインが必要なのだ。

弱冠ハタチの中島の表現力が、飯島のそれに追いついていないからといって、叩くのはどうかと思う。

どんな歌い手でも、歳月を経て、歌を成長、進化させていくものなのだ。

そういう意味で、この中島愛はあえてアニメキャラクターに寄りかかった声(いわゆるキャラ歌唱)でなく、彼女自身のスタイルで、正統派の歌い方で歌おうとしているのが頼もしい。

飯島真理ほどの、天賦の声の魅力はないにせよ、いいシンガーになる可能性は十分に持っている。

中島愛の今後の成長に、大いに期待してます。

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音曲日誌「一日一曲」#83 レッドベリー「Leaving Blues」(Leadbelly/Virgin)

2023-06-23 05:02:00 | Weblog
2009年7月19日(日)

#83 レッドベリー「Leaving Blues」(Leadbelly/Virgin)





四週間ぶりの更新は、この一曲であります。フォーク/ブルース・シンガー、レッドベリーの40年代の録音より、自身のオリジナルを。

レッドベリーは1888年ルイジアナ州ムーアリングスポート生まれ。49年、ニューヨークにて61才で亡くなっている。

テレビはおろか、ラジオ放送もまだ始まっておらず、レコードも普及していなかった20世紀の前半、庶民はどうやって音楽を楽しんでいたか?

各地を回って、生の弾き語りで歌をうたいきかせるシンガーが、そういったメディアのかわりに存在していたのだ。彼らはソングスター(Songster)と呼ばれていた。

レッドベリー、本名ハディ・レッドベターもそのひとりで、12弦ギターを手に、さまざまなジャンル(フォーク、ブルース、ワークソング、スピリチュアルなど)の音楽を、ひとりで歌って旅をしていた。

1930年代以降、国会図書館用や商業レーベルへの吹き込みも始まり、彼の名前は全国区的に有名となる。

白人、黒人を問わず人気を博し、後代にも大きな影響を与えている。たとえば、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル。彼らの4枚目のアルバム「ウィリー&ザ・プア・ボーイズ」では、A面、B面で一曲ずつ彼の代表曲「コットン・フィールズ」「ミッドナイト・スペシャル」がカバーされていて、その影響度がよくわかる。

きょう聴いていただく「Leaving Blues」も、アメリカのみならず、海を渡って英国のミュージシャンたちにもカバーされている。スキッフルのスター、ロニー・ドネガン、それからロリー・ギャラガー率いるバンド、テイストも録音しているのだ。

レッドベリーの歌の魅力といえば、なんといってもその円熟味あふれる「声」だろうな。きょうの一曲でも、ちょっと鼻にかかった高めの声でウェイルする、いかにもレッドベリーらしい歌唱を聴くことが出来る。そのひなびたムードは、いかにもルイジアナなんだよな~。

ギターのほうも結構達者で、そのプレイは実にリズミカルでスピード感があふれている。

明るい曲、メランコリックな曲、しみじみとした曲、どんな曲を歌っても、レッドベリーの個性がそこににじみ出ているのだ。

20世紀前半のアメリカ民衆音楽を象徴するシンガー、レッドベリーの歌う「Leaving Blues」。これぞカントリー・ブルースの粋(すい)だと思います。必聴。

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音曲日誌「一日一曲」#82 レイジー・レスター「If You Think I've Lost You」(I'm a Lover Not a Fighter/Ace)

2023-06-22 05:00:00 | Weblog
2009年6月21日(日)

#82 レイジー・レスター「If You Think I've Lost You」(I'm a Lover Not a Fighter/Ace)





レイジー・レスターの、エクセロ・レーベルにおける代表的ナンバーを。ジェリー・ウェストの作品。

レイジー・レスターは1933年、ルイジアナ州トーラス生まれ(存命中)。本名。レスリー・ジョンスン。

彼の郷里ルイジアナには、ルイジアナ・ブルースとよばれる独自のスタイルのブルースが育っている。アーティスト名でいえば、ライトニン・スリム、ロンサム・サンダウン、スリム・ハーポ、そしてこのレイジー・レスターが代表選手である。

彼らに共通していえるのは、独特の「ゆるさ」だ。陽性で、どこか白人のC&Wにも通じるところのある、のんびりした感覚。ルイジアナの気候、風土が生み出したカラーといえよう。

レスター自身は、ジミー・リード、リトル・ウォルターあたりのシカゴ・ブルースのハーピスト/シンガーの影響を受けたが、またそれらとも微妙に違った、地方色のある芸風だ。

レイジーの芸名通り、怠惰な感じが身上。歌は一本調子で音程も微妙、お世辞にもうまいとはいえないが、ハープはなかなか達者である。テクニックに走り過ぎず、味わいを大切にしているそのスタイルは、ハープ初心者にも結構参考になりそうだ。

きょうの曲のテーマは男女の「別れ」なんだが、深刻になったり湿っぽい感じになったりせず、どこかカラッとしている。レスターならではのユーモアが感じられるのだ。

レスターはこの「If You Think I've Lost You」のほか、全部で15枚のシングルをエクセロ時代に吹き込んでいる。これがいい曲揃いで、このアルバムでその大半を聴くことが出来る。

プロデューサー、J.D.ミラーの作品「I'm a Lover Not a Fighter」「Sugar Coated Love」「I Hear You Knockin'」あたりは必聴。ミラーは、ルイジアナの音楽シーンにおいて非常に広範囲の活躍をしたひとなので、ぜひその名を覚えておいて欲しい。

シカゴにはない、のどかな味わいのブルース。ぜひ、味わってみるべし。

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音曲日誌「一日一曲」#81 ロバート・ナイトホーク「Sweet Black Angel」(Drop Down Mama/Chess)

2023-06-21 05:00:00 | Weblog
2009年6月7日(日)

#81 ロバート・ナイトホーク「Sweet Black Angel」(Drop Down Mama/Chess)





ロバート・ナイトホークの、代表的ヒット・ナンバーを。ナイトホーク自身のオリジナル。

ジョニー・シャインズ、ハニーボーイ・エドワーズ、フロイド・ジョーンズらを収めたコンピレーション・アルバム「Drop Down Mama」で日本でもよく知られているナイトホークは、1909年アーカンソー州ヘレナ生まれ。67年、同地にて57才で亡くなっている。

本名・ロバート・マッカラム。戦前はロバート・リー・マッコイ、ランブリング・ボブなどといった名でレコーディングしたのち、改名。歌のみならず、スライド・ギターもよくこなすブルースマンだ。

きょう聴いていただく「Sweet Black Angel」は、BBが改作し、ステージでも定番曲となった「Sweet Little Angel」の、元歌としても知られている一曲だ。

どこか翳りのある落ち着いた歌声、そしてまるで人声のようによくうたい、泣くスライド・ギター。実に雰囲気があるね。

BBみたいにテンションの高い、ステージ・アクトで映えるタイプのブルースマンもいれば、ナイトホークのようにメランコリックで、モノローグ的な世界をもつブルースマンもいるのだ。

現在、入手できる音盤はごくごく少ないが、残されたわずかな曲でも、彼の独自の魅力を知ることが出来る。

名は体を表すとはよくいったもので、彼の芸名「Nighthawk(アメリカヨタカ)」は、いかにもその芸風にぴったりだと思う。

しっとりとしたそのサウンドは、あくまでも夜に聴くのがふさわしい音楽、そういう気がする。

シカゴ・ブルース・シーンで活躍しながら、そのテイストは正統派シカゴ・ブルースというよりは、戦前のブルースに近い。

サニーボーイ一世、ビッグ・ウォルター、ルーズベルト・サイクス、バディ・ガイなど、新旧さまざまなシカゴのブルースマンたちと共演をしているが、彼はやはり彼。

どのようなスタイルで演奏しても、人生の苦み、渋みを、その歌とスライド・ギターに味わうことが出来る。

これこそが、ミュージシャンにとって一番重要な「存在感」ではないかと思います、ハイ。

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音曲日誌「一日一曲」#80 ローウェル・フルスン「Blue Shadows」(Chess Blues/Chess)

2023-06-20 05:00:00 | Weblog
2009年5月31日(日)

#80 ローウェル・フルスン「Blue Shadows」(Chess Blues/Chess)





ローウェル・フルスン、チェッカー在籍時のヒット。フルスンのバンドのピアニスト、ロイド・グレンの作品だ。

このボリュームたっぷりのボックス・セット(なんと、101曲を収録!)以外では、日本盤「Hung Down Head」のボーナス・トラックでも入っているので、そちらで聴くことも可能だ。

ローウェル・フルスンといえば、ケント時代の「トランプ」というイメージが強いけど、チェッカー/チェス時代にもいい録音がある。この曲など、まさにそう。

リラックスしたムードでのびのびと歌い、かつギターを弾くフルスン。ホーンをフィーチャーしたジャジィなバックも実にごきげんだ。そして作曲者、グレンのピアノ演奏もいい。

ローウェル・フルスンは、知名度とかセールス枚数とかでいえば、ブルースの王者だったとは決していえないが、王者たるBBに多大な影響を与えたということで、第一級のひとだと思う。

フルスンの代表的ナンバーをBBは何曲もカバ-しているが、この「Blue Shadows」も、64年のアルバム「Rock Me Baby」でカバーしている。

フルスンは「怒り節」が基本のBBに比べると、もっと大らかというかラフな持ち味だが、おさえるべきところはつねにビシッとおさえている、そんな芸風だ。

このひとって、ホントに気持ちよさげに歌うんだよねぇ。まるで、風呂に入ってその中で歌っているように。

ある意味、シンガーの理想形ですな。ぜひ、その貫禄あふれる歌いっぷりを味わってみてください

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音曲日誌「一日一曲」#79 ジュニア・キンブロウ「Nobody But You」(All Night Long/Fat Possum)

2023-06-19 05:00:00 | Weblog
2009年5月24日(日)

#79 ジュニア・キンブロウ「Nobody But You」(All Night Long/Fat Possum)





ジュニア・キンブロウ、ファット・ポッサムにおけるデビュー盤('92)より。キンブロウのオリジナルを。

バックバンド名はソウル・ブルー・ボーイズ。ベースはゲイリー・バーンサイド。ドラムスはキンブロウの息子、ケニー・マローン。

ジュニアことデイヴィッド・キンブロウは30年、ミシシッピ州ハドスンヴィルの生まれ。98年同州ホリー・スプリングスにて67才で亡くなっている。

彼は、R.L.バーンサイド同様、遅咲きのブルースマンとして、90年代、一躍脚光を浴びたひとである。

その、とめどなくループするようなブギのグルーヴは、R.L.爺にまさるとも劣らぬ強烈なものがある。

そのR.L.の息子ゲイリー、わが息子ケニーという次世代ミュージシャンを率いて、生み出すファミリー・グルーヴ。古いんだか新しいんだかよくわからんサウンドだが、とにかくクセになる音だ。

ゴツゴツとした歌とギター、粘っこいベース、ドラムス。ワン・コード、ワン・リフで押しとおすその音は、黒い。あくまでも黒い。

これが白人も含む若いリスナーにウケて、キンブロウは60過ぎにしてもっともヒップなアーティストとして認められたのだから、世の中何が起こるかわからない。

きょうの一曲も、ワン・コード・ブギ。まさに典型的キンブロウ節なナンバー。

キンブロウが経営していたジューク・ジョイントでのライブ録音なので、観客の反応もビビッドにとらえられており、その場の熱気がまんま伝わってくる。

酒焼けしたような野太い歌声が、実にいかしてるオヤジ、キンブロウの濃厚な世界を、とくと味わって欲しい。

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音曲日誌「一日一曲」#78 J.B. ハットー「I Feel So Good」(Atlantic Blues: Chicago/Atlantic)

2023-06-18 05:02:00 | Weblog
2009年5月17日(日)

#78 J.B. ハットー「I Feel So Good」(Atlantic Blues: Chicago/Atlantic)





スライド・ギターの達人、J.B. ハットーのアトランティックでの録音より「I Feel So Good」を。おなじみ、ビッグ・ビル・ブルーンジーの作品だ。

J.B. ハットーは、1926年サウス・キャロライナ州ブラックヴィル生まれ。ジョセフ・ベンジャミン・ハットーがフルネームだ。83年にイリノイ州ハーヴェイにて57才で亡くなっている。

J.B. ハットーといえば、エルモア・ジェイムズ直系のブルースマンとしてよく知られているが、エルモアの幅の広い音楽性をすべて継承したというよりは、エルモアの中の一番泥臭い部分のみ受け継いだというべきだろう。そういう意味では、エルモアの従兄弟のホームシック・ジェイムズに近いという気もする。

とにかく、彼のスライド・プレイを聴けば、そのことがよくわかる。突飛なフレージングにせよ、ペナペナな音色にせよ、なんかすごく気ままに弾いている感じだ。また、そのボーカル・スタイルにしても然り。あくまでも田舎臭さを隠そうとしない。

時代が移り変わり、流行に取り残されそうが、おかまいなし。あくまでも自分のスタイルを貫く。うーん、ブルースマンやねぇ。

マディ・ウォーターズなどについてもいえることだが、時流に合わせて器用にスタイルを変えていくよりは、とことん一芸で通していくほうがその人らしい個性のあらわれだ、という気がする。

ということで、今日の一曲、聴いてみよう。バック・ミュージシャンはわりといま風にアップデートされた器用な演奏をしているのに対し、ハットーは全然洗練されていない。

リード・ギタリストの達者な演奏と比べてみると、一目瞭然ってやつだ。

でも、それでいいんである。ハットーは、ハットー。バンドの中で一番キャラが立っているから、無問題なのだ。

フェンダー、ギブソンみたいな有名ブランドをあまり使わず、マイナーで安価なギターを弾き、王様みたいな奇妙な帽子をいつもかぶっていたハットー。マイペースを絵に描いたようなこのブルースマンは、特に商業的に成功したわけではないが、妙に存在感がある。

いつも大きな口を全開にして歌い、叫び、スライドをプレイする彼は、「バイタリティの塊」って感じだ。

まさに元気の出るブルース。ハットーの快唱、快演を聴いとくれ。

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音曲日誌「一日一曲」#77 Sphere(スフィア)「Future Stream」(GloryHeaven-ランティス)

2023-06-17 05:00:00 | Weblog
2009年5月10日(日)

#77 Sphere(スフィア)「Future Stream」(GloryHeaven-ランティス)





先日、Aice5を取り上げて以来、彼女たちに続く次世代声優ユニットはないものかチェックしてみたところ、このスフィアが目に飛び込んできたのでご報告。

スフィア(Sphere)とは、英語で球体、天空等の意味。この2月に結成、4月22日にCDデビューしたばかりの、寿 美菜子、高垣彩陽、戸松 遥、豊崎愛生による4人組だ。

寿は17才、高垣は23才、戸松は19才、豊崎は22才。平均年齢20.25才と実に若い。Aice5とは完全に10年のへだたりがある(笑)。

それぞれが何年かのキャリアはあるが、声優としてはまだ駆け出しといったところか。戸松はすでにソロ歌手としてシングルデビューしており、他の3人もアニメ内ユニット等での歌手経験がある。

人気の戸松を中心に、若手女性声優のきれいどころを集めた。というよりむしろ、最近の声優界の傾向として、ルックスのいいコを優先的に採用して、将来的には歌手、女優などの「表」の仕事へ売り出していく、そんなもくろみが透けて見えるんだけどね。

声優がアイドルになったというより、アイドル向きの素材をまず声優業界内で育てておいて、知名度の上がったところでアイドルとして売り出す、そんな感じでしょう。

それはともかく、筆者としては、うたってくれる歌がナイスならば、全然オッケーなわけで。まずは、YouTubeのPV映像を見ていただきやしょう。

この「Future Stream」は、テレビアニメ「初恋限定。」のオープニングテーマ。アニメに声優として出演しているのは寿、豊崎のふたりのみで、そういう意味でスフィアは、アニメ内ユニットとはいえない。

PVの演出でわかるように、アニメ色は払拭されており、意図的にアイドルユニットとして売ろうとしているのがよくわかる。

キャラとして一番目立つのは、最年長ながら最も小柄(150.8cm)でポニテ茶髪で大塚愛にちょっと似た高垣彩陽(あやひ)かな(彼女がリーダー格)。次に目立つのは最も長身(169cm)でショートヘアで小顔、宮崎あおい似の豊崎愛生(あき)かな。 戸松と寿は、ふたりともちょっと古風でおとなしめでロングヘア、ということで見分けがつきにくいかも知れないが、背の高いほうが戸松である。

さあ、これできょうからあなたも立派なスフィア通です(笑)。

曲のほうは、まあ可もなく不可もなく的な、無難な作り。彼女たちの透き通った地声をそのまま生かした爽やか系の王道ポップス。う~ん、悪くはないんだけど‥、なんのひっかかりもない。

ちょっともの足りないなあ‥と思っていると、「Future Stream」のカップリング曲も聴く機会があった。「Treasures!」だ。

こちらは、ハードロックのアレンジ。「Future Stream」よりはもう少しガッツが感じられていい。ステージでやったら、盛り上がりそうだ。

PVでは全員白の衣装を着て、しきりに清純なイメージをアピールしているが、ちょっとカマトトな感じではある。

アニメの鉄則として「キャラが立つ」ことは大切だ。4人のキャラはまだ若干かぶっているので、まずはそれぞれのメンバーのコンセプトをきちんと決めて、衣装にも差別化をはかるようにしたほうがいいと思う。

うた的には最低限クリアすべきところを十分クリアしているので、あとは場数でしょう。

これまではAKB48あたりを聴いて満足していた層をうまく引き込めれば、第二のAice5どころか、スピードとMAXを合わせたような存在になりうるかも。

ひとえに、プロデューサーの手腕が問われるところであります。

まだ何の色もついていない状態のスフィアが、どういう色に染まっていくか、非常に興味があります。ハイ。

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音曲日誌「一日一曲」#76 イヴァン・リンス「Bandeira Do Divino」(Best Of Ivan Lins/Disky)

2023-06-16 05:15:00 | Weblog
2009年5月6日(水)

#76 イヴァン・リンス「Bandeira Do Divino」(Best Of Ivan Lins/Disky)





ブラジルを代表するシンガーソングライター、イヴァン・リンスの初期ベスト・アルバムより、彼のオリジナルを。

イヴァン・リンスは45年生まれだから、今年64才。ブラジルはリオ・デ・ジャネイロ生まれ。生粋のキャリオカである。

元々は理系出身だったが、ミュージシャンの道に入り、70年にメジャーデビュー。同世代だが既に歌手として著名であったエリス・レジーナに「Madalena」という曲を提供したことで注目される。

70年代はずっと長髪、ヒゲもじゃのルックスで通してきたイヴァンは、80年代後半にはヒゲをきれいにそり落とし、髪も短かめにしてイメチェン。眼鏡をかけ、ちょっとインテリ風のイメージがある。

自作自演をモットーとするシンガーソングライターだが、彼の楽曲にひかれ取り上げるアーティストも多い。カーメン、エラ、サラといったジャズ・ディーバたちがカバーしたほか、パティ・オースティンやマントラ、ジョージ・ベンスンも彼の曲を歌っている。インストでもクインシー・ジョーンズ、デイヴ・グルーシン、リー・リトナーといったトップ・ミュージシャンが演奏している。まさに玄人好みのミュージシャン。

彼のきわだった特徴は、何よりもその「声」にあると思う。

わりとアタックの強い、やや甲高い声だ。この声については地元ブラジルでも評価が分かれているらしく、人により好き嫌いがあるみたいだ。

ブラジルの音楽は基本的に都会的であること、洗練されていることが重要事項なのだが、どうも彼の声は「田舎くさい」と思われているらしい。たとえていうなら、カントリー・ブルース系の声でモダン・ジャズを歌うみたいな、ミスマッチってことやね。

歌声はどこかいなたい。でも、彼の作る曲は非常にモダンである。アメリカのジャズやフュージョンを意識した、テンションコード、転調を多用した曲作りを見ると、音楽的にはかなり高度なことをやっているのがわかる。

この不思議なミスマッチ感こそが、イヴァン・リンスの個性なのだ。

実は筆者も20年ほど前、彼が来日したときに昭和女子大講堂でライブを聴いたのだが、緻密なバックの演奏を上回るほどの、パワーのある歌声に感銘を受けたのを、昨日のことのように覚えている。人間の声ってやっぱり、あらゆる楽器の中でも一番説得力があるものなんだなと。

さて、今日聴いていただく曲「Bandeira Do Divino」(78年録音)も、ヴォーカルにどこかいなたさを感じさせながら、バックのコーラスや演奏はあくまでも洗練され、美しい。

とにかく彼の紡ぎ出すメロディは、絶品だ。ブラジルの豊かな土壌の上に咲いた、大輪の向日葵のような、生命力にあふれた楽曲。

自分もぜひ歌ってみたい、そういう気を起こさせる魅力に満ちたイヴァン・リンスの音楽世界を、とくと味わって欲しい

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